第141話 恐る恐る学校へ

朝4時から河川敷公園へ行き、落とし穴を一生懸命埋める。

もちろん主犯の望と一緒。


望『女の子にはキツイよ…

いや、マジメにやってるよ!』


このガキ懲りて無いな…。埋めるのキツいけど掘るのはもっとキツかったはず?


承『でも、どうやってこの落とし穴3つも掘ったんだよ?

数日かけたのか?』


望『ううん、成実ちゃんが完くんとマッチョたちに穴掘りフィジカルトレーニングする?って聞いたら4人で3時間かからずに掘り終わったよ。』


完くんまで使ったのか!

完くんはトライアウトで高校決まってるから不祥事は厳禁!

望に釘をさす。

こいつ俺の友達を自分の友達だと思ってるんじゃ無いか?

みんな望に甘すぎって思った。



完全じゃ無いけど7時前に終えて家に帰りシャワー浴びてご飯食べて学校へ向かう。外町落とし穴事件を母さんに伝えたいがなんと言ったものか?今日学校で相手の対応見てから報告しよう。


いや、外町にどんな顔して会えば良い?登校時そんなことばかり考えていた。

望はケロリとしてる。こいつ昔から何かしでかしても発覚するまで平気な顔をしている。俺とそこだけは似ていない。


学校に着き、望に昼休みに美術室へ来るように伝えて自分の教室へ向かう。



香椎さんに昼休み美術室使いたいって手紙を入れて置く。

見てると…気づいた!

手で小さい丸作ってパチンってウインクしてくれた。

可愛い!でも正直それどころでは無い。



みんな登校してくる。クラスはザワザワ騒がしくなるが…外町はまだ来ない…。



そろそろ朝HRだけど。

…結局外町は来なかった。

ホッとする半分、先送りしただけ半分。




休み時間に宏介も昼休み美術室に来てもらうよう話す。

伊勢さんはどうしても外せない用事があるらしく、休み時間に少しずつ事情を聞く。



昼休みになった。

一番に美術室へ向かい鍵を開ける。


ガラ!!


香椎『ふふー!

承くんがお昼に呼び出しってなんの用事かな♪』



香椎さんが何か誤解をして入室してきた…。

ちょっと頬を赤くして、恥ずかしそうに。


ニコニコ上機嫌香椎さんは控えめに言って可愛らしく、叶うなら昼休みずっとたわいも無い話をしたい。

でも、今はそれどころじゃ…。



望『兄ちゃん!来たよ!

…チッ!

女優気取り女じゃん!兄ちゃんあたし帰る!』



悲しい顔の香椎さんと苛立つ望。

宏介も来たよ。


承『香椎さん、実はこいつがやらかしてね?

ちょっと問題になるかも?で、ちょっとその話し合いを…。』


香椎『私は居ない方が良いのね?』


把握したら必ず香椎さんにも教えるから今日はごめん!

俺は謝る。香椎さんはすっごい気になるんだろうけど頷いて出て行った。



宏介『じゃあ、見ながら聞いて?』


宏介が淡々とあらすじを説明してくれる、昨日より詳しく、詳細に。

動画見ながら聞いてるけど…。


え?望なに?この格好?

ウロヤ毛沼?男塾の伊達の技?

落とし穴落ちた!

望煽るなあ。いや!煽りすぎぃ!


外町逃げるよ!

あ!もう一度落ちた!皆すっげえ笑ってる…

外町の前歯3本折れた…嫌いだけど可哀想になってきた…

また煽るんだ…

え?伊勢さん?伊勢さんダメ!!そんなフライパンで殴ったら!


伊勢さんのビリビリ来る殺気に気落とされた外町は、





外町『立花くん。

出し物優勝出来なくてすいませんでした。


約束を守れなくて申し訳ない。

僕が無能で3組に勝てませんでした。


妹さんの事で難癖つけて、土下座させてすいませんでした。


あと、1年のころいじめて、3年文化祭時には、始まる前にみんなの敵に仕立てたこと、戦犯に仕立てようとしてすいませんでした。

香椎さんをハブるの煽りクラスに根回ししたのは僕です。申し訳ありません。


あと香椎さんに一年告白しないって誓わせたのは不当でした。取り消します。

立花くん本当にすいませんでした。』



俺宛の土下座ムービーを撮ったよ!って望は満足気に言った。


宏介は言う、

一応これは質だよ。

何かあればこの土下座や歯抜け失禁シーンが報復で流れる。

向こうも恨みはあるだろうけど度々承を攻撃されたこっちだって恨みは溜まってる。

殴られっぱなしってわけにはいかない。


ただ、望とバレちゃった伊勢さん、承がやらせたって思われてるかもだから3人と俺(宏介)は注意がいるかも、と。


(まあ、俺と言えば宏介だから宏介もリスクあるよな。)


歯の治療の為2、3日は外町来ないかもね?

楽観できないけどあっちも怖いはず。

怖いから暴発する可能性あるし気をつけて欲しい。伊勢さんにも伝えて。

そして、動画にもちらっと映ってた、外町データのエロい動画と、伊勢さんがキレた理由でわかるかもだけど木多さんが外町と肉体関係にあってけっこう酷いあつかいされてるかも。と宏介はしめた。


思ってたより色々出てきたなあ。

木多さんか、伊勢さん辛いだろうなあ。昼の用事ってそれかな?

しかし思ったより酷い。

かなりの事件だよ。

間違い無く外町はこっちを恨んでるよ…。

3人で今後の対策を話し合い、とりあえず1人で行動は厳禁、防犯ブザー完備、校外では周囲警戒を徹底しよう。

そんな話をして昼休みは終わった。



⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

焦燥       【side伊勢成実】


あたしは木多ちゃんに話があるから昼休み時間ちょうだい?ってお願いした。


昼休みに校舎裏で、まずは外町くんと付き合ってるの?って聞いた。

黙りこくって返事しない…否定も肯定もしない。

それは肯定してるって事だよね?


あたしはぼかしながら外町が一年の頃のいじめに関与してる事、こないだの文化祭で立花にクラスメイトのヘイトを集めるよう指示したり戦犯にして責任を押し付けようとしてる事を伝えたけど何も答えない。



言いたく無いよ。

でも…



伊勢『…言いたく無いけど…あたし見ちゃったんだ…。

外町と木多ちゃんが…ってるとこ録画してスマホに動画入れてること。

あんなの普通じゃないよ!

外町に脅されてるの?あーしが何とかするから!言って?』






木多ちゃんは無表情に言った、


木多『脅されてなんかないよ。

私と外町くんは愛し合ってるの。

やっかまれるから秘密にしてるだけ。

卒業したら、高校生になったら堂々と付き合えるの。』



伊勢『なんで?

あんなにいじめ嫌いだった木多ちゃんが?外町なんかと?』


木多『いじめてなんかいない!誤解されやすいの!

自信家で能力が高くてイケメンだからすぐ妬まれて大変なの!』


ちょっとヒートアップしちゃう!



伊勢『誤解じゃ無いっしょ?

誤解で道具係の立花に責任押し付けて皆んなに攻撃させようとしないでしょ!

木多ちゃん、外町が好きだから目が曇ってんじゃ無いの?!』



木多ちゃんキレた!


木多『成実ちゃんだって立花くんだから目が曇ってんじゃないの?

みんなをディスって敵に回すような男子でしょ?

外町くんが言う通り、

自分勝手でわがままで自分の利益最優先で嫌な陰キャぼっちだよ!』



あーしもキレる!


伊勢『は?全部外町の自己紹介じゃん!

自分勝手でわがままで自分の利益最優先で嫌な奴!なんて外町じゃん!』


あーしと木多ちゃんは睨み合う。

もう校舎裏は地獄のようだったし。

でも、木多ちゃんは親友、なんとかしたい。



木多『好きになった人同士がこうゆう関係だったから成実ちゃんと距離を取ってた。

わかったらこのままでいて?

私成実ちゃんとはケンカしたくないよ。』



伊勢『わかった、今日はこれでいい。

でもね?外町は木多ちゃんとの…動画撮ってるし、持ってる。

あんなに赤くなるほど叩く様な彼氏を親友として認められない!

何かあれば何でも相談して?』


木多ちゃんは鼻で笑って、


木多『じゃあ、相談したら香椎玲奈をぐちゃぐちゃにしてくれる?』


伊勢『!!

木多ちゃん!なんでそんな?!』


木多ちゃんが言うような事じゃ無いっしょ?どうしたの…?



木多『成実ちゃんにはわかんないよ?

お互いにいい距離保とう?私成実ちゃんを敵にしたくない…。』



あの線の細い可愛らしい小学生の頃の面影は無い。

ちょっと無理してギャルをしてる大人しい可愛い親友の姿でも無い。

情念を燃やす女の業の様なものに気落とされあたしはそれ以上何も言えなかった。




外町をフライパンで何度も殴った事知られたら木多ちゃんはあたしを恨むかな?

外町が来たらあたし訴えられたり、仕返しされたりするかな?

心配は尽きないんだけどその日から立花と望ちゃんが毎日一緒に帰ってくれた。

あたしの家は西エリアなんだけど立花の北エリアと西エリアの境目位にあるのでほぼ帰り道は一緒。

立花の家に寄って、あたしのうちまで立花が送ってくれるのは嬉しいな。

外町は結局、テスト準備期間中には登校してこなかった。

水曜日に落とし穴に落として多分来週の月曜日の期末テストには登校してくるだろうね?



⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

その頃、クラスのロインに不審な画像が2枚アップされる。

それは9月の香椎玲奈失脚事件を外町が自分派閥メンバーに指示するロインのスクショで、メンバーが乗り気で香椎玲奈を孤立させようってノリノリの様子の画像がアップされてた。

もう一枚は文化祭時にやはり立花にクラスディスらせた!道具係真面目にやる様怒鳴っておけとか外町グループの陽キャ達の横暴さがわかるスクショだった。


誰?でもアイコンとか本物?とか皆んな怪しみながらも陽キャたちに確認する。

当然否定するが、じゃあロイン見せて?と言われると何も言えない陽キャたちは一気に信望を失った。一部の生徒は削除してから見せたがそれは証拠を隠滅しました!って主張している様なもので一気に外町グループは冷ややかな目で見られる様になっていく。

しかもリーダーの外町は登校して来ない。

外町グループは一気に肩身が狭くなった。


そこをなんとかしたのは香椎さん。

香椎さんはこれを機に、外町グループと親外町グループが孤立してクラスがバラバラにならない様に気配りした。

香椎さんは外町グループにも思うところはあったがクラスメイト同士が憎しみ合うような展開は絶対に嫌だったから外町グループにも手を差し伸べる。

自分をハブる事にノリノリだった奴らを孤立させないって頑張る香椎さんを見て親外町グループは香椎さんの傘下に入り、外町グループも小石を筆頭に香椎さんファンが多かった為、この機に香椎さんはクラスを完全に統制下においた。

これが文化祭以前だったら苦労しなくてすんだのにって香椎さんはため息をついた。


それを承は嬉しそうに望に語る。

自分をハブったグループの心配までして、さすが香椎さんだな。

望は思う、

『…あの女がいつもいいとこ持って行くじゃん。』


大好きだったから余計に望は香椎さんが許せない。




⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

望vs香椎

木多vs伊勢

激化してきました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る