第191話 忘れかけてた悪意

6月。

そろそろ梅雨時、自転車通学で大雨は大変な事になる…。

一応折り畳み傘は常備してるけど…これじゃあ雨は全然防げない。

でもこの傘、修学旅行の時に買ったから愛着あるんだよなあ。

あの山荘の時…。あの時の香椎さん可愛かったなぁ…。



とりあえず紅緒さんはある程度の人気を得て、クラスも取り敢えず荒れていない。

俺はスマホを手に入れた。

…香椎さんに彼氏が出来た…。

アルバイトを始めた!

まあ色々起こったけど普通の日々…なはずだったんだけど?



朝、シューズボックスを開けると紙が入ってる?


青井『え?!ラブレター的な?』

伊勢『は?誰が?!』


落ち着け、俺に来るわけないじゃん?

…いやまじで…だって紙剥き出しだし。



うるさい2人と一緒に4組の教室へ向かう。

(なんか嫌な感じ。最近順調すぎるもん)


俺は逆境慣れしてるからなんとなくそうは思ってたんだ。

なんも無いのが一番、でも敵対してる奴が居て、そいつの性格上放っておいてくれるよう感じしないもん。




机に着く、仙道と紅緒さんも居たから挨拶。

伊勢さんが2人にも手紙の事話しちゃう。



なに?見せて!

伊勢さんと紅緒さんはラブレターだったらどうすんの!って言うけどシューズボックスにコピー用紙剥き出しで入れとく恋文は無いでしょ?


紙を開くと、



『オマエモブのクセにチョウシノッテンジャネエゾ。

ボコボコにシテヤッカラマッテロヨ!』



ってカタカナとひらがなで書いてあった。

PCで印刷されたやつかな?


ふー。


伊勢『どーすんの!』

青井『誰だ?クラス内か?』

ギロリとあたりを見渡す青井。

やめろって。



どうする?きっと俺の反応を見てるんだろうなあ?

恨み…?津南か?稲田さんか?新川中の俺嫌いな奴?紅緒さん狙いの奴?


津南が最有力だろう?


どうする?

選択肢は…


無視する

犯人を探す

先生に届け出る


無視しても飽きるまで続くだろうなあ。

犯人を探しても…証拠無いし、シューズボックス見張ってたら犯人だってわかるだろうし?

先生に届け出るも無視と一緒で解決はしないだろうなあ。


そうすると4番目の選択肢!


笑い者にする!



傾け!俺!

『この時代に!脅迫の手紙だって!

ぷーくすくすくす!!

だっせえ!文句あるなら直接言ってくれるかすれば良いのに!』



青井『あはは!そうだな!だっせ!』


みんなちょっと引いてる。

クラスの注目をちょっと集めちゃうけど必要だから!


『文句あるのに、自分はバレないように?リスクを嫌って?

靴箱に?だっさ!高校生にもなってー!』



青井と一緒に笑い飛ばす!

こんな事をするやつなんだから自分がやった事を棚に上げて?

笑われたら絶対に腹を立てるはず!


クラスを見渡す、津南も稲田さんも居るけどこっちに注目はしていない。

まあここで尻尾出すほどバカじゃ無いか。


さて、明日はどうなるかな?


昼休みからずっと紅緒さんと伊勢さんが心配してくれてる。

しまった…心配させちゃった…居ないとこでやれば良かった…。



紅緒『だって!心配!

相手ボコってもいいけど立花くんが怪我したら…!』


ボコっても良いの?でもそんなうまくはいかないもんなんだよね…青井と殴りっこした時も超怖かったもん。



翌日。


『あ、また入ってる。』



机で開く、



『オイ、ウルセエゾゴリラ!

ウホウホホエルナラ、イエニカエッテサミシクナイテロヨ!

ゼッタイボッコボコニスルカラナ!』


一回で済めば良いなあって思ってたけど…まあ続くよね…。

宏介に話すべきかなああ。絶対心配させちゃうよなあ。

でもなんかあって相談しなかったらめっちゃ説教されるよなあ。



当然、今日も笑う。

昨日よりは文章良いんじゃない?

こうゆうやつだから絶対1人に多数で襲撃して来そう!

あははははは!!


青井と笑う。

実際青井が居れば相当心強いけど巻き込めないし、部活あるから帰りは別々だし。

朝は一緒だけど朝襲ってくることは無いよね?


伊勢さんと紅緒さんの顔色悪い…それだけが嫌だなあ。

そうゆう意味でも俺は気にして無いってムーブが必要!


こうゆう時はさっさと帰るべきかなあ?むしろ遅く帰るべきか?

迷ったけど普通に帰る。

紅緒さんが心配しすぎて帰してくれない!


紅緒『うちに来る?

うちから通えば?』


俺にも家族が居るって。

家族が心配するでしょ?



次の日、



『キョウノ16:00シンカワチュウノウラモンマデコイ。

ナカマでもナンデモツレテコイヨ!ショウブシテヤルヨ!』



『何で全部相手の都合で勝負しなきゃいけないんだよ。』


青井『行くのか?』

青井は興奮してるし、女子達はドン引き。


行かない、行かない。だって16:00に新川中ってHR後自転車で全速力じゃなきゃ間に合わないし。

勝負してやるって言われても?



本当に勝負してくれるならやっても良いけど…。

俺別に強く無いからなあ。



昼休み青井、伊勢、仙道、紅緒と一緒に外ベンチで弁当食べる。

最近紅緒さんも時々お昼一緒なんだよね。

話題は最近の手紙。


仙道『あんまり刺激しない方が良いんじゃ?』


真面目に心配してくれる。悪いね。



青井『津南かな?』


津南っぽいけど?


俺は思う、新川中って事知ってるのは自己紹介知ってるこのクラスか同じ中学校出身の生徒。

新川中に裏門がある事知ってる?新川中の人かな?裏門なんてどこでもあるか?



考えすぎても意味無いか。だって行かないし。

中学校近い宏介に見てもらう?

いや16:00に家に戻れるわけが無い。


こんなクソみたいなイタズラでも長引けばメンタルに来るし、俺の周りが、心配しちゃう。

…本当に襲われる線も捨てきれないし。



しかし、この日でこの怪文書は来なくなった。

そこでほっとしちゃったんだよなあ。後から思うと完全な油断だった。



※暴力表現あります、ご注意下さい!



数日後の金曜日、放課後。

17時過ぎの中途半端な時間。

バイト今日は18:00からだから。

紅緒さんは保健室に寄るって。



普通に帰るなら16時頃帰るだろう。部活帰りなら18時頃。

その狭間の中途半端な時間帯。

俺は自転車置き場で襲撃された。

まあそこまで深刻なものじゃないけど、津南と取り巻き2人、他クラスなのかな?2人。5人に取り囲まれた。



津南『お前さ、モブのくせにさ、調子乗ってんなよ?』


動揺して体が動かない俺は津南がいきなり殴りかかってくるのに対応できない!

怪文書の文面と一緒のコメントじゃない?やっぱこいつか…?!


左側、鼻と頬の間辺りを殴られる!

鼻熱い!



あ!音を立てよう!

大袈裟に吹っ飛び、自転車に派手にぶつかる!



ガシャシャサガーン!!!!


『尚樹!やべえって人が来る!』

『音でかいから!引けって!』

『こんな奴いつでもボコれんじゃね?行こうぜ!』


仲間がでかい物音にビビって逃げるように言う。


津南『青井の腰巾着が!

紅緒さんや伊勢さんにデレデレしやがって。お前何様だよ!』



憎々しげに俺に吐き捨てる。

ああ?!やっと火が付いた!


その頃には奴らは消えていた。


自転車倒してごめん。

思いながら整理する。

ただ言いがかりで殴られて、逃げられた。


紅緒さんが一緒じゃなくって良かった…。

悔しい。悲しい。怒り。殺意。色々な黒い感情が渦巻くけどとりあえず5人に囲まれてこの程度で済んだんなら上出来じゃ無い?

なんのフォローにもならないけど。


ボコるぞって文章来てて、それを笑い者にして襲撃されたんだから当然と言えば当然。俺の警戒が足りなさすぎ。

俺と考え方が違いすぎるんだから俺の予測なんて当てにならないだろ。

頭は回るけど何にも結論出ない。




バイトどうしよ?!

俺はそればかり考えていたんだ。


そう思ってたところに…ありゃあ、紅緒さんが来ちゃった…。



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