第184話 スマホが来る!

家に帰ると、望が大興奮!

明日俺と望のスマホ買いに行くって!



『望?!それ本当!?

マジで?母さん?!』


母『本当よー。こないだのゴールデンウィークに…って思ってたけど混みまくりだったから予約だけして来たの。明日大丈夫?』



承望『『大丈夫!!』』


ひー『ひーちゃんも!』


望『…ひーちゃんは…お姉ちゃんと一緒に使おう?』


ひー『じゃあ!じゃあ!ひーちゃん写真とりたいよぅ!』



スマホ…あの憧れの四角い奴がついに…。


☆ ☆ ☆


承『…別に、友達少ないしスマホ無くても不便は無いよ?』


承『あ、俺スマホ無いんだよね。』


直近で紅緒さんに、


承『…俺スマホ持って無いんだ…。』


☆ ☆ ☆

そんな過去言動を思い返す。

別に?興味無い…みたいな事言ってたけど!

皆んな持ってるし本当はめっちゃ欲しかったよ!


あれさえあれば…友達と連絡取れるし、待ち合わせとか、調べ物とか、げーむとか…えっちいものも見れちゃうって…。

万能科学の産物だよね!



寝る前、めっちゃ望とスマホについて語り合った。

ああでもない、こうでもない。

多分、望の方が詳しそう。何かあれば教えてな?


電気消して、就寝する。

俺と望は同室で、年頃なのに?とか言われるけど小さい頃から一緒だから正直全く気にならない。別に同じベッドで寝るわけじゃ無いし。

たまに居ないと捗るなーって思うけど…。

あ、でもひーちゃんが一緒に寝たがる時は部屋の真ん中に布団をふたつくっつけて3人で寝るんだよ。大体朝になるとひーちゃんが2枚の布団の間に落ちてるんだけどね。

いつも2人とも寝付きは良い方だから寝る時の会話ってあまり無い。

だけど、



望『…兄ちゃん、スマホ買ったらさ。

…香椎先輩と連絡出来るね…?』



『…。』


なんて?逃げた俺がなんて彼女に連絡できるんだよ。

俺は説明が億劫で黙って寝たふりをした。



望『…先輩…待ってると思うなぁ。

こないだゴールデンウィークにテニス部に顔出してくれたんだけど…

…兄ちゃん?寝たふり?寝ちゃった?』



俺は何も言えない。

香椎さん…どうしてるのかな?

香椎さんを思い出さない日なんて1日も無い。

学校の帰り道だって1番近い経路で帰ってるから香椎さんの家の前を通るけど、訪ねたり会いたいとは思わない…いや、嘘だ。

本当は会いたい。でも会わせる顔が無い…。

別に絶対に会いたくなければ少し位遠回りだって別の道に行けば良いんだ。

…本当は遠くから一目でも会いたい…。



…気づくと本当に眠ってしまっていたんだ…。







次の日。

朝からワクワク!望はソワソワ!

14:30予約なのにね?


お昼は母さんが茹でた蕎麦をもりもり食べた。

うまし!

まだだいぶ早いけど、



望『予約より少し早めに行ってた方が良いじゃーん!

マナーだよマナー!早めに行こうよー!』


早めに行って担当の人の手が空いてたら早く処理してもらえるんじゃない?って強調するわがまま妹。

母さん、望が聞かないよー?って体裁で俺も早く行こうよ?って母さんを急かす。

こうゆう時に話さなくても出来る兄妹の連携(笑)



13:50予約してたお店に着いた!

担当さんに少し待ってね?と言われ機種を見て回る

母さんはせっかくだから最新のにしよう!って言うけど…。最新の高い奴15万?!

(スマホ高い!こんなすんの?!)


これに月の料金がかかってさらに何かプラスされたり?…恐ろしい…。


ごくり、望も気付いたのか俺と視線を交わす。

自然に俺も望も、一つ前の機種から選ぶ。人気のシリーズのなかから。少しでも費用を抑えよう…。

いや、充分でしょ?もっと前のでも良い位だよ!



俺は白い少し画面が大きいモデル。

望は水色の小さめ、容量が少し多いモデル。


この二つを母さんにお願いする。

幸い二種類とも在庫があるって。


罪悪感と期待感。

ワクワクと不安。

なんだこれ?



しばらく手続きに時間がかかり、パスワードや諸々の設定をして結構な時間がかかる。



1時間して紙袋に入った一式を手渡される!

嬉しい!小さい頃クリスマスプレゼントを貰う感覚に似てる!

先程の罪悪感や申し訳なさはまだあるんだけどそれを凌駕するワクワク感!



『母さん、ありがとう!』

望『あ、母さんありがとう!』


紙袋に釘付けになる望も慌ててお礼を言う。


母『うんうん、お礼は父さんに言ってね?

大事に使うんだよ。変な使い方するとお金がべらぼうにかかっちゃうからくれぐれも気をつけてね?』


車に戻り、

紙袋から本体を出すのももどかしい。


掌に収まらないその長方形のメタリックなフォルム。

やばい、カッコいい。

横を見ると望も夢中になってスマホをいじってる。



憧れのスマホ。

メタリックでカッコイイ。

液晶綺麗だなあ。


帰り道、望とふたり飽きずにずっといじってる。

今までだって友達のをいじらせてもらったりしてるんだよ?

それでも自分のスマホ超嬉しい!



ひー『にいちゃーん!ねえちゃーん!むししないでー!!』



ああ、ごめんごめん!

ひーちゃん放置してた。スマホの魔力だ…。

母さんの運転で家に帰り、自分の部屋でスマホをいじる。

隣で望も同じように。


あ!兄ちゃんほら動画サイトのアプリ入れた方が良いよ!

お、望、ここで待ち受け画面変えられるみたい?

キャッキャ2人で楽しむ。

少し慣らして?明日の日曜に宏介の家に行ってロインを登録したり、色々聞いたりしよう!

望も明日親友の家でアドレス交換したり諸々しよう!って。


夕飯時までめっちゃいじりまくる。

今時の高校生でこんなにスマホにはしゃぐ奴居ないだろうなあって苦笑い。

夕飯食べて、部屋でゴロゴロスマホをいじる。


先に望がひーちゃんとお風呂入ってる。

望とひーちゃんが上がったから、スマホを充電してお風呂に入る。



お風呂をあがると…あれ?



望『兄ちゃん?あたしのスマホ知らない?』



『知らない。俺のスマホ知らない?充電しておいたんだけど?』


望『あたしも!いじりすぎて充電してたんだけど?』



部屋の入り口にひーちゃんが覗き込んでて目があうとピュッて逃げ出した。


!!!

望と視線を交わす。

望はシリアスな顔をして言い放つ、




望『…謎は全て解けた…!

…妖怪スマホ隠しはこの家の中に居る…!』


『誰でもわかるっちゅうねん。』


某探偵の孫漫画っぽく決める妹に思わずツッコむ。





立花家居間 20:05


望『追い詰めたぞ!妖怪スマホ隠し!』



ひーちゃんの後ろの座布団重ねてる所が怪しい。


望『ひーちゃん♪返して♪』


ひー『やー!!』


ぶんぶん首を振る弟。


『返してよひーちゃん?』



ひー『やなの!』


わからず屋さんだなあ。まあ後ろの座布団の中だろ?

回り込んでめくろうとするとしがみついてくる!

必死だな?何でだ?まさか壊した?!

あんな高いお金かかったのに父さんと母さんに合わせる顔が?!


『ひーちゃん!』


ちょっと語気強く言う、なんのかんの兄の威厳があるのですよ?

ひーは基本言う事聞く子!


すると、ひーちゃんは泣き出した。


ひー『やなの!すまほがあると!

にいちゃあもねえちゃあもぼくとあそんで、くれないの!!

ふうええぇぇ、ええぇぇぇん!

こんなの!いらないの!ぽいして!

ううぇぇええぇぇん!』



顔を見合わせる兄妹。

まずったな。スマホに夢中でひーちゃんが疎かになってた…。

ひーちゃんはえぐえぐ泣いてる…。



望『ひーちゃん…。ごめんね。』


ひー『ねえちゃあきらい!すまほがおとうとになればいいでしょ!』


がーん!ってショックを受ける妹。

俺も声をかけるよ。


『ひーちゃん?兄ちゃんも謝るよ。ごめんな。』


ひー『きらい!そのすまほで、かしちゃんやおっぱいちゃんや、つんでれちゃんとあそぶんでしょ!にいちゃあのエロガッパ!』



エロガッパってワードを使う人間は…?

ジロリと妹を睨む、妹は目を背ける。

お前俺をそうゆう目で…


結局このあと、もう今日はスマホ触らない事を約束して、今日は3人で寝る約束をしたんだ。


ひー『さみしかったよ!』


ごめんごめん。

俺と望の布団を並べて敷いて、真ん中にひーちゃんが入る。

接待モードで俺の腕枕でひーちゃんは横になると、俺はひーちゃんの耳掃除。

望は背中を掻いてあげると…。


ひー『…ぅん…。

…くぴー…。』


大体10分でおねむになっちゃう。


望『んー。スマホ中毒、ダメ絶対。』


『わかる。』


俺たちは寝るまでスマホいじってたけど懲りた。どんなに面白くったって弟が悲しむような使い方はしないって望と約束した。

NOひーちゃん、NO LIFE。

朝起きるとひーちゃんは敷布団の下に潜り込んでいた。どうやったん?



5月下旬、立花兄妹スマホGET!



☆ ☆ ☆

紅緒永遠のアドレス


紅緒永遠のアドレスには家族しか登録されていない。あと家の番号。

紅緒永遠は基本的にSNSに無関心。承認欲求は無いし、映えるような所へ出かけないし、自慢するような相手が居ない。


唯一やってるのがチャット式メッセージアプリのロインでこれも家族が9割以上。

しかし、高校進学を機に男子のロインアドレスが15件も増えた!

全部ブロックしてるけど…。


紅緒『なるみん!…えへへ。』


伊勢さんはマメなタイプなので、一緒に出かけると撮った写真とメッセージをくれる。

それを紅緒永遠は何度も何度も見返す。

友達から来るメッセージがこんなに嬉しいなんて知らなかった。

これ彼氏とやりとりしたらどうなっちゃうんだろう?

立花くんは素っ気なさそうだな…。

!!

なんで立花くんで想定してるの?!

紅緒永遠は1人でニヤニヤしたりびっくりしたりあわあわしたり忙しかった。

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