第151話 香椎先輩に謝りたいこと【side立花望】
年が変わる。 side立花承
クリスマスが終わればもうあっという間に大晦日。
またひーちゃん大興奮!
年末特番見て、紅白見て、年が変わる。
ひーちゃんも望もはしゃぐから年が変わる頃には夢うつつ。
二人してうつらうつらして、もうわけわからん状態。
承『望?光?あけましておめでとう!』
望『…もう食べられないよぅ?』
光『…みゃあ?』
年が明けてしばらくしてやっと目が覚めたのか、なんで起こしてくれなかったの?ってふたりに抗議されるが、
(姉弟が抱き合って眠る光景が可愛くて起こせなかったなんて言えない。)
って思った。
爺と望と日が昇る頃初詣に近所の神社へ行った。
後はもう退屈でダラダラしたお正月だったんだ。
そして、新学期が始まる。
いよいよ受験が近づく、独特の緊張感がある。
2学期の期末テストは望の外町襲撃事件があって手につかなかった割に大変出来が良く、先生から志望校ランク上げても良かったかもな?って言われる位だった。
多分香椎さん式勉強法のおかげ。
でも近いし東光高校でなんにも問題無い。
新学期久々にみんなに会えた。
冬休みもちょくちょく会ってた宏介は彼女の三島さんとクリスマスイブデートや初詣行ったらしい。
青井は小幡さんと勉強会を何度かしていて、成績も上がって東光行けるかも?って。
伊勢さんは小幡さんに感化されて冬休み中金髪にした!ってスマホで撮ったの見せてくれた!めっちゃ派手美人!でも君受験生だよね?
田中くんは公立の最難関県高を志望してて冬休みは塾で缶詰だったんだって?すごいよね。
そして、香椎さんはと言うと、
新学期早々人に囲まれて話しかけるタイミングなんて無い。
これが本来の姿だよね!まさにクラスの中心、役割的、人気的、魅力的に人を引き寄せちゃうんだよね。
外町が信望を落として、そのタイミングで完全にクラスを統制下においた。クラスは香椎さんの思い描くみんな仲良くを体現しようとしている。
外町もロイン流出から大人しくて、外面の良い、クラスの中心的な存在として人望を回復させつつある。
香椎さんにもう敵は居なくて、今クラスはいじりやいじめは無く、皆それなりに友好的な良い雰囲気なクラス。
俺は2学期に直接クラスメイトを皆の見てる前で直接煽ったせいで皆にいまだ距離を置かれているが以前よりずっとましな状態。
受験近いからそれどころでは無いのだろうけどクラスすごく良い状態。
俺は思う、
(さすが香椎さんだなあ、結局俺居なくっても時間さえあればクラスを掌握出来てたんだろうなあ?)
自分だって忙しいのに色んな係や委員会仕事をフォローしつつ頼まれれば勉強まで教えてる。ほんとすごいよね。
さすが香椎さん!
受験も近づき、先生たちも、もうクラス委員長に負担はかけないように仕事はほぼセーブされてる。冬休み以後は宿題も出さない。
そうすると俺の非公認役職のクラス委員長補佐も仕事は無く、美術室も入室出来ない(担任の柳先生に申告すれば開けてもらえるけど)。
だから基本香椎さんと接する事も無い訳で。
ちょくちょく目は合うけど話をする事も無く、日々過ぎていく。
でも目が合うとニコってしてくれたり、マフラー指差してドヤ顔してみたり、俺の手袋見て何かジェスチャーしてみたり(俺にはわからない)リアクションが楽しい。
外町落とし穴事件の報復対策からずっと伊勢さんと望と登下校してるんだけど、もう各自気をつけるって形でいいかな?って提案したけど望と伊勢さんは一緒に登校してる。時々俺は付き合わされる。
2人は気が合うのかな?
慌ただしくて毎日があっというまに感じる。
⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎
謝りたいこと。 【side立花望】
3学期が始まって3年生は受験を控えて気忙しい。
うちの兄ちゃんでさえも勉強の時間増やすくらいだもん。
大変なんだなって思うんだよね。
香椎先輩は私立、公立とも県内最難関を受験するんだからもっと大変だよねって思っちゃう。
あたしは4月に中学生になってテニス部に入ってから香椎先輩と小幡先輩に目をかけてもらって色んな事を教えて貰った。
特に香椎先輩には公私ともにお世話になってた。
気づけばあたしは香椎先輩が大好きになってた。
テニス教えて貰ったり、体育祭で一緒に小幡先輩と戦ったり思い出もたくさん。
だけに文化祭で急に冷淡になったり、兄ちゃんの気持ちを踏みつけたあの態度に腹が立ってあたしは先輩と絶交した。
文化祭が始まると急に先輩はまともになってあたしに謝って来たけどあたしは許さなかった。
あたしは腹が立って外町をハメてやった。
そのあと、色々あって先輩と仲直りしたんだけど…
あたしはまだ先輩に謝れていない。
腹が立って冷淡に接したのに後輩のあたしに根気よく謝ってくれた先輩にあたしも謝らなきゃいけない。
多分先輩は知らない、あたしが外町を襲撃したこと。
その辺の説明をするとあたし先輩にすっごい怒られるかもしれない…。
受験近くなると迷惑だろうから、新学期早々に先輩をあたしの家に招待する。
1月2週日曜日の午後。
呼び鈴が鳴り、香椎先輩が家に来た。
体育祭の衣装作りの時来たことあるからすんなり来れたみたい。
『こんにちは、望ちゃん♪
…ひょっとして承くんも居るのかな?』
先輩はお嬢様みたいな格好で、ピンクのヒラヒラしたブラウスにグレーのスカート、白いロングコートを羽織って可愛い白い帽子までかぶってる。後輩の家に来る格好?ごめん、兄ちゃん居ないんだよね。
先輩は手作りのチーズケーキを持って来てくれた!これ兄ちゃんが絶賛してたやつ!って言うと、
『絶賛してたの…?』
頬を染めて先輩超可愛いの!
上がって貰って、自分の部屋に案内。
8畳の和室を兄ちゃんとの相部屋だけど先輩的には問題無いと思うんだよね?
『で、望ちゃん今日はどうしたの?』
先輩はあたしの方を向いて微笑みながら優しく問いかけてるけど、目は兄ちゃんの部屋スペースを凝視しているよね?
あたしは文化祭の話から襲撃に至った事を香椎先輩に話した。
一部、兄ちゃんが土下座した話と、一年先輩に告白して付き合うなって誓約した話だけ除外して。
友達のノーパソを借りて、落とし穴から土下座直前までの動画、土下座シーンは音声のみ、先輩に告白、交際しない誓約は取り消しのとこだけカットして貰った。
『こんな危ないことしてたの!』
先輩は驚く、落とし穴に落ちるとこだけは声を出さずに笑っていた。
先輩は動画が終わるまでハラハラしたり、びっくりしたり、悲しい顔をしたり色んな表情を見せてくれた。
全部見終わって一息つくと先輩はあたしを厳しく叱った。
どんな理由であれ暴力は犯罪だと、傷つけても傷つけられても兄ちゃんやひーちゃん、両親、みな悲しむんだよ!女の子なんだから!もし何かあったらどうするの!
不思議と兄ちゃんの説教に良く似ていた。あたしは素直に何度も謝った。
一通り話が済むと、気付けば先輩は泣いていた、何事も無くて良かった、無事で良かった、承くんの為なんだね?って抱きしめながら泣いてた。
(あたしのせいで兄ちゃんと先輩が結ばれないなんて悲しすぎるって思ってもいたけどそれは言えないなあ。)
って思った。
『先輩、あたしまだ先輩に謝りたいことがある。』
『え?何?まだ何かあるの?!』
先輩はまだ余罪があるのか?とビビってた。
あたしは、謝る先輩を何度も冷たく、侮蔑する態度であしらってきた。
くれた洋服をもう要らない!って親友たちにあげちゃった…それを謝りたい。
『…先輩。
あたしね?先輩と絶交してた時、先輩が何度か謝ろうとしてくれた時に酷い事を言ったよ。ごめんなさい。
あたしと話をしよう?って何度も声かけてくれた時にあたし顔を見るのも嫌で心無い事を言ってしまって…ふうぇ、うぇぇ、ごめん、なさい!』
あたしは謝罪しながら泣いてた、ちゃんと謝るべきだけど泣いてしまった。
先輩は泣いてるあたしを抱きしめてくれて、背中を撫でながら、大丈夫、大丈夫って言いながらあたしを宥める。
(… もしお姉ちゃんが居たらこんな感じなのかな?)
先輩は、優しく、宥めながら言う、
『気にしてないよ?そんな酷い事言ったかな?』
先輩もちょっと泣きながら、優しく微笑んで気にして無いって言ってくれて、それでも自分の言った事だからよく覚えてる、ほんとごめんなさい先輩。
『ふぇぇ、言ったよう。
ばーか!匂いフェチおばさん!
とか、
好きなだけ外町とよろしくやってろ!エロババア!
も、言ったし、
ちっ!うるさいなあ、兄ちゃんと私に近寄るな。
エロガッパ!
とか言っちゃって…うぅ、ごめんなさい…。』
『結構酷い事言われたね?そういえば…。』
先輩は顔を引き攣らせた。
でも、この機会に全部謝っておかないと!
『えっ、ううぇ、
チッ!女優気取り女じゃん!
とか
あんたさあ、外町と付き合ってるんだって?
もうヤッたって聞いたけどほんと?
淫乱ばばあw
とか
エロエット?
とか、言ってごめんなさい、先輩。』
『…本当に私のこと好きなのよね?望ちゃん?』
香椎先輩は承くんとはね?いつも謝りあったあともうこれでおしまい!って良いところで許しあうんだよ?イタズラっぽく笑うともう一度、もうこれでおしまい!って宣言した。
『もう一個だけ!
先輩がくれた洋服大事にしてたんだけど、あの時にね、腹が立って外町襲撃に参加してくれた親友たちにほぼ全部譲っちゃった…。』
あの頃は私のこと嫌いだったよね?仕方ないよ。
って許してくれた。
『でも?このワンピだけは手元に残したんだね?』
壁にかけてある先輩から譲ってもらったお気に入りのワンピを見ながら先輩は言う、
あたしはやっぱり泣いてしまい、
『だって、これだけは…
このワンピは先輩のお気に入りを譲って貰った…あたしと先輩の『繋がり』なんだもん!』
香椎先輩はまた、しょうがないなあ。って言いながら抱きしめてくれた。
先輩はいつも柔らかくて、良い匂いがする。
『もし、あたしが成長して、胸がキツくなる頃、信頼する後輩にこのワンピは譲るよ、先輩。』
『うん、望ちゃんの見込んだ後輩楽しみだね?』
しかし、いつまでたってもあたしも胸は成長しなくて…ずーっとあたしにぴったりだったんだよね…。
香椎先輩はそのあと、自分の女優癖の話、前日それが解けた話、本番は自分の気持ちで演じたって教えてくれた。
香椎先輩のタブレットで見せて貰ったけどリハーサルと全然違うの!すっごい可愛い!そして外町に気持ちが向いてないのはすぐにわかった!
『リハーサルの時は感じ悪くて兄ちゃんの話も全然興味示さなかったのに?翌日ですよね?何があったの?』
『何があったというか…ナニがあった?』
先輩が言葉を濁すから、追求していると、先輩は真っ赤になりながら言った!
『もう!良いでしょ!
承くんの!匂いくんくんしたら我に帰ったの!』
(先輩、本当に匂いフェチおばさんだー!!
…でも、前にあげたワイシャツもう半年以上前だけど?何か別のアイテムなのかな?)
さすがに言えない。
でも、そんなに兄ちゃん好きなんだね?ふふー!
『仲直りの印に、これどうぞ?』
『仲直りしたんだから気を使わなくって良いよ?』
『兄ちゃんの子供の頃の写真のミニアルバムです。』
『頂くね?』
『あと兄ちゃんが最近、枕低いって買い替えたんですよ?
その低い枕は一回洗濯してからひーちゃんが一回使ったんですけど、
『にいちゃあの匂いがする!』っt』
『それも頂戴?』
食い気味に先輩は差し込んでくる!
先輩はあんなに賢いのにチョロい。
来週、先輩はまたお下がりをくれるって!
謝ってスッキリした⭐︎
⬜︎ ⬜︎ ⬜︎
その晩の香椎さん。
『承くんの枕!これはもう、承くんと一緒に寝てるようなものだよね?』
くんくんくん!くんくんくんか!!
…ふー、ふーっ、ふーっ…♡。
その夜、香椎玲奈は大変捗ったらしい。
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