第187話 香椎玲奈は嘘をつく【side香椎玲奈】
高校生活は忙しく、あっという間に春が終わる。
4月が終わり、ちょっと慣れた頃ゴールデンウィークに入る。
連休も色々忙しく、テニス部の強化練習があったり、中学の後輩からの依頼で練習を見に行ったり。
久しぶりに後輩の望ちゃんに会った!
久々に試合したらすごく強くなってた!今2年生だけど2年の頃の私と遜色ないくらいに強い。
思ってた以上の成長だから、ここで鼻をへし折っておく。
後々生きてくるはずだよ!
涙目の望ちゃんにアドバイスして昔の様に一緒に帰る。
千佳は都合つかなくて明日中学校へ指導に行くって言ってた。
高校の事話したり、お互いの最近の事を話したり。
…承くんは元気?何度も口に出しかけて止めた。
望ちゃん何か言いたそうだけどお互いに何も言わなかった。
テニスのこと、中学校のこと、高校の事を話してるうちに別れるポイントに着いた。
またね!って言って別れた。
それ以外は…パパの提案で家族でデパートで買い物に行った。
高校生になった私に大学生になったお姉ちゃんに可愛い、綺麗な洋服を!って。
デパートへ行くとパパの先輩に当たる人が家族で来てて家族同士で挨拶を交わした。
息子さん達は大分歳上で少し話し込んだけどかなり気を使った。
家族と一緒だからリラックスしてたのに、出先で人に会うとすごく疲れる。
その直後に天月の同級生にも2人出会ってしまい、買い物どころじゃなかった。何を買ったの?って根掘り葉掘り聞かれて辟易しちゃう。
すごく疲れたお出かけだったよ。
それ以外は勉強とテニスに明け暮れたよ!
そんな感じでゴールデンウィークも終わった。
私の予定ではさすがにそろそろ承くんと出会ってる予定だった。
家だってそんな遠くないし?家出てすぐのコンビニで毎日待ち合わせしてるって聞いてるし?帰りは毎日うちの前通ってるって聞いたし?
最寄駅使えば会う可能性大だし?
そう、一カ月位で一回くらいバッタリ会うと思ってたんだよね。
ところが全く会わない。
(承くん、私の事思い出さないのかな?)
※毎日事あるごとに思い出してます。
卒業式の仕打ちの恨みどころじゃない位会えないのがこたえる。
そう言えば小5からこんなに会わない事は無かったもんね。
夏休みで一カ月会わないのとまたちょっと違う。
でもね、会えると思うんだ。
私と承くんの縁が強ければ、運命が強ければ!
…夏休み過ぎて会えないようなら…人づてでなんとかするよ…。
あんなフラれ方して私から逢いたいとは…言えない…!
ゴールデンウィークが明けて、また高校生活が始まる。
まあ煩わしい事については以前語った様な気がするから良いとして。
また新たな煩わしい事が…。
ケース1
『…いつも電車で見てました!好きです!
僕と付き合って下さい!』
知らない人に話しかけられるのは結構ストレスなんだよ?
時々帰りに知らない人から告白されちゃう。
ケース2
駅で、若いサラリーマンに急に手を握られる!
『何ですか!!!やめて下さい!!』
通報案件だよ!手紙を渡そうとした?繰り返すけど急に手を握るのは通報案件だよ!
通学途中に手紙とかメモとか、プレゼントを手渡される…困る。
ケース3
学校にて
『竹田先輩や梅澤にアプローチ受けて大変だね?
…俺で良ければ彼氏のフリしようか?
もちろんお互いが良ければ?そのまま…おーい!』
付き合いきれないよ!
告白以外にもなんか搦手?掛け持ちで部活入らない?とか君を描きたいとか、偽彼になろうか?とか図書室で私が取ろうとする本を先に取る男子とか。まわりくどい!!
みんな頭の中ピンク色なの?
特別優しくしたり、笑顔を振り撒いたりしてないのに寄ってくるよ!
なんで?
これをお姉ちゃんに相談すると。
姉『ああ、高校生位になると女の子はそろそろフェロモン的なものが?出てくるのよ。
お姉ちゃんだってこないだまでバッサバッサと切り捨てごめんね!って感じで千切っては投げ千切っては投げてフリまくっていたよ。
…ちなみにママはもっと酷かったらしいよ。』
前に聞いた!ママのストーカー同士がバトルロイヤルした話とか?
ストーカー同士がかち合ってどっちも兄って名乗って地獄の様な展開になった話とか?警察に呼ばれて行ったらママのストーカーを捕まえました!って力説するストーカーが居たりしたらしいよ。
パパはそんな人たちと激戦を繰り広げてママをGETしたらしい。
姉『だから玲奈もJKになって綺麗になって可愛くなって、セクシーになってフェロモンダダ漏れになってきたんだから自衛策用意して対応しなきゃ?
お姉ちゃんは最後やけになってミスコン圧勝して、校則変えよう運動して面倒な高嶺の花ってキャラで告白?出直してきな!ってキャラでしのいだよ?』
全然参考にならない!
私はどうする?
人を傷つけたくないんだよ。
なんか良い策を…。
何のかんの言っても私は誰に告白されても付き合うつもりなんか無い。
付き合うなら、ただひとり。
それなら…。
6月上旬、天月高校。
竹田先輩『玲奈さん!
僕と正式にお付き合いしてください!』
竹田先輩…面倒だなぁ。
梅澤『香椎玲奈!竹田先輩の言う事なんて聞き流していい!
俺と3年間共に過ごして、それからの事は2人でじっくり考えよう!』
梅澤くん…君も面倒だなあ。
でも、私も考えてきた。
みんな!聞いて!
『ごめんなさい。
私、今、付き合ってる人が居るんです。
…中学時代からずっと好きだった彼と付き合う事になりました。
本当にごめんなさい。』
私は2人に視線を合わせてから頭をゆっくり下げる。
見切り発車だよ!
でも『彼』としか付き合う気は無いし、今は嘘だけど必ず本当にしてみせる!
彼と再会したらギッチギチに締めてからとろっとろに甘やかして私を一回フッたこと必ず後悔させてやるんだから!
だから!今は嘘でも!必ず実現させる!
いつまでも泣いていられない!
泣いた赤鬼はきっとそのあと青鬼を探しに行ったと思うんだよ!
2人が蝋人形みたいになってるけどもう知らない。
みんな聞いたよね?これは噂流してね?
天月高校に同じ中学校の人は居ない、だから外部には漏れないよね!
これで告白防止になれば…!
香椎玲奈は天月高校に同じ中学校の人間が居ない。
だから甘く見ていた。
あの香椎玲奈に彼氏?
香椎玲奈の中学校って?新川中?
新川中の知り合い居る?
香椎玲奈に彼氏が出来た!その噂だけは流れる。
誰が彼氏かはわからない。
でも彼氏が出来たってことだけは怜奈が宣言したから真実として流れる。
とくに新川中の生徒は諦めと羨ましい気持ちでその噂をする。
『香椎さん、高校で彼氏出来たんだって。』
『天月だしな。将来有望なんだろうなあ。』
『香椎さんの彼氏すごいらしい。』
『中学校時代噂あっても誰とも付き合わなかったのが付き合うくらいだもんな。』
『香椎さんもう、彼氏にぞっこんでラブラブなんだって。』
『良い子だもんな、やっとお眼鏡にかなう男が…。』
ある日の立花承は帰り道、同じ中学の同級生に出会う。
お!久しぶり!
中学校時代はそんな話しなかったけど久々会うとちょっと話しちゃう。
『そう言えば、聞いた?
香椎さん高校で彼氏出来たって?』
『!!!
…そっかあ。きっと良い男なんだろうなあ。』
『すっごい良い男で、もうラブラブ!
あの香椎玲奈が身も心も捧げちゃうほどの漢らしいぜ?』
『…良かったね、香椎さん…。』
『立花は3回告白して断られたんだっけ?
さすがに高嶺の花だよなあ…まあ元気出せよ?
じゃあまたな!』
『またね。』
乙女の決意と願望が入り混じった嘘はあっさり『彼』に伝わった。
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