第183話 癖つようまい店

中間テストは好調に終わり、紅緒さんもクラスで一定の人気を獲得した週末。

いつものように家へ帰る。


今日は青井と一緒!部活休みだから珍しく一緒に帰れる。

紅緒さんは伊勢さんとスイーツ行くんんだってさ?



『立花!何か食ってこうぜ?』


『いいよ、何食う?』



成長期ってやつなのかな?最近いくらでも食えるし、何でも美味しい!

でも買い食いばかりしてるとあっという間お金無くなっちゃう…。

まあ今日は付き合いだから!(言い訳)


高校近くの大きい県道と国道が交わる交通量の多い辺り、そこにショッピングエリアがあってそこのファミレスに入る。



『ここのオーナーが東光のOBでさ、先輩おすすめの美味くて量多い店なんよ!』


『へー!期待しちゃう!』


看板にはデカデカと黒々と『俺のカレーとハンバーグ』って荒々しい書体で大書されている。

見た目は普通のファミレスなんだけどな?癖つよ!

しかし、カレーもハンバーグも大好物だからテンション上がる!



入店しても普通にファミレス。看板の雰囲気と違い店内は落ち着いていて清潔感があり良い雰囲気。

東光生も何組か居る。

夕飯にはちょっと早いから客は少なめ。


『テーブル席はゆっくり食べる人向けで、食いたい奴はカウンターで回転率高めにする!みたいな?ルールなんだってさ。』



『へぇ。なんかすげえ美味そうな匂い…。』



カウンターに座ると30代くらいのワイルドな男性がオーダーを取りに来てくれる。

格好良い不良中年になりそうな男性である。



『へらっしゅー!

東光生?』


へらっしゅー?

はい、いらっしゃい!

かな?



『はい!今年からっす!』

『俺もです!』


青井の挨拶に乗る。

ワイルドな男性はニカって笑って、



『俺基準だけどめっちゃ美味いから何でもおすすめ!

量食えるだろ?』


自信満々じゃん!でも嫌味じゃ無い。



『『食えます!』』


『盛りはサービスすっから?何にする?』


俺は青井に聞く、


『何が美味いん?』


『俺は前回カレー食ったけどすっごい美味かった!先輩のハンバーグも美味そうで今回はそっちにする。ハンバーグセットライス多めで!』


(カレー…ハンバーグ…どっちも最高じゃん!!)



そのワイルドな男性はニヤニヤしながら、

『うちはカレーとハンバーグと甘いものの店だぞ?

迷ってんのか?』



めっちゃ良い匂いする…迷う…。


『ハンバーグ…カレー。』



ワイルド(そう呼んじゃえ。)はくどい顔してるのに男前に見える日に焼けてる、けどチャラくない感じの男。



ワイルド『若いんだからガッと食えよ!

じゃあハンバーグカレーな?』



『あっはい。』



なんか食い物で迷って判断力の無いだっせえ男だなあって自己嫌悪。

メニュー見てた青井が、


『ハンバーグカレーなんて無いぞ?』


『??

迷ってたらハンバーグカレーってオススメしてくれたけど?』


ハンバーグとカレーの店でハンバーグカレー無いの?

10分位して…来た!


『おまたせー。』


青井のは…鉄板がジュージュー言ってる!デミグラスソースのスタンダードの薄い広いハンバーグにチーズが乗っててたまらない…。

結構ハンバーグ大きいよね?

付け合わせのポテト、アスパラ、にんじんのソテーにバターコーン。

ライスも大盛り!コーンスープも付いて880円なの?


『ライスは一回おかわり出来るから!』



『マジすか!』

青井大喜び!



俺のハンバーグカレー…来た!

デカい!

青井の7割ほどの大きさのハンバーグに半分カレーがかかっている…。

ご飯は普通のカレー屋さんの大盛り400gより多そう!

え?いいの?



『え?ハンバーグもその大きさでカレーもその量?マジで?』


青井も羨ましそう!

2人でかっこむ!

うま!カレースパイシーだけど辛すぎなくってなんか爽やかなの!

爽やかだけど…めっちゃ旨みがある…!

ハンバーグにべっとりかかって無いから、ハンバーグとライスとしても楽しめて…。

サラダはまあ普通。カレーうま!ハンバーグうま!バランスが良いのかな?


俺今までハンバーグカレーってどっちも中途半端かカレーが勝っちゃうって印象だったんだけど見方変わった!



青井もライスおかわりして、俺もペロりと平らげてお会計。


『ハンバーグカレーいくらなんだ?』


『さあ?でもカレープラスハンバーグだから多少割高でも文句ないわ。

あのボリュームだし。』


2人でうんうん頷く。

青井のハンバーグセットが880円、普通のカレー700円ならハンバーグカレーなら980ー1,280円ってとこじゃ無い?でもあのボリュームでカレーもハンバーグも楽しめたから全然文句ないわ。



ワイルドがレジに来て、にやって笑って、

『どうよ?美味かった?』



『めっちゃ美味かったです!』

『来週も来ます!』


感動を伝える。

ワイルドは嬉しそうに、俺も東光なんだよ。

俺も若い頃さあ、おっさんが飯食わせてくれてさ?それを返してんだわ!

って人好きのする笑顔で語ってた。



『うち安いけどダチの作った設備とかで安い肉でも熟成させたり手間かけてるから味自信あんだよ!』


『『へぇ〜。』』



『じゃあどっちも880円な。』


『え?良いんすか?』

『俺も!次俺もハンバーグカレーにするっす!』


ハンバーグカレーは通常メニューじゃ無いからそんくらいってどんぶり勘定も甚だしい。ワイルドがやってる時だけ適当なんだって。


『まいどー。』



青井は次は絶対ハンバーグカレーにするわ!って息巻いていた。

店出て、振り返る。

『俺のカレーとハンバーグ』


ちょうどお客が入店する。


ワイルド『へらっしゅー!』



あの挨拶…誰にでもなんだ?



とにかく、めっちゃ良い店だ…ワイルドもすっごい良い兄貴っぽい。

また来よう!俺は良い店と知り合った。


そして一ヶ月後俺はここでバイトを始める事になる。


☆ ☆ ☆

ハンバーグカレーを食べて家に帰る。

あんなに食べたけど夕飯多分問題なく入る。まあご飯おかわりはしないだろうけど。



家に帰ると、もう母さんが帰って来てた。早いね。


『母さんただいまー。おかえりー。』


母『承おかえり。』



ぼん!横から望が体当たりして来た!

なんだ?



望『兄ちゃん!すごいよ!聞いて!』


『おう?どうした?』


望『ふふー!兄ちゃん驚くよー!はしゃいじゃうよー!』


望はご機嫌!どうしたん?


『兄ちゃんはもう高校生になったんだぞ?

そんなにはしゃぐ事なんて無い…。』



望『母さんがね!明日!スマホ買ってくれるって!!』





☆ ☆ ☆

初めての友だちすいーつ  side紅緒永遠


伊勢『帰り!甘いもの食べて帰ろっ!とわわん!』


『…いいわよ。』


自転車で15分くらいのエイオンって総合商業施設へ向かう。

私…体力無くって…電動アシストで必死に着いていく。



エイオンに着くと伊勢さんの行きつけのお店を見て回る。

派手な可愛い服がたくさん!


伊勢『とわわんはどんな服着るのー?』


『…うーん、わりとおとなしめかな?』


言えない!マネキン買いしてるなんて…!

なるみん(伊勢さんって言うと注意される。)はおしゃれで陽気で友達に囲まれる美人ギャル。色々参考になる事も多い。


服見たらフードコートでアイス食べておしゃべり。

そう言えば今日はギャル友居ないのね?


伊勢『あぁ、とわわん人馴れしてないから?あたしだけの方が楽じゃ無い?』


ギャルだけどすっごい人を見てる。

この娘はすごいな。


ふたりきりだから気兼ね無く話をする。

私が病気で中学校行けなかったこと、心臓悪くて色々な制限がある事、高校生活に憧れてたこと。などなどいろいろ。


なるみんはうんうんって聞いてくれて、アイス食べ終わったからぶらっと歩いて、休んでを繰り返す。


なるみんが一生懸命聞いてくれるから立花くんほどじゃないけど一通り話をしてしまった。


伊勢『苦労したね…。』


ポロポロ涙を流すなるみんの姿にこれは周囲に人が集まるわけだ!

この娘はいい子だ!私でもわかる。


場所を移して今度は喫茶店でケーキセットを食べるよ。

今度は軽くなるみんの話を聞かせてもらう。

新川中楽しそうだなぁ、良いなあ。

なるみん中1頃部活でいじめられて立花くんがいじめを解決した影響で学校中のいじめが無くなった?!

立花くんサイドで話は聞いていたけど本当に?!


私は初めて同性の友達と時間を忘れて語り合った。


私がクラス委員長に祭り上げられて1人で困ってた所を助けて、助言してくれたのは立花くん。

このなるみんを紹介してくれたのも立花くん。

今の私の高校生活は毎日が楽しくて仕方無い。

それはほとんど立花くんのおかげ。


…もっと立花くんの事を知りたいよ。


その後は取り止めもない内容なんか無い話をいっぱいした。

みんな学校帰りってこんな風に過ごしてるの?すごい!

病院で憧れた夢のひとつがここにある。

初めての友だちとすいーつは本当に楽しくて、忘れられない一時だった。

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