第135話 苛立ちとモテ期【side外町和也】

文化祭も2日目に入る。

昨日の劇の結果は夕方には出る。気になるがそれまで何も出来ない。


午前は友達や、クラスの派手な女子などと展示を見て回る。

正直大して興味ないがこれも付き合い、これが結構大変。

Aと周り、Bと合流し、別れCと視聴覚室で昨日録画を見ながらDが合流。

クラス展示を見ながらまたAが合流してCが離脱して…。

正直これもどうでも良い。

でもクラスで発言力を行使するには派閥関連はきちんと抑えなきゃならない。


ずうっとあの女がついて来るから一度どっか行けって追い払う。

玲奈さんを見かけて急いで話しかけにいく時あの女は見てて嫌な目つきで俺たちを見る。


(同級生にバレるような行為はするなって言ってるのに…今日は厳しくあたろうか?)



そうこうしてるうちに午後の部。

合唱コンクールが始まる。

1組は去年勝ってる。

まあこれも正直勝っても負けてもどうでもいい。

玲奈さんの理解出来ない点はこうゆうイベントの勝ち負けにこだわる所。

もちろん勝ったほうが気持ち良いが勝ったからってメリットなんて無いし、どうでも良くないか?

伴奏玲奈さんはブラウスにフレアスカートで大人っぽくって素敵だった。



合唱コンクールが終わり、表彰式へ移行する。

結果は1組が合唱コンクール、2組が課題発表、3組が出し物を制した。

必然、3組が最優秀クラスを勝ち取り、3組が狂喜乱舞している。


最優先だった出し物が獲れなかったのは意外とショックだった。

イベントでここまで夢中に努力したことが無かったから?

別にメリット無いだろ?と思いつつ始めて感じるイベントごときで悔しいって気持ちに戸惑いを隠せない。


(僕が仕切って負けるなんて…そもそもあれほどの出来で…?)


ショックなんだな。

でも、僕が仕切って負けるなんて許せない!僕は苛立ちがさらに募る。


クラス全体が凹んで暗い暗い雰囲気。

(そんなに凹むなら最初からごねずにやる気出せばよっただろ凡愚ども。)


俺は心の中でクラスメイトを罵る。

玲奈さんが最初に文化祭の話をしたHRから準備を始めてればもう一週間猶予があったはずだ。

それを負けたからって怒り悲しみ…馬鹿らしい!


…でも一番馬鹿らしいのは僕もイライラしてしまっていることだ。

こんな学校行事くらいで!くだらない!


しかし、イライラは止まらない、



柳『文化祭おつかれ!合唱コンクール最優秀おめでとう!いい合唱だったぞ?


最優秀は逃したけど、合唱は取ってるんだから上等、上等!』


生徒を励ます担任。

面倒臭い。終わったんだしどうでも良いだろ?

って思った直後気づく。

(必ず勝つと言ってしまったが立花がそこら辺を追求してきたら面倒臭いし不快だなあ?約束なんて守る気はないけども。)



クラスの雰囲気は重い、そこへ、



『学年最高!3年3組!!!』


わああああ!!!!!

3組の勝鬨が静まり返る教室に響く。



みんなイラついてる?


!!


思いついた!!




外町『僕は敗因を追求する!!』



(これなら僕への責任追求を逸らしつつ、立花に責任を擦りつけられる!あいつには泥を被ってもらうって約束したしな!)



続ける、



外町『文化祭前にクラスを煽って!みんなに悪口を言って!

クラスに不和の種を蒔いた奴が居る!!


そいつが不穏分子になって!』




みんなが立花を見ている!いい感じ!

立花は察して顔が引き攣っている!

僕の意思はみんなの民意だろ?




外町『そいつは3組にばっかり友達が居て、このクラスではボッチで!

香椎さんに何度も告って断られて、逆恨みしていちゃもんつけて泣かして!!

小道具だって差し戻しするようなクオリティでしか作らなくって!!』




(どうだ、嘘は言ってないだろ?)



今、このクラスは怒ってる。

もう一押し!



外町『そうだよな??』



言った瞬間、


香椎『立花くんは!文化祭でも!体育祭でも!全力で戦ってくれたよ!!!

体育祭で一番近くに居た私が一番知ってる!

そんなこと絶対に言わないで!!

文化祭だって毎日休まず頑張ってくれたよ!』



伊勢『そうだよ!立花ずっと造花と小道具最後まで残って作ってたじゃん!みんな見てたでしょ?!みんなが押し付けた仕事だってやってたじゃん?!』



ほぼ同時に2人とも立ち上がって叫ぶように声をあげる。

くだらないクラスの連中はどよめき、ガヤガヤ雑音だらけ。


香椎さんが立花を庇うところも、巨乳ギャルな伊勢成実が立花を庇うところもどっちも気に入らない!

伊勢さんは派手な美人で巨乳で結構狙ってて、打ち上げやプールなど結構アプローチしてるのに一向に靡いてこないから男に興味無いのか?って思ってたけど立花をすげえ気に入っててすこぶる不快。

立花のどこが良いのさ?俺のとこ来たらならセフレにしてやるのに…。

(本当気に入らない!ここで断言して裁判に持ち込む!!)



外町『いや、絶対に戦犯は立b…』

柳『外町!!

それは違う!それだけは絶対に言ってはいけない。』

柳先生が珍しく声を大きく割り込む、何してるんだよ?




僕が声を上げようとするのを手で制して、先生は続ける。



柳『前回は立花がみんなをディスって、その報復で罵られていたから黙っていたが、今回は意味が違う。

みんなで頑張った結果だろ?それを一人のせいにするなんて絶対にあってはいけない。

ましてクラス委員長のお前が言うことか?』




香椎『もし負けた責任取らなきゃいけないなら、私がとるよ!

道具係なんて責任無いでしょ?

私の主演で負けた!私が小幡ちゃんに負けたの!

みんなごめんなさい!本当にごめんなさい…。』




香椎さんが泣きながら深々と頭を下げる。

(やめて玲奈さん!!そんな事言ったら責任は僕達主演のせいになっちゃう!僕達のせいなわけがない!)

バツが悪そうに何人かは目線を下げた。


柳先生は言う、


柳『香椎のせいでもない。

頑張ったって負けることなんていくらでもある。社会出れば尚更なあ。

でも、もし敗因があるとするなら、誰かのせいで負けたって言う者とそれに便乗してその誰かを叩こうとする者が居るってことだと先生は思う。

だから外町、それ以上は言うな?』



負けた時ほど真価が問われる。

先生は掃除場所を指示して飄々と出ていった。


俺は目の前が真っ赤になった。

あの言い方ではまるで僕がクラスの輪を乱し、責任を押し付けようとしたみたいに聞こえるじゃないか!

俺たちが完璧だったなら他に敗因があるだろ?

くそ教師が!いつもみたいに黙ってればいいものを!!




苛立ちながら後夜祭を迎える。

せめて玲奈さんと話せたらと思いキャンプファイヤー周りを回ったり体育館を見て回るがどこにも居ない?帰ったみたいだな…。

まあ主演で疲れたんだろう、怜奈さんはあまり人に囲まれるのは好きじゃないから帰っても無理ない。

僕も玲奈さんと付き合い長いからなんとなく行動は想像がつく。



『外町先輩!今、ちょっとお時間いいですか?』



2年生かな?

少し可愛い。でもその程度。

校舎裏まで連れていかれて告白される。

告白されるのは楽しい。

大した理由が無いけど君とは付き合えないってオブラートに包んで伝えると皆悲しい顔して人によっては泣いたり。

申し訳ないって顔はするが優越感がある。


その後も一人1年生に告られたけど断った。

…1年生なんてこないだまで小学生だろ?

やっぱりあまり手を出す気になれない。

よっぽど可愛くて巨乳なら一考もあるんだろうけど…


俺は不機嫌が一転して少し気分が良くなった。

これならもう少し告られるかも?

これから受験でストレス増えそうだし、あの女にも少し飽きたしここらでセフレ新規もありだな?



僕格付けであの女はB位。だからB以上の女が欲しい。

Aが学年トップ5位の判定だけどこのレベルはプライド高く告白してはこないし、セフレは難しい。やはりBクラスがちょうど良いのかな?



文化祭の帰り道、馬鹿な級友の話に相槌を打ちながら明日以降の展望を想像する。

明日月曜は代休になるから火曜からテスト期間、来週期末テスト。

で再来週終業式がある。


とりあえず、代休後立花にもう少し泥を被せることは決定済みだからその辺どうしようかな?

玲奈さんは手に入らなかったが、ロミジュリの練習時の視線や好意を信じてるから卒業式に向けて好感度稼ぎとメインのテストや受験に注力しよう。

僕は多少機嫌を戻していた。


なんせシューズボックスに告白の手紙が2通入っていた。

今週中位は告白ラッシュかもな?忙しくなる。


一緒に帰る級友に今日2回告白を断って心苦しい旨を苦い表情で語る。

僕を慰めながら羨ましそうな顔をしてるこいつらの顔好きだわ。



次の日の代休。

一件昨日受け取ったて手紙の告白があった。

家の近くの河川敷公園。

あそこはリバーサイドで遊歩道があるから結構デートスポットではある。

夕方向かうと、1年生?だった。


見た目も胸も大したことないので丁寧に断る。

(休みの日は勘弁してほしいな。)


ここで気づく、

(告白受ける側は選べないから明日以降何件告白されるかわからないけどみんな断るレベルだったら骨折り損のくたびれ儲けじゃないか?)



告白断るのも面倒くさいな。

事前に書類選考させて欲しい。

当たりが居ることを信じて俺は告白ラッシュをさばく。




そんな休日の夕方、衝撃的なニュースがテレビで流れていた。

美人女子大生が何度も告白を断わった陰キャの男子大学生に刺されて死亡するというニュースだった。


(使えるな。)



翌日(代休明けの火曜)から立花を香椎さんに近づけないという男子のグループが発生した。

もちろん俺が煽ったんだけど。

告白3度断られて逆恨みしてる立花も同じことする可能性がひょっとしたらあるかも?って話すと馬鹿たちがこぞって集まってきた。

これを口実に香椎さんの側で見張る!(香椎さんの側に居て、あわよくばお近づきに!)ってことらしい。

お前らもうじき受験だろ?煽っておいてなんだけど呆れた。


今週はテスト期間で時間も少し多めに取れるから告白ラッシュを捌いて、受験に向けて弾みをつける!

12月が始まった。

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