第186話 紅緒はわんこ
結局紅緒さんに押し切られてアドレスを交換して、ロインも登録した。
その後、紅緒さんは俺にマウントをとって来て、役に立つ事、知らなかった事をたくさん教えてくれたんだけど…
持参した紅茶の缶を飲みながら話は続く。
ただね。
怒り、緊張からの弛緩で…紅緒さんが壊れてしまったみたいで…。
なんか距離感が近い。多分バグってるんだと思うんだけど…。
『立花くん!もっとこっち!』
くっつきそうな距離で一個のスマホを共有して見るから近い!
なんで女の子ってこんなに良い匂いするんだろう?
シャンプーの匂いなのかな?
華やかでフローラルな香りがする。
…修学旅行時、香椎さんと相合傘したことを思い出す。
『!!
今、違う女の子の事を考えていなかった?』
鋭い!
言い訳が通用するとは思えない…
『…紅緒さんに近すぎて…
良い匂いして、意識しちゃうから、離れてて?』
ボッ!!て音を立てそうなほど紅緒さんは真っ赤になって後ずさる。
『い、い、意識しちゃうの?
変な匂いしてない?』
自分の長い髪くんくん嗅ぎはじめる紅緒さんはお世辞抜きに可愛くて、ちょっとドキドキしてしまうよ。
(…!俺、香椎さん以外で意識して?ドキドキしてる?!)
あんまり無い!可愛いとか綺麗とかはあるよ。
ドキドキする事も。
でも女の子だって意識しちゃった上でドキドキする事って香椎さん以外ありえない。どうした俺?
狼狽える俺を首を傾げて、ん?って覗き込む仕草もその綺麗さと合い重なって破壊力がある。
俺は、ちょっと話題を変えたいと、
『紅緒さんはさ、犬みたいだね、最初にフォローした俺なんかにさ。
こうやって?懐いて?』
ふふ!紅緒さんはイタズラっぽく笑うと、
『わんわん!ひとりぼっちだった時に助けて貰った恩はわすれないわん!』
って得意の左斜め角度のキメ顔で言い切った。絶対にバグってるんだと思う。
すっかり最初の頃のちょっとお嬢様風な言い方を忘れてしまったようだ。
人前だとまだやってるんだけど…?
俺は言ってみる、
『おて?』
お手をする紅緒わんこ。
『おかわり?』
飲んでた缶の紅茶の残りを一息に飲み干して、空いた缶を突き出す紅緒わんこ。
『それはおかわりの意味が違う。』
はは!
紅緒さんは笑いながら、
『私これでも、超可愛い賢いわんこだからね?
どんな芸でも出来るよ?』
何を自慢してるんだろうこの娘?
多分こうゆう友達とのじゃれあいした事ないからめっちゃ楽しいんだろうなぁ。
そもそも犬と張り合うなよw
『ハイタッチとか?おまわりとか?
ゴロンとか!』
そう言うと紅緒さんはヘイ!ヘイ!って手のひらを上に上げる、
俺は付き合って、パン!ハイタッチをする。
おまわりは職務質問をしてきた。婦警さんになりきる紅緒さんはちょっと良かった。
机を挟んで向い合わせに座ると、
『ごろん!』
そう言うと紅緒さんは机に仰向けになり下から俺の顔を覗き込む。
可愛い。
!!
仰向けになった事でシャツが引っ張られ胸形が協調されている!
大きくは無いが間違いなく主張している膨らみに目線が…だめ!俺!
紅緒さんはニヤニヤしながら、
『ふふ!紅緒わんこさんの魅力にやられたでしょー?
他にわんこってどんなゲイが…』
ゲイじゃないだろ!
次の瞬間、紅緒さんの衝撃的な発言が社会科教室に響き渡る。
紅緒『じゃあ、ちんちん!
ちんちんはどう?!』
『ちんちんはどう?って言われても…?』
俺はこの黒髪清楚な美人の口から出た言葉に呆気に取られる。
次の瞬間、目の前の世間知らず乙女は自分の言葉の意味を理解した。
『あ、あ、あ、あ、
あーーーーー!!!!
無し!!今の無し!!!
私がそんな事言うわけないわよ!!』
あわあわして手をバタバタして、何度も手でバッテンを作って、
また赤面して、両手で顔を覆った。
なんて自爆なんだろう…見事すぎてせっかくスマホあるんだから録画しておけば良かった。
この後、紅緒わんこから
『忘れて!ねえ、忘れてってば!』
しつこく絡まれ続けたんだ。
わかったって。流石にからかいすぎた…。反省するよ。
☆ ☆ ☆
家に帰り、ひーちゃんと遊んで、望とゲームして。
ご飯食べて、お風呂入って、母さんと話してもう9時。
部屋に戻り、ゴロゴロ。
あー幸せ!隣で望もそんな感じでリラックスしてる。
『兄ちゃん、スマホ超振動してたよ?』
あー。宏介、田中くん。
あと紅緒わんこから8件?!
立花くん今日のあれは忘れてね!
冗談じゃ無いからね!
本当だよ?見てないの?
おーい!紅緒です!
無視するなー!(怒り)
ねえ、無視しないで?
ごめんね、調子にのりすぎました。
なんで無視するの?(泣き顔)
何これ?
ごめん、今気づいた。
送った瞬間既読が付く!こわ!
良かった!男の子とロインするのほぼ初めてだから距離感が分からなくって!
俺でもわかる、その距離感は絶対に違う。
さすがにそうは送れない。
弟や妹を構ってたらスマホの事忘れてた!
そうしたら納得してくれたみたいなんだけど…
やりとりが終わらないんだよね。
いつまでも返事が来る。
じゃあ、おやすみー!
って送ると、
おやすみ!もう寝ちゃうの?
って来る。
もう流しちゃえ。って放置すると、
もう寝ちゃいましたか?
って来る。
怖いよ。
返事が無いようなので寝ちゃったようですね、安心しました。
おやすみなさい。
怖いよ!
俺は結局、次の日ロイン研修を伊勢さんにお願いした。
俺の為と言う形で紅緒さんにも聞いて貰った。
伊勢『いい?やりすぎたり、変なロイン送るくらいなら口数少ないほうがよっぽど好印象っしょ?』
承『はい。』
紅緒『はい。』
とても参考になりました。
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