第146話 どっちも大事!
香椎さんとぶつかって、ぼんやり昼ごはんを食べてから午後弟のひーちゃんを託児所へ迎えに行く。川沿いを歩いてのんびり。
(玲奈さん、泣いてたなあ。)
母さんが毎年この時期に言う。
母『なかなか手の込んだもの作ってあげられないからね、クリスマスイブ位はご馳走作るよ!何が良い?』
望は嬉しそうに、
望『ケーキ!ケーキ!
あと唐揚げ!』
今年はひーちゃんも喋れるようになって、
光『ひーちゃんも!ひーちゃんもケーキ!』
母『ふふふ!承も?』
承『唐揚げはカレー味も!』
俺たちがリクエスト出すと母さんは嬉しそう。
だから、香椎さんの好意は嬉しいけど、やっぱり要らない…よね。
でも、あんな言い方しなきゃ良かった…。
無神経って俺じゃん。
玲奈さんの手料理は美味しい!好きな子の手料理ならなんでも美味しいだろうけど玲奈さんの手料理はすごい。
そんな事を思ってると託児所に着く、早めお迎えは嬉しいらしく、ひーちゃんは大騒ぎ!
あすはクリスマスイブってのもあるんだろうけどクリスマスの歌を一緒に歌わされる。
ひーちゃんに聞いても仕方ないんだけど、聞いてみる。
『なあ、ひーちゃん?
母さんのケーキと菓子ちゃん(※香椎さん)のケーキどっち食べたい?』
3歳児に聞いてもしょうがないよね?
光『どっちも!ひーちゃんどっちも食べたいよぅ!』
『ひーちゃんは食いしん坊だな?』
確かにどっちもかな?望に聞いてもどっちも!
って言うだろう。
むしろ玲奈さんの唐揚げ、ケーキ断ったって言ったら俺怒られるかも。
俺は小さい男でコンプレックスを拗らせてる。
好きな子の親切を無下にしてしまう情けない男だなあ。
さっきの絶対俺が悪いな。
母さんなら俺が女の子からケーキとか貰ってもきっと喜んでくれてじゃあ母さんのは25日にしよう!って言うかも。
そもそも相談すれば良かったんじゃないか。
でもそれより自分が間違っていたならすぐ謝るべきだ。
ひーちゃんの手を引きながらそんな事を思う。
あんな態度とって恥ずかしい。
嫌われたかも?それでも誠心誠意謝ろう!
俺はひーちゃんを爺ちゃんに預けて香椎さんちへ走る!
15:00頃、家に着くけど…女の子の家訪ねた事ない…。
前回は小5のクリスマスパーティーのそれ以来。
あの頃わからなかったこと、
(家、超立派…子供すぎて前回はわかってなかったなあ。)
やっぱりお嬢様だよなぁ、って痛感する。
1時間位なんて謝るべきか考えながら香椎さんちの前の公園で立ってる。
あれ?俺不審な人かな?
17:00になったら家を訪ねてみよう。それまで心の準備…。
でも、少しして、香椎さん出て来た!
グレンチェックのコート?にニットのインナー、ブラウンのパンツで、香椎さんがスカート履いてないのを初めて見た。香椎さんの綺麗な脚のラインに目を奪われてしまう。ダメダメ!そんな目で見るな!
自転車で出発しそうで、急いで声かける!
『香椎さん!』
玲奈さんのビックリしたリアクション可愛い!慌てて自転車を降りて駆け寄ってくる、
ああ、悲しい顔してる、俺の無神経な言葉が傷つけてしまった…。
謝って済むかはわからないけど謝ろう!
『『さっきはごめんなさい!』』
綺麗にハモってポカンとするふたり。
悲しい顔から一転ふたりで笑っちゃう!
俺たちっていつもこうだよね?
玲奈さんが家から出てきたのはひょっとして?
同じ気持ちだったら嬉しいなぁ。
俺はこの娘にどうしようもない程惹かれる。
毎日、毎日好きになっていく。
俺と玲奈さんじゃ釣り合わないって思っててもぐいぐい惹きつけられていく。
公園の藤棚のベンチに座って話しをする。
藤の花が咲いてるとキレイなベンチも冬のこの時期は寒々しい。
それでも怜奈さんが笑って座れば華やかで居心地の良いリラクゼーションスポット。
ふたりで交互に謝り、キリがないからこれでおしまい!仲直り。
まず俺から話そうとすると、指で唇を抑えて言った、
『承くんは私に会いに来てくれたから私から話させて?』
玲奈さんはママとお姉ちゃんとの話、家族を思う気持ちの話、香椎さんママの思うことの話をした後、
『私は喜んで欲しい!ってみんな得じゃない!って大義名分に、褒めて欲しい!って自分の気持ちを巧妙に混ぜ込んで無理矢理承くんに押し付けてた。
承くんちの為になる、見返りいらないとか言っても承くんの、承くんの家族を思う、家族との時間を大切にしたい気持ちを軽視していた!
ごめんね、承くん。』
とんでもないよ!俺が思っていたこと以上に深読みして反省してる玲奈さんに俺も思ってたこと、コンプレックス、家族のクリスマスのこと、母さんの喜んだ顔、色んな話をした。
それを玲奈さんはうんうん、ってしっかり聞いてくれた。
俺は小さい男で嫌われても仕方無い。
でもあんな風にケンカ別れしたくない。
本当ごめん、玲奈さんがそんな嫌な女の子じゃ無いのはわかってるはずなのに…。
『もう!謝るのはおしまいって言ったでしょ?』
玲奈さんはニッコリ笑って許してくれた。
『私謝りに行こうって思って家を出てね?
もう承くんが私より早く仲直りしたくて
待っててくれただけでもう嬉しくて仕方無いよ。
こんなに暗くなるまで待たせてごめんね?』
『ごめんは言わない約束でしょ?』
ふたりでまた笑い合うよ。
『一個だけ聞いても良い?
本当はお母さんのケーキと私のケーキどっちが食べたい?』
なんとなくだけど、家族と私どっちが大事?って問いにも聞こえる。
間髪入れず答える、
『両方!』
俺は望とひーちゃんの兄なんだね?本音はこれ。
家族も玲奈さんもどっちも大事!超大事!!
香椎さんは笑って続ける、
『ふふふ!承くんらしいね?
話戻すけど…嬉しかったな。
私が謝りに行こうって思った時にはもう承くんが来てくれて。
嬉しかったな。承くんが意地を張るより私と仲直りしたいって思ってくれて。』
そう言って、玲奈さんはベンチに手をつく俺の掌に自分の掌を重ねた…って、
『冷たい!手冷たいよ!
ちょっと待って?承くん何時からここで待ってたの?』
えーっと?
『15:00位から?』
『2時間?!
私バカだ!もたもたしてたからだ!
うち!うちに寄って行って!
そうだ!ケーキの試作品あるよ!
お願い!承くんに食べて貰いたくって作ったの!
食べて行ってくれるよね?』
ビックリ!からしょんぼり。そこから頭の上にピコーンって電球が点くようなようなリアクションからの怒涛の寄り切りで香椎家へ訪問することになった…。
怜奈さんの表情の変わりっぷりに目を奪われてしまい俺はなすがまま。
結局俺は香椎さんには敵わない。
大体香椎さんの思った通りに事態は動いていく。
香椎家に入る直前、玲奈さんは少し思案顔?
『承くん?明日クリスマスケーキって何切れ食べるの?』
『…うーん、うちは家族多いから一切れかなあ?』
玲奈さんはニコニコしながら言った、
『承くんママのケーキが一切れなら私のケーキは二切れ食べて貰うよ?』
『…本当にその香椎さんルールなんなの?』
第79話 ダブルブッキング
第107話 戦い終わって参照。
こうして香椎家へ。
めっちゃ緊張する…。
入って入って!
促され玄関に入る。
『お邪魔します。』
『いらっしゃい♪』
『いらっしゃい!君が承くん?』
玲奈さんママは前にクリスマスパーティーであいさつした事ある。
綺麗なママだよね。さすが玲奈さんのママ!
もう一人のすっごい美人お姉さんが噂のお姉ちゃんだね。
確かに綺麗!
痛、玲奈さんが不満そうに腕をつねる。
『…お姉ちゃんに見惚れてた!』
『そんなことないよ?
でも流石玲奈さんのお姉ちゃんだけあって綺麗だね?』
玲奈さんのお姉ちゃんだから綺麗と伝える。
『ふふー!おだててもケーキしか出ないよ?
…でも注意しないと…初恋は厚樹くんお姉さんらしいし…。
大人のお姉さんに弱そう…。』
こうして緊張感あふれるお家訪問が始まった。
思えばあのクリスマスパーティーからちょうど4年。
奇しくも同じ12月23日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます