第145話 何が大事?【side香椎玲奈】
私は提案をピシャリと断られただけでは無く、承くんに無神経とかうちのクリスマスを否定してる的な事を言われてショックを受けた。
(なによ!そんな言い方しなくたって良いじゃ無い!)
私は腹が立つやら悔しいやら悲しいやら色々な感情がごっちゃになって泣きながら怒りながら走って帰った。
家に帰るともう13時、部屋着に着替えてママが用意してたサンドウィッチを食べてると、
『玲奈?明日は朝から用意するの?』
って、聞かれた、
『いらない!って断られた…あんな言い方しなくても良いのに!』
『そうなの?良いならいいけど?』
ママはおっとり確認してキッチンに戻った。
私はイライラして自室へ戻ると、乱暴にカバンを投げ出す。
ただ美味しいって言って欲しいだけで見返りなんて求めてないし、家をあわれんだわけでもないのに!
悩み聞いた時も思ったけどちょっとナイーブになりすぎなんじゃ無い?
私はイライラしてた。
14時すぎにお姉ちゃんが帰って来た、
『玲奈ー!冬休み何して遊ぶ?』
『お姉ちゃんも私も受験生でしょ!』
私は中学3年、お姉ちゃんは高校3年、どっちも受験だよね。
今日だけ、今日だけって言いながらお姉ちゃんはレースゲームを起動する。
レースゲームをしながら、
『玲奈は明日クリスマスだから忙しいね?ケーキと唐揚げの準備できたの?』
レースゲームで私のヨッスィーはクラッシュした。
『…断られて、無神経な女呼ばわりされた…。』
『なんで?何があったん?』
お姉ちゃんはレースゲームより絶対面白いわって言ってゲーム機の電源を落として、嫌がる私をキッチンへ引き摺って行き、ママにその話をした。
ママもさっき聞いたけど何があったの?
って言うと、私はしぶしぶ今日の出来事を話した。
姉『玲奈の好意じゃん?承くん器ちっさ!!』
…でも承くんバカにされると腹が立つ。
私はお姉ちゃんに承くんをバカにしないでって小声で抗議した。
姉『いやいや!玲奈がそんなに想いを寄せるほどの男じゃ無い!
僻んで勝手に被害妄想で言ってるんじゃん!』
『お姉ちゃん!そんな事言わないで!
承くんはそんな男の子じゃ無いよ!!』
私は思わず声を荒げた、私の中に少しそう思ってた自分がいる。
でもそんな漢じゃない事は私が一番わかってるよ!
いくらお姉ちゃんでもそんな言い方は許せない!!
姉『ごめんごめん、そんな男の子じゃない事は玲奈が一番知ってるよね?
じゃあなんでなんだろう?そこを考えたら?』
私を煽ってそこを気付かせる為に?
でもね、煽らないで妹に気付かせて欲しいな?
まあお姉ちゃんだから仕方ないか…。
ママ『…玲奈の気持ちもわかるよ。
ママも好きな人に手料理食べて貰って、美味しい!って言われると嬉しくて舞い上がっちゃうよね。』
私は頷く、だってそうでしょ?
自然な気持ちだもん。
ママ『でも、承くんのママの気持ちになったらどうかな?
仕事忙しくてなかなか手のこんだもの作れなくって、クリスマスの時だけでも気合い入れたご馳走を子供たちに食べさせてあげたいよ。』
あっ!思った。
承くんは人の痛みに敏感な漢であんな言い方したのは承くんママの為?
ママ『これはママの気持ちだけどね?
いつもいつまでも一緒にクリスマスを過ごせる訳じゃ無いんだよね?
玲奈が彼氏出来て外ディナーを食べてお泊まりしてくるようになるかもしれない。お姉ちゃんが結婚して家を出て行くかもしれない。
きっと今だけ、いつか二人ともママになって旦那さん子供にクリスマスをしてあげる側になるの。』
お姉ちゃんも私も頷く。
ママは続ける、
ママ『ママだって小さい頃はおばあちゃんにクリスマスしてもらって楽しい幸せな記憶がたくさんあるよ。あのチキン美味しかったな、ケーキ最高!プレゼント嬉しい!って。
でもママになってからのクリスマスも本当に素敵なの♪
パパと結婚してふたりで祝って、お姉ちゃんが生まれて、玲奈が生まれて。
クリスマスは毎年賑やか!でもいつかお姉ちゃんも玲奈も家から出て行く時が来る。
それはそれで幸せな事なんだよ?でも何かしてあげられるのはきっと今だけ。』
きっと、今母から娘へ大事な事のひとつが伝えられてるんだってわかった。
私もお姉ちゃんも真面目に聞く。
ママは続ける、
ママ『だからね、思うな。
例えばパパの仕事先の社長さんがこのチキンとケーキ絶品で家では食べられない味だよ!クリスマスに食べて!って差し入れてくれてもママは全然嬉しく無い。
クリスマスイブの晩だけは、ママの手料理で娘たちとパパと一緒に過ごしたいなあって。
ママはプレゼントなんていらない、でも家族が美味しいねって喜んでくれる顔が最高のプレゼントだと思ってるから。
ふたりとも何年前のクリスマス何をしたかなんて具体的に思い出せないよね?
でも家族で笑って美味しいね?ってご馳走食べて、プレゼントにはしゃいで、パパとママはふたりが喜んでる姿で幸せ!この形はいくつになっても変わらないでしょ?変わらない家族の形と気持ちがそこにあるよね?
玲奈の好きになった男の子はきっとそうゆう気持ちを大事にする子なんじゃない?』
ママは娘の私から見ても美人で頭が良くてバインバイン。
ママの話は私の中につっかえてた気持ちをストンと流してくれた。
『ママ!お姉ちゃん!私出かけてくる!
私ね、承くんに自分の気持ちを押し付けてた!』
私は喜んで欲しい!ってみんな得じゃない!って大義名分に、褒めて欲しい!って自分の気持ちを巧妙に混ぜ込んで無理矢理承くんに押し付けてた。
承くんちの為になる、見返りいらないとか言っても承くんの、承くんの家族を思う、家族との時間を大切にしたい気持ちを軽視していた!
玲奈の喜んで欲しいって気持ちに嘘は無いよ。それはきっと伝わってるはず。
これからクリスマスにお正月と気持ち良く過ごす為に会ってわだかまりは解いておきなよ?ってお姉ちゃんが言う、
『いってらっしゃい!』
『もうすぐ、暗くなるから気をつけてね?』
すぐに着替えて、泣いて腫れた目元を少しだけファンデで隠して…承くんに会うんだから変な格好はできないよ!
承くんの家族にも会うかもしれないし?
少し身支度に時間をかけて16:30頃家を出るよ。
歩くと15分位かな?自転車で行くかな?
車庫から自転車を引っ張って出して、準備が整う、
でも、なんて言えば良いかな?
承くん怒ってるかな?無神経な女だって嫌いになってないかな?
こんな風にぶつかったことないから家から飛び出したは良いけど私は途方に暮れていた。
考えすぎるの私の悪い癖だよね。
道中考えよう。このままじゃ嫌なのは間違いないよ!
また笑い合ってドキドキして楽しく過ごせる関係でありたい。
願わくば承くんもそう思っててくれたら良いなあ…。
結局すっごい考えてのろのろ家を出る。
よし!行こう!自転車に跨り、いざ出発!
『香椎さん!』
家を出た直後、私は急に声をかけられた!
びっくりした!
承くん!?
今まさに会いに行こうと思ってた承くんがすぐそこに居た。
うちの前は道路を挟んで向かいが公園になっている。
その公園の入り口に承くんは立ってた!
私は自転車を放り出して駆け寄る!
承くんの悲しい目を見ると切なくなる…、私もきっと申し訳無くて悲しい顔してるだろうね?
色々考えてたけど飛んじゃった。
素直に思ってた事を伝えよう。
『『さっきはごめんなさい!』』
綺麗にハモってポカンとするふたり。
悲しい顔から一転ふたりで笑っちゃう!
結局わたしたちっていつもこうだよね?
承くんが来てくれて私は嬉しくてたまらない!
きっと同じ気持ちなんだよね。
寒いはずの公園が暖かく感じる、さて?何から話そうかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます