第177話 紅緒永遠にはわからない
紅緒『ちょっと聞いて欲しいし、聞かせて欲しい。』
そう言われて紅緒さんに連れて来られた、校舎裏のベンチ。
紅緒さん怒ってる?イライラして俺居心地悪い。
『何を?』
引っ張って来られたから俺ちょっと不愉快。
ひーちゃんに会いたい。
紅緒『さっきのこと!
何で希望者の居ない風紀委員にあの女の子が立候補してくれたの?
何をしたの?』
ああ、朝ちょっと話したでしょ?ネマワシしてたんだよ。
なって欲しいって打診して、フォローや協力、見返りを約束して。
(俺からジュース2本。)
信頼してる伊勢さんの口添えと俺を信じてもらえるように話してお願いして。
そう言った工作をしていた。それを伝える。
でも、紅緒さんは俺の言った事軽視してたでしょ?
それをオブラートに包んで伝える。
紅緒『…だってあんなにみんな言う事聞かないなんて思わないじゃ無い…。
私を推薦した奴らは責めたてるし…。』
俺は前に同じような状況で責められた記憶があるからそうならないように準備しただけ。
『逆になんで言う事聞くって思ったのさ?
人間なんてそう思った通りに動かないよ?
わかるでしょ?』
紅緒『でも!そうやってネマワシしたり、見返りやフォロー無いとダメなの?
クラス委員長ってそこまでしなきゃいけないのかしら?』
紅緒さんが怒ってる事が何となくわかった。
なんか不純?裏で手を回してみたいに思ってる?
もしくはたかがクラス委員長にそこまで労力?気遣い必要?って事かな?
両方か?
でもなかなかどうして人は簡単に動かないし、決まらなかった事で攻撃してくる。途中でヤジ飛ばされたでしょ?あのまま決まらないともっと大変だったんだよ?
それを回避する為必要な処置だったんだって噛み砕いて説明した。
うまくいかなかった事がショックだったのかな?
紅緒さんはイライラしてて、
紅緒『そうやって、うまくいかなかった私を陰で笑ってるんでしょ?
朝説明したのに軽視した私を。ごめんね!』
目の前の綺麗な女の子に俄然興味が無くなってきた…。
でも助けた以上面倒は見なければいけない…。
『笑ってるわけじゃないよ。
でも意見を軽視されたのはちょっと気になったし、八つ当たりされてるのはちょっと不快かなとは思ってる。
あと、敢えて言うけどさ、紅緒さんは敵を作りすぎだし、悪目立ちしてる。
危なっかしくて俺心配だよ…。もう少し気をつけた方が良いよ?』
2、3気になった点を例を挙げて指摘した。
紅緒さんは悔しそうに聞いている。
出来るだけ朗らかに。でも本音。
嘘はつきたく無いよね、一年は一緒にクラス委員長やるんだから。
見てて危なっかしくてチグハグで好き嫌いハッキリ出しすぎて(嫌いしか出ていないが)子供か?って感じする。もう少しうまく立ち回ってよ…香椎さんだったら…。
俺はやっと気づいた。無意識に香椎さんと比較してたんだ、会ったばかりで2回しか話した事ないこの娘とあの完璧女子を。
無性に恥ずかしくなって俺はすぐに謝った。
『紅緒さん、ごめん。言いすぎた。
俺会ったばかりでまだお互いによく知らないのに…嫌な事を言ってしまった。ごめん。』
目を見て頭を下げる。本当ごめん。
紅緒さんは黙って、俺を見てキョトンとしてる。
すると、大きな目に涙をいっぱいに貯め始めた。
やば!やばい!泣いちゃう!泣いちゃうよ!
紅緒さんはメガネを外して泣き始めちゃった。
紅緒『…うぅぇ、うううぅえぇぇ。』
紅緒さん…。気まずいし罪悪感半端ない。
ごめんね。何度か繰り返すけど、紅緒さんは泣き止まない。
しばらくして泣き止んだ。
紅緒『…立花くんは…私にどうゆう印象?』
えー?答え間違ったらまた泣いたり、怒られたりするやつじゃない?
でも正直にいく。
『世間知らずで?脇が甘い娘なのかな?って思ってる。』
紅緒さんにすごい目で睨まれる。
間違えたか?
紅緒『さっきみたいな事を人に言われたの初めてだわ…。
ちょっとショック受けちゃった。ごめん。
でも同年代の人に、男の子にそんな事言ってもらった事が無くて…おかしいわよね。』
紅緒さんはまたメガネをかけてまだぐずついた鼻声で続ける、
紅緒『私の事きっと噂聞いてるかもだけど、本当なんだ…
私体が弱くて、中学校全然行けなかったんだ。
…正確には小5の冬休み頃からかな?』
感染る病気とかじゃないから!安心してね?臓器の問題だから!と乾いた笑い。
小5から高校入学まで?
俺はビックリして声が出ない。
小5の冬休みって…俺が初めて香椎さん家行ったクリスマスパーティー頃かな?
そこから先週の高校入学まで?学校生活の思い出が無いって事?俺はその期間にいっぱい思い出がある。色々なイベントを香椎さんや宏介たちと語り尽くせないほど楽しんだ。
目の前の娘は俺が泣いて笑って楽しかった期間ずっと学校に行けずに…?
思った以上に深刻な話にコメントしようもない。
紅緒『立花くんは一緒にクラス委員長するし、親身になって心配してくれたし、私に注意してくれたから少しだけ知ってて欲しかった。
…別に絆されたとかフラグが立ったわけじゃ無いからくれぐれも誤解しないでね?』
キッチリ線が引かれた。大丈夫!俺は問題ない!
紅緒さんは続ける。
中2の後半位にはもう入院しなくなって、オンラインで授業受けたり、リハビリと勉強しながら過ごして。中間と期末だけ先生立ち会いでテスト受けたり。だから同中の子達も私を知らないか忘れてるって思ってたのよ。私も忘れてたし。
ポツリともらす。
紅緒『いや、でも見た通り?今は普通に歩けたり動けたり学校生活がおくれる!って医師の診断もおりてるし?入院生活でする事無いから勉強はバカみたいにしてたのよ。
高校だって流石に天月は無理でも県高がギリギリいけるか?いけないか?って位にはできるのよ。』
少し誇らしげに胸を張る。
見た事無いほど色白なのはそのせいなのか!
道理で世間知らずなわけだわ!
二つ納得した。
しかしその美貌と愛らしさからは想像できないほど過酷な人生をおくっているこの娘に何も言えない。
『じゃあ、何で東光に?』
重い話を避けるようにそれほどの学力ならここじゃなくても?って疑問。
紅緒『近いから。』
『流川かよ!』
俺は突っ込んじゃう!
最近国民的バスケ漫画読み返したばかりだからなのかな?そっち系が多い!
紅緒『はは!でもそれも本当。体力?スタミナが全然無いんだ私。
あと私の家すぐそこなの。校舎から見えるのね。
入院と退院を繰り返して家に居て外を見てると東光高校の生徒さんたちが毎日楽しそうに大変そうに登下校してるのを見ててね。
ずっと、ずーっと憧れてたんだ。だからほぼ通ってない中学校は無理して登校せずに高校に照準を絞ってリハビリや勉強を頑張っていたの。
だから月形中や稲田さんの事なんか完全に忘れてたし、興味も無い。
…あの子小学生の頃私をいじめてた子だったのよ。最近思い出したのだけれど。』
そんな事が…。
鋼のメンタル?違う
彼女にとって東光はずっと憧れの存在で、学校生活を夢見て生きてきたからこんなに目が違うんだ…!
念願だった学校生活だったから…
紅緒『…それでね?立花くんにお願いがあるんだ。
…恋人になって欲しいとかじゃあ無いのよ?
私は君が言うように世間知らずで人間関係や学校生活がわかっていない。
我ながら間抜けなんだけど敵を作って、味方は居なくて…。
私に人間関係を、学校生活を教えて欲しい。
出来ると過信してたのよね。浅はかだったわ。』
自嘲してるけど紅緒さんは強い。
失敗したなら取り返す!知らなかった事が原因なら学習する!
言うのは簡単だけどどれだけ大変なことか。
紅緒『暇な時、私とお話して欲しい。
立花くんの今までの事、学校生活、クラス委員長のこと。
なんでも良い。教えて欲しい。
私は良ければ勉強教えてあげるし?私見てくれだけは良いから?男の子なら嬉しくない?』
『嬉しくない。
でもわかった。俺の知ってる事で良ければ話をしようか。
もし良かったら紅緒さんの事も教えて欲しい。』
紅緒『ふふ!
私はね、貴方が気に入ったの。
他の男の子と違って私の容姿に全く興味が無い。
容姿は私の魅力だってわかってるけどああもガン見されると流石に辟易しちゃうわ。
…もし…もし友達になってくれたら…嬉しいのだけれど…。』
『…まだよく知らないから…。
ごめんなさい!』
俺、友達をむやみに増やさないタイプ!
紅緒『は?こんな美人が言ってるのに?』
紅緒さんは怒りながら俺を追求する。
クラスに居る時の繕った綺麗な横顔より今の感情を露わにした怒り顔の方が何倍も魅力的だなって思った。
きっとまだ何か隠し持っている気配がする。
紅緒永遠もまた頑張り屋さんな娘なんだろう。
こうして、紅緒さんと話しをする時間を設ける事になった。
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