第143話 乙女の尊厳

外町と話がついたと思ったら、望が香椎さんを連れてきた?

何が始まるの?



香椎さんは目を爛々と光らせ殺気立ってる?

今まででは席替えで待つ様に言われて伊勢さんに着いて行った時が今までで一番怒られたんだけど今回の方が怖い!



優しい笑みを浮かべてるけど目が笑っていない…。

ビリビリ来る殺気。

唯一の救いは殺気は外町に向いている事。



声は優しい…?

ん?違う…声色だけで感情が全く入っていない。




香椎『ねえ?外町くん?

さっき、望ちゃんに聞いたんだけど?

私がね?外町くんと付き合ってるって。

そう外町くんが言ったって聞いたんだけど本当かな?』




外町は汗をかきながら、絞り出す様に、




外町『ロミオとジュリエットを演じてた頃にさ、一緒に帰ったり、お茶したり、毎日ロインしたり、名前で呼び合ったり、手を繋いだりしたじゃない?』



香椎さんは返事もせずに、顔の動きだけで先を促す。

控えめに言って怖い。ここに居たくない!


外町『それってもう…付き合ってる様なものじゃない?

ロミオとジュリエットは愛し合ってるんだし?』



香椎さんはため息をついた。



香椎『はあ、

外町くん?お芝居と現実は違うんだよ?

一緒にしちゃダメだよ?お芝居の話でしょ?』

※香椎さんは言っちゃいけない。



香椎『第一お茶や手繋ぎ、下校、名前呼び、位で付き合ってるならとっくに…。』

…香椎さんは遠い目をしている。



ふう、って息を吐くと香椎さんは外町から目を離さずに続ける。



香椎『告白された覚えも無いし、受けた覚えも無いし。

受ける気も無いよ!

そんな事言われると私困っちゃうんだよ?

そんな根も葉も無い事は絶対に!2度と!言わないでね!』


チラチラこっちを見ながら外町にキツく念押しする香椎さん。

でも…まだ殺気は消えない。



香椎『他には?

他には言う事無いかな。』



外町は汗をかきながら無いよ?って言った瞬間、


香椎『望ちゃんがね?外町くんが私とヤッた!って言ってたよ?って言うの!

私!後輩に淫乱呼ばわりされてね?こうゆうのって証明するの難しいんだね?

なんで私が怒ってるかわかる?』



雰囲気はビリビリを通り越してバリバリする。

香椎さん顔!般若みたいになってる!



香椎『男の子ってそうゆうの自慢したいって聞いた事あるけど…

これは許せないよ!

付き合ってるって嘘もヤッた!って嘘も信じる子は必ず居て、その噂がその子の評判になるんだよ?!

付き合ってヤッてるならまだしも!

なんで!私が!後輩に淫乱って!罵られて!

初キスだってしたこともないのに!』



たまらず口を挟む、



承『女の子がセックスとかヤッてるとか淫乱とか大声で言っちゃダメ!』

手でバッテン作って香椎さんに言うと頬を染めながら香椎さんは取り繕い始めたが少しするとまたキレ始めて外町を30分説教していた。



落ち着くと、頬を真っ赤にしながらこちらをチラチラ見て


香椎『いい!わかった?!

私はまだ誰とも付き合った事無くて!

卒業までは誰とも付き合わないよ!

それに!まだ誰ともゴニョゴニョ…処女だよぉ!!』



望『処女だよぉ!ってw

だってさ、兄ちゃん!』



ニヤニヤしながら望がこっちを見てるけど、俺は元々信じてるから…でも直で聞けてなんかホッとする。



望は香椎さんを見ながら、


望『じゃあ先輩せんぱいばいばーい!

最近、兄ちゃんと成実ちゃんと3人で毎日登下校してるんだよー、

まったねー?』



香椎『なんで?伊勢さんと毎日!?

どうゆうこと!』



望と香椎さんがゴタゴタしている。

俺はというと、


外町『だから!監視しておけってあれほど!』


承『お前の愚痴を聞いてたからだろう!』


外町は悔しそうに俺を睨む。

今、外町は実質的に香椎さんにフラレたんじゃない?

そう思うとこれ以上鞭打つ気にはなれない。



香椎『何があったか知らないけど当事者同士だと揉めちゃうなら私間に立って聞くから?

外町くんも立花くんも言ってね?

ケンカはおしまい!』


香椎さんマジックで俺も外町も頷いちゃう。

でも、今回は望がやらかしてるんだよなあ…香椎さん知ったらどう思うかな?

望は香椎さんに叱られれば良いと思った。

油断は出来ないけど、外町とは一時停戦!




⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

私の一番好きな場所  【side香椎玲奈】


期末テスト最終日に承くんと外町くんの争いを止めつつ、私の尊厳を守ったよ!

で、翌週になり今週テストが返却されて週末には終業式。

2学期は色々あったなあ…。


私は放課後美術室にいる事が多い。

今はもうクラス委員長の仕事もほぼ無く、ゆっくり勉強しながら承くんと話したり、手作りおやつとお茶を楽しんだりするんだ。

この場所のこの時間が大好き。

まったりしつつ、ドキドキしたり、笑ったり、ぷんぷんしたり楽しい時間。


教室だと皆んなの目があるし、承くんは文化祭以降皆の目の敵にされてる。

こないだのロイン流出事件で少し回復したけどまだ敵が多く、私も注目されやすいポジションなので承くんと親密にすると承くんが酷く攻撃されてしまうんだよね。


最近の悩みの種が『香椎玲奈親衛隊』なる邪魔者が居るの。

モテる女子大生が告白何度も断った男子に刺された痛ましい事件が発端なんだけど、承くんも危ないんじゃね?って!失礼な!


度々、付き纏われて女子トイレや体育館の女子更衣室からこっそり抜け出して撒いて美術室に逃げ込むんだよ。


もうじき2学期も終わるよね。

12月だから寒いけど美術室は結構暖かい。

そこで承くんとゆっくり過ごす。もうこの時間も残り少ない。

2年生の秋からこの美術室は私の大好きな場所。

承くんと私しか居ない場所。なんか良いよね?




そんな放課後、


承『親衛隊っていつまでやるのかな?』


玲奈『さあ?受験もあるし冬休み明けにはやめるんじゃないかな?』


各自勉強しているから机2つ使用、向かい合わせて使ってる。

私はなんとなく前列窓際にある先生用の前面と側面が板で覆われてる机が収まり良くて使ってるんだ。

承くんはこだわりなくて適当な机を毎回引っ張ってくる。


二人で勉強する無言の時間。それは決して不快じゃ無い心地良い時間。

承くんは知らないでしょ?時々10秒位私が承くんをじーっと見つめてること。



!!

なんか人の気配!

承くんも気づく!



承『やば!隠れた方がいいね?!』


私はともかく承くんがまた攻撃されちゃう!


どうする?!


玲奈『ノートとか仕舞って!こっち!』


ガタガタ!



『あ!ほんとだ!』

『香椎さん探したよ!』

『こんなとこに居たんだね?』


親衛隊を名乗る陽キャたちが3人も来た…。

私を探して担任の柳先生に聞いたらここじゃ無い?って教えてくれて!って。

(柳先生!余計だよお!)


香椎『事務仕事してるから邪魔しないで?』



『うん!ここで見てるね?』

『美術室かー!穴場だなあ!』

『俺らもここ使おうか!』



イラ!

私は委員長仕事で使わせてもらってる事、先生の許可貰って鍵を預かってる事を伝える。



香椎『キャッ!』


『どうしたの?』

『大丈夫?!』


とっさに承くんを隠したのは私の椅子側以外板で覆われた先生用の机の下に咄嗟に承くんを押し込んだのだけれども…。


(なんか脚に承くんの息がかかるし、動くと承くんに当たっちゃう!

大丈夫かな?下着とか見えてない?!多分今日は可愛いの履いてるはず…。)


少し身動きすると承くんに脚や腰が当たる!

それを意識しちゃって私は真っ赤になってしまう。


親衛隊たちを追い出して、なんとか承くんが這い出してきた。


承『…ごめん、俺!見てないから!』

承くんは恥ずかしそうに真っ赤になって走って行った?



机の下を見ると左脚がスカート捲れ上がってとんでもなくセクシーになってた!どうしよ!!

恥ずかしくて明日ここで顔合わせにくいよぉって思ってた。


すると次の日から、親衛隊の子達が美術室に集まるようになっていた。

それを見て承くんは美術室に近づかない。


注意をした後は無視していたが

暇なのか美術室のデッサン用の胸像を笑いながらいじり遊んでいた。

私が注意しようとした瞬間!



バリン!!!!!


壊してしまった…。


柳『何してるんだ!香椎!

だから信用出来る少数だけにしろ!!って言ったろ!

こうゆうことになったからには鍵は返してもらうぞ!』



私と、親衛隊達は柳先生にかなり叱られた。

私は美術室の鍵を…返却した。


私の…私たちの美術室が…。


私は香椎玲奈親衛隊なるものが許せなかったので、そのままガチ説教をしてその隊を解散させた。怒りは収まらないよ!

でも、美術室を失った私は自分でも驚くほど喪失感があった。


もう、美術室では承くんと会えなくなってしまった…。

ああ、私本当にこの美術室が大好きだったんだなあ…。

そんな、冬の日。



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