第133話 後夜祭の告白祭【side香椎玲奈】

私は出し物で負けて最優秀クラスを獲得できず凹んでいたんだよ。

終わりのHRで外町くんが承くんを戦犯扱いした時に思わず立ち上がって立花くんは戦犯じゃない!って叫ぶように弁護はしたが私は承くんに合わせる顔が無かったの。



後夜祭が始まり、ジュリエットの反響で囲まれるのも嫌でグラウンドの片隅で小さくなりながら悲しい気持ちで丸まっていると承くんが探しに来てくれたよ!

(嬉しい!合わせる顔がない!話聞いて!そんな資格ない…)


色々考えた結果私は逃げ出した。そんな私を捕まえてくれて、逃げようとする私の手を引いてくれて、暗いから真っ赤なのは見えないんだろうけど恥ずかしくて、嬉しくて胸がいっぱいだったな。



ベンチでも逃げようとする私を承くんは抱きしめてくれた。

軽いハグじゃなくって、ぎゅって抱きしめてくれた。

私はすっぽり承くんの胸の中。

(私、承くんに抱きしめてもらえる資格あるのかな?)

そう思っても身体は正直、きゅってしがみついちゃう。

暗いから?誰も居ないから?承くんは今日は大胆で強く抱きしめてくれる。

私は胸に顔を埋めて久しぶりに承くんと触れ合ったなあって嬉しく思ってしまうよ。


くんくんくん、くんくんくんくん!!

悪い癖が出た。


私はまた容量、用法を超えて承くん成分を摂取してしまい腰が抜けてヘナヘナってベンチにへたり込んじゃった。


走ったから?少し汗ばんでた承くんの匂いやばい!!


『ふーふーふーっ…!』


私は興奮してしまい、頭の中はすっかりピンク。

もう私を好きにして良いよ?おわびだよ?

位言い出しそうだった。

でもね、承くんは私に謝ってくれて、私はもっと謝って、泣いて、外町くんとの1ヶ月を全部報告したんだよ。


承くんは互いに許し合おうって言ってくれて。

絶対私の方が悪いし、ダメな女なのに私の武将は度量が大きくて尚更私は申し訳なく思う。

もうおしまい!って承くんが宣言した。

ありがとう承くん。


そうして今に至るね。


(雰囲気は良いよね?キャンプファイヤー、最後の文化祭、暗闇、人気ない、緊張と弛緩、…キ、キ、キス位あっても?!…調子乗りすぎか?貞操観念?流れ?)



頭は高速回転するが…やめた。

今日はもう疲れちゃった、考えすぎるの私の悪い癖。

もし流れで、承くんが求めてきたら…受け入れるよ。

流れがきたら自分から言う?でも勝てたらって約束だよね?


やめた!もう今日は流れに身を任せる!

私はどうしたい?自分に聞いてみて、久しぶりの二人きりを楽しむことにしたんだよ。





玲奈『…承くん?』


承『何?』


玲奈『なんで私があそこで一人で居るってわかったのかな?』


承『なんとなく?玲奈さんなら一人で小さくなってる気がしたよ。』


(嬉しいな。私の事わかってるよね。)




玲奈『承くん。』


承『何?』


怜奈『私を追いかける時、どんな事考えていたの?』


承『捕まらない!女の子の完くんって思え!って考えてたかな?』


(聞かなきゃ良かった…。)


気をとりなおして、


玲奈『久しぶりに話せて嬉しいな。なんかずっと話ししてなかったよね。』



承『そうだねえ。もうすぐ学校別れるから、今のうちにいっぱい話しておかなきゃだね。』



当たり前なんだけどショックを受ける。

そうだよね、時間は有限、いずれ違う学校に通う日が来てしまう。

寂しくて、今の時間が愛おしくてお互いの目に情熱的な何かが宿る。



玲奈『承くん…。』


承『…玲奈さん?』


いい!いい雰囲気!

静かに見つめ合うけどキャンプファイヤーあたりがすっごい騒がしいな。

今忙しいから無視無視!!


!!


!!


遠くからなんか聞こえてくる?


『香椎さーん?居るー?』



無視しよう。


玲奈『承くん…。』


承『いや、玲奈さんめっちゃ呼ばれてるよ?』


(なんなの?!今いいとこ!)


キャンプファイヤー周りでなんか盛り上がってるのは聞こえていたけど何?!



なんか私探してる?

無視したいけど承くんが気にしてるし、探し始めてるからここを見つけられると困る!



玲奈『ちょっとだけ行ってくる!すぐ戻ってくるから!承くんはここに居て?』



私は小走りでキャンプファイヤーまで行き、近くに着くとゆっくり出て行く。



玲奈『呼んだかな?』

(いいところだったのにー!)




『あ!今、片思い連中がこの機会に思いを告げるって企画を進行中で…。

香椎さんに告白したいって男が四人ほど居るんだけど…。』



(えー?全く興味ないから断りたいよ…ダメかな?

今、それどころじゃないんだよ。)

告白を見せ物にするって本当に悪趣味!



私は、以前にも言ったが卒業まで誰とも付き合うことは無い事を告げて、好意嬉しいよ、ありがとう。でもごめんなさい。って内容をさらにオブラートでぐるぐる巻きにして飾りを付けて私を呼んだ人に言付けて承くんの元へダッシュ!!




玲奈『お待たせ!承くん?』



承『あ、今、青井がね?小幡さんに告白するみたい?』



遠目に金髪の二人がキャンプファイヤー3つの中心で何か話してる…

遠目に見てても青井くんが振られたのがわかる。



玲奈『…最低でも誰もいないところでムード作ってから情熱的に告白しないと女の子の心は動かせないよ?』


承くんにも伝われ!


承『それ、青井に言っても良い?』


玲奈『私が言ったって言わなければ良いよ。』




『〇〇さん!〇〇さん居る!!』


おおおお!!


告白祭こくはくまつりは続いてるみたいだけど、カップル成立は厳しいみたい。

だって本気なら校舎裏のカップルみたいに雰囲気と二人きりの場を作らなきゃでしょ?

あんな見せ物の時点でよっぽど好きでなきゃ受け入れられないよ。




もうすぐ、後夜祭も終わる。

このまま終わってもいいんだけど…



承『楽しかったなあ、文化祭。』


怜奈『そうだね、でもきっと高校生になっても大学生になってもその時々の忘れられない思い出ができるよね?』


承『そうだね。それでも今が愛おしいし、寂しいよね。』



しんみり話す。あれ?いいムード?



玲奈『承くん…。』


承『玲奈さん…。』



キタ!!諦めず良かった!

文化祭のクライマックス!!来たよ!!!



暗くて、喧騒が遠くに聞こえる。

お互いに、お互いしか見えない!

承くん…私の目と唇を交互に見てるね!





…いいよ。



私は目を閉じる…。



!!



ちょっと顎を上げる…。



!!



(うるさいなあ…!今いいところ!!)



承くん?ちら。

…私を…見てない…?





遠くからよく通る聞き覚えのある声?







完『立花くん!!!立花くん居る!!!

大事な話!!!!!

立花くん!!!!』






おおおおおおおおおおおお?!?!

ええええ?!!!

きゃーーーー!!!!



会場騒然!!

あの完くんが告白祭で…承くんを呼んでいる… ?!




玲奈『承くん?行くの?!』

(えー?!告白祭だよ?!男!男だよ?!

私の唇より優先する?!)



承『行く。

告白?いや…まさか?

完くんだからなんか空気読めてないだけじゃ無いかなあ?

みんなが思うほど変人じゃあ無いんだよ?』


(まあ確かに毎回承くんを助けてくれるし…そう言われば毎回助けてくれるのも怪しいといえば怪しい…?)


玲奈『私も行くっ!』



承くんは小走りでトラックの真ん中へ走り出す。



突然の完くんの立花くんに大事な話宣言で騒然とする会場!

後夜祭一番の盛り上がり?



小幡ちゃん…ワクテカもう少し隠しなよ?


承くんは完くんのところへ到着。


完『まだ居てくれたんだ!良かった!

聞いてくれ!』







承『うん、どうしたん?』














完『さっき!家に!トライアウトの合格通知来た!!!

隣の市の強豪校!高峰農業決まった!!!

うおおおおお!!!』



完くんが吠えていたよ。



承『やったじゃん!!

4年前くらいに甲子園行った強豪だよね?!

すげええええ!!!』



(良かった!完くんは承くんをあっー!な目で見てなかった!)



まだ誰も進学先は決まっていない。

そこに降って湧いた完くんのトライアウト合格!

推薦を除けば進路決定1号!

推薦はもう決まってる事だから事実上の3年生の中で初の合格通知みたいなもの!!


わあああああ!!!良かったね!完くん!!

完おめでとう!やったな!すごいね!

甲子園行っちゃうんじゃない!あやかりたいぜ!


これからの受験にみんな不安がある。先の見えない未来、未知の領域。

それを仲間が合格した!良かった!おめでとう!自分を重ねてみんなで祝福する!

胴上げしようぜ!


完くんを男子はもみくちゃにして胴上げを始めた!



わっしょい!おめでとう!

わっしょい!みんなで頑張ろう!

わっしょい!不安なんて追い払え!

わっしょい!またいつか!



わっしょいの間にそんな声が聞こえたような気がした。

男子はいいよね?本当たのしそうで?

キスし損ねたけど不思議と不満は無かったよ。

これも青春の1ページなのかな?

だから小幡ちゃんそんな残念な顔しないで?











後夜祭が終わり家路に着く。

久しぶりに小幡ちゃんと一緒。2学期になってから体育祭、文化祭とライバルだったから登下校は別にしてた。金髪の小幡ちゃんはゴージャス。


『よく一緒に帰れるわね?私体育祭で負けた時とても悔しくて一緒に帰れなかったわよ?』


『そりゃあ悔しいよ?でも千佳ちかもこんな思い何度もしてきたでしょ?』


『?!』


『私ね、誰に対しても呼びつけにはしないの。年下でも親しくても。

でもね…いつかライバルが出来たらその子だけは呼びつけで呼ぼうって思ってたの。

…あ!あと結婚したら旦那さんも名前で敬称なしで呼ぶかも!家族は別ね?』



『私はライバルなの?』

千佳は嬉しそうに呟く、


『ライバルだと思ってたつもりだったけど今日はっきりライバルになったんだって痛感したよ。

付き合い長くて呼び方変えるの勇気いるんだけど、

私、今日から、千佳って貴女を呼ぶよ!』


『最初からライバルよ!』


ニコニコ嬉しそうに千佳は言う、

私にとって千佳は特別。今までもそうだったんだけど今日からはもっと特別。

こんなことあったよ!あんなことあってね?久しぶりすぎて話が尽きない帰り道だったんだよ!



⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

おかげ様で10,000pv達成できました!

いつも読んで頂きありがとうございます!


まだしばらく続きます、お付き合い頂ければ幸いです。

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