第182話 猫を被って紅緒さん!
紅緒永遠は入学直後の自己紹介で下手打って、変な男子を引き寄せて、女子から白眼視されていた。
最近寄って来る男子は容姿目当ての他クラスの男子ばっかり。
特に仮設校舎じゃ無い5〜9組の男子が噂を聞いてやってきて、美人!彼氏募集中なの!
みたいな?
そんな男子達をバッサバッサと斬り捨ててきた紅緒さんに話しかけるのは俺くらいだった。
先週位から伊勢さんが話しかけてくれるようになって、青井も挨拶してくれるようになった。あと仙道も。
そんな敬遠され娘だった紅緒さんが…。
中間テスト堂々の一位獲得で席の周りに人だかり。
しかもまともな人が多く、女子もいっぱい!
(下手打つなよー!がんばれ紅緒さん!)
『紅緒さん一位おめでとう!すごいね!』
『数学のあそこ難しく無かった?数学満点ってすごく無い?』
『今度一緒に勉強しようよー!』
『まじぱねえ。』
ちゃらいのも混じってるけど人に囲まれて目を白黒させてる紅緒さんが目で助けて!って俺に目線を送る。
わかるかなあ?野球にはブロックサインってのがある。
対戦チームにバレないように合図を決めて、バントしろ!とか投手を揺さぶれ!とか作戦を指示するの。
即興だけど、俺たち最近一緒に居る事多いじゃ無い?なんかいけそうな気がするー!
俺は頭を触って、片手を胸に手を当てて、目を瞑り、目をぱちぱち。
(紅緒さん!謙虚!謙虚に!)
紅緒さんは目と指でオッケーって合図を返してきた!
伝わったかな?
紅緒(舐められるな!ね?オッケー!)
※紅緒さんには伝わりませんでした。
紅緒『これくらいならちゃんと勉強してれば楽勝なのよ!』
おおおお?!
違う!違う!でも受けてる?!
『えー!普段どんな勉強してるの!』
『入試も最高得点だったって本当?!』
『すげ!美人なのに頭も良いんだ!』
何せ学年一位だから多少強気な事言っても大丈夫なのか?
でも人間度が過ぎると敵意を持っちゃう!
見ててハラハラする!
イメージはだいぶマシになった。
紅緒『…私ね、実は心臓が悪くてね…。
勉強ばっかしてたんだ…あはは。』
(やっぱ心臓!心臓か…。いや、今はそこじゃない。)
ええええ?!
紅緒さんは自分の病気をカミングアウトした。
反響は様々で、一部生徒が持ってた体育サボりまくり疑惑がこれでだいぶ払拭できたのと、悪い噂の変な病気貰って中学校行けなかった疑惑を打ち消す!
『そうなんだ!困った事あったら言ってね!』
『大変だね、今は大丈夫なんだ?』
『今度勉強教えてよ!』
『とわっちって呼んでも良い?』
みんな今は好意的に捉えてくれてる。
今の人気なら大丈夫!なんか不祥事とか起こして裏返るととんでもないことになるけど本質的に紅緒さんは真面目だから悪い事しなそうだし。
もちろんそんな単純じゃ無いし、津南や稲田さんみたいなアンチは根強く残ってるし、手ひどく振ったチャラ男たちはあいかわらず反紅緒さんだけど。
だけどこの一日だけでイメージはだいぶマシになった!
昼休みも珍しく教室に居て、みんなとお弁当食べてるのを微笑ましい気持ちで見る。
良かったなあ、これでだいぶ風当たりも弱まるだろうし、友達もできるんじゃ無い?
…それにしても、稲田さんの紅緒さんを見る目が気になるし、津南はまだ紅緒さん狙ってるのかな?
…もうそっとしておけよ。
皆に囲まれてニコニコしてる紅緒さんは客観的に見てすっごい魅力的で、周囲を惹きつける。
これがあの娘の本来の姿なんじゃない?
結局俺は何もしなくても彼女は自分の力で一位をもぎ取り天性の魅力で周囲を惹きつける。俺がフォローしようなんてなんて烏滸がましいこと考えてたんだろ?
本来あれほどの美貌と学力ならカースト的にも俺とは別世界人間だよなあ。
皆に囲まれてる紅緒さんをぼんやり眺めてそんなことを思ってると。
立花(仙道)『早く人間になりたい!』
仙道!俺の声真似なのそれが?
それ妖怪人間!
『おい!変なアテレコするなよ!』
仙道『一躍人気者だねぇ。まああれだけの美人だもん。
当然だよね。』
『それな!』
でもこれでクラスの中の気持ち悪い紅緒さんを遠巻きにする雰囲気が一掃されるといいな。
仙道と社会科教室の必要性について話し合った。
放課後。
放課後になっても紅緒さん人気は衰えない。
第一印象に比べて思ったよりまともだったから安心したのかな?
群がる周囲に疲れが隠せない紅緒さんを見かねた伊勢さんが、
伊勢『ほら!急に人に囲まれて疲れてんじゃん!
また明日話せば良く無い?
ね?とわわん♪』
紅緒『…でも、今日出来る事は今日やらないと…?』
伊勢『もうへろへろっしょ?
無理しない方が良いよ、とわわん!』
伊勢さん、いやに『とわわん』を強調するな…。
紅緒『ありがとう、伊勢さん。』
ニコニコ伊勢さんは、
伊勢『もう!伊勢さんじゃないっしょ?とわわん!』
紅緒『…なるみちゃん?』
惜しい!って顔して、
伊勢『もう一声!とわわんと来たら?私は?』
紅緒『…なるみん?』
大正解!って顔をパーっと輝かせ伊勢さんは喜ぶ。
伊勢『とわわん!』
紅緒『なるみん?』
周囲も、
『確かに少し前から伊勢さんは紅緒さんと話してた。』
『伊勢さんとも友達なんだ。』
『紅緒さんそんな変な子じゃないよね?』
囲んでた子達も一気に囲んで病弱な美少女(!)の体調を考慮して明日にしよう。って雰囲気。
紅緒さんは助かったって顔、伊勢さんは『なるみん』にご満悦。
そこに伊勢さんのギャルともが教室に帰って来た。
『よっすー。』
『おつー!』
ギャル友に向かって新しいあだ名をアピる伊勢さんは、
伊勢『聞いて!聞いてよ!とわわん!』
紅緒『なに?なるみん?』
ギャル友は笑って、
『しげざねに言わされてんでしょ?』
『あは!じゃあ、ざねねは?』
もう伊勢成実原型無いよね。
『もういいじゃん、しげお!』
『じゃあ、紅緒さんはべにおでいいんじゃん?』
伊勢『しげおはイヤ!!可愛くないっしょ!』
ふふ!楽しそう。
俺はその光景横目に見ながらその場を後にする。
安心して社会科準備室の担任に提出物出して帰ろうっと。仙道と別れ4階へ登り、担任の先生に提出して社会科教室でのんびり遠くの田園風景を見ながらぼんやりぼんやり。
東光生が駅に向かって歩いていく。
自転車の生徒も居るし、少し向こうのエイオンやショッピングエリアへ向かう生徒も居る。
ふー。たかだか4階だけどこの光景なんか好きだなあ。
ガラ!
紅緒さん?
紅緒『立花くん!やっと会えた!
今日全然会いに来てくれないわね!』
ぷんすこべにお。
立花『人気者なんだから皆んなと一緒に居れば良いのに?』
せっかく、取り返せそうなんだから皆んなをこの機会に仲間にしちゃいなよ。
紅緒『…私はね、別に人気者になりたい訳じゃ無いのよ。
立花くんの話に出て来るみんなの為に頑張る娘では無いのよね。
…私は私の手の届く人達と仲良く出来て、楽しく過ごせれば良いの!』
ふふ!って笑うと盛大に愚痴り始める紅緒さん。
椅子に座って
朝から皆んなが急に手のひらくるりんぱ!
急になんなの?!
私疲れたー。疲れたよー!
幼児退行する紅緒さんを見て嬉しいやら困ったやら。
紅緒『クラス委員長するに当たっても人気は必要!
頑張って皆にも合わせるけど…疲れるのよー。』
ぐだぐだになってる紅緒さんを揶揄いたくなった俺は、
『お疲れ、べにお。』
紅緒『べにおって…それ正式採用なの?まあ苗字そのままなんだけど?
そういえばなるみんはしげおって…しげおは原型無いわよね?』
ああ、伊勢さんは愛されキャラだから良いんじゃ無い?
紅緒『ふふ!
でもね、あだ名で呼ばれるの…くすぐったくて恥ずかしいね?』
夕方の社会科教室で微笑む紅緒さんはお世辞抜きに可愛くて
これ男子に見せれば一発で落とせるのに…と思ったんだ。
紅緒永遠 あだ名 とわわん newべにお newとわっち
伊勢成実 あだ名
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます