第142話 期末テストとあの男

期末テストが来る。

わかってる事だけど必ず来る。

言い訳なんだけど外町落とし穴事件からまったく勉強に集中出来ない。

2学期に入ってからけっこう香椎さんと勉強する機会があってちょっとだけ勉強に対する抵抗が減って少し好調だったけど今回はどうだろう?

いよいよ年明けの受験に備えて弾みをつけたい!

…いやさすがにテストだから外町登校してくるよなあ…。

気が重い。


月曜日朝、望と一緒に伊勢さんと待ち合わせ、川沿いに中学校へ向かう。

テストどう?みたいな話をしながらも外町が今日は登校するであろうことを思い3人とも少し憂鬱。



途中で小幡さんと登校する香椎さんを見かけるが距離はそのまま。

小幡さんは望と香椎さんが険悪だと迷惑って俺にクレーム入れてきたがどうしたらいいの?


クラスに着くと、外町が居た!

皆に囲まれて、体調が悪くて…なんて乾いた笑いを浮かべてる。

…大丈夫!歯はくっついてる!色も変わってないからインプラントや差し歯じゃなさそう!

こうして見てると確かに木多さんは外町をいつも見てる。



テストだから午前で終わり。

望と伊勢さんと帰る。

何も無かった。



次の日も、その次の日も何も無かった。

毎日何かあるか、外町から訴えられるか、襲撃されるかビクビクする日々。

望はまったく気にしていない。

伊勢さんはけっこう小心なのでビビってて可愛い。



そうして、テスト最終日。

1科目終わってホッとしてると、



外町『立花…放課後校舎裏。』



来たかあ。

自分がなんかしたとかならこんな気分にはならないんだけど

めっちゃ気が重い…。



伊勢さんに放課後外町と会うから望と一緒に居て欲しいことを伝える、場合によっては宏介に頼もう。

送ってもらうか、家で待たせてもらうか?



放課後、普段ならテスト終わりは開放感全開なんだけどね…。

校舎裏に着くと、誰も居ない…。



(嫌な感じ。ヤンキーマンガだと敵が集団で退路を断つ感じ?)


!!


外町来た!



お互い黙ってる、重い雰囲気。

目は逸らさないけど、妹がしでかしてるからなんか罪悪感ある。



承『…何だよ、呼び出して…。』

(何だよってあの件しか無いけど…。)



外町『…わかってるだろ?

なあ、あれお前がやらせたのか?』


承『…いや、俺もその日の夜に聞いた…。』


外町『お前の妹に土下座させられたんだけど?

どうしてくれんの?』


承『俺だってお前に土下座させられたわ。』



外町『お前が責任とるのか?

僕に!あんな真似させて!』


承『望とどんな約束したん?

あいつは約束は守る。

ただ俺よりだいぶ思い切りが良いぞ?』


外町『じゃあ、妹に責任取らせるぞ?』


外町はニヤって笑う、



?『えーウロヤ怖いー!せんぱい久しぶり!

はい。』


金髪カツラをかぶって写真を手渡す。


外町『お前!よくも!』


写真に目を落とすと、黙りこむ。

写真は目隠しした外町が、自分をかき抱く金髪望に抱きつくところ。



外町『これじゃ僕かもお前かも、わからないだろ!』



望は心底バカにしながら、


望『マグナム忘れたのー?

それは動画をプリントしただけ、動画では、外町先輩って何度も声かけてるよ?キャミの女の子に抱きつく動画、受験日頃に志望校に送るよ?

それとも今、職員室行く?

今、同じキャミ着てるよ!』



外町は悔しそう。

外町は自分大事で自分の利益を優先的に考える男。

今までのいじめとかも指示して直接することは少なかった…。用心深いのもそうだけどこいつは自分優先だからひょっとしたらリスクを恐れて、自分が損するの許せないタイプ…?



承『この動画撮ってもやっと引き分け…いや、まだ俺の方が不利だ…。』


望『なんで?土下座や歯、失もぐ!』


慌てて口を塞ぎ、合わせろ!って目で!


承『ロインが流出してもダメージ少ないみたいだし、お互いに被害を言い出せない状態で…。

動画あったって出したらこっちが犯罪だし…』



望、不満な顔しないで!


外町『そうだ、絶対に流出はさせるなよ?』


承『お前こそ、俺の土下座動画流出させるなよ!』

(別に俺の土下座なんて良いけど、外町は自分土下座絶対嫌だから俺も嫌だって確信してるんだなあ)



引き分けだけど俺達が不利って顔する。

すると外町はちょっとプライドをくすぐるらしく、鷹揚に頷いた。


お互いに流出させたら報復で自分のを流出させる。

お互いに干渉しない。

お互いにこれ以上の誹謗中傷はしない。

で停戦に合意した!

(助かった!外町だから完全に信頼は出来ないけど事件にならないで済みそう!)


外町『…おい立花、もうひとつ。』


なんだよ?!これ以上は勘弁して欲しい!

望は話し終わった?って呟いて伊勢さんを迎えに行った。



外町『お前の妹おかしい!

絶対に監視しておけよな!絶対だぞ!』



承『ああ。監視する。』


本音だよ…。



怪しいけどなんとか事件にならずに停戦できた…。

本当に良かったよ…。すっげえ疲れた!

なんかぶつぶつ外町の愚痴を聞かされる…少し聞いてやったら帰ろう、もう疲れた…。



⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

テスト終わりに    【side香椎怜奈】


文化祭までの隙間を埋めるように文化祭の代休明けから甘々な日々をおくっていたけど承くんが昼に美術室で宏介くんや望ちゃんと集まった日からまったくかまってもらえない…。

私は抗議したいよ!何かあったかもだけど放っておきすぎ!テスト終わったんだから時間あるよね?

そう思って承くんを探していると、


あ、望ちゃん!

望ちゃんとも話しをしなければならない!

私は急いで声をかける、今時間ある?少し話そう?って。すると、




望『あー…別に話しする必要は無いんだけどさ?

ひとつ聞いても良い?

言いにくいなら答えなくていいよ?』


私が声をかけるとなんだよ?って顔したが、望ちゃんは思い出した!って顔で聞いてきた!

話し出来れば誤解を解くチャンス!



香椎『何かな?何でも答えるよ?』




望『あんたさあ、外町と付き合ってるんだって?

もうヤッたって聞いたけどほんと?

淫乱ばばあw』



望ちゃんが嘲けるように笑いながら言う。

私は言葉の意味が理解出来なかった。

数秒してやっと意味が通じた…。

はあ?




香椎『…誰がそんなことを…?

絶対に付き合ってないし!

絶対に絶対にヤッてない!

誰が淫乱だ!

私は処女だよ!!』


ふーん、って顔しながら望ちゃんは、


望『外町が言ってたよ?

まあ付き合ってるなら自然の流れだし?無理しなくても良いよ?

エロエット?』



私はキレた。



香椎『…望ちゃん?

私の事嫌いになって、腹が立つのはわかるよ…。

でもね?乙女の尊厳を踏みにじられてまで仲直りする必要は感じないの…。

二度と言わないで?もう一度言ったら…。』



望ちゃんの喉の奥がひゅって鳴ってた。

引き攣った顔で、


望『…言ったら?』


私は答えない。

でも私もここは引かない!



香椎『望ちゃん、ついて来て?外町くんを問い詰める。

身の潔白を知ってもらうにはこれしか無い。

…承くんもその話し聞いてるの?』


望ちゃんは知ってるよ?なんか兄ちゃんショック受けてたけど、香椎さん信じてるって言ってたよ?

浮気女の言い訳信じるなんておかしいよね?って言った。




私の、のどもヒュッて鳴る。

誤解も解かなければ現実と認識されちゃう!

早く誤解を解かなければあの優しい武将はきっと私を祝福してひっそり去っていく絵が見える!




望『じゃあ、ちょうどいいよ!

案内する。校舎裏に居るよ?ふたりとも。』




⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

外町は望がトラウマになるほど苦手らしい。

まあ落とし穴に二度落とされて、あれだけ煽られたらなぁ。


そろそろ戻ろうと思い、外町に別れをつげようとすると、



タタタ!



望が戻って来た。

あれ?香椎さんも来た?



香椎さんは目を爛々と光らせ、俺と外町を見つけるとゴゴゴゴゴ!と怒りのオーラを撒き散らしながら俺たち二人を真剣に見つめる。

望は後ろでニヤニヤしている。

え?今度は何が始まるの?

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