第127話 ロミジュリVS美女と野獣

俺は良い席をなんとか確保し、自分のクラスの劇が始まるのを待つ。

香椎さんの発言聞いてからドキドキが全く収まらない。

(ロミオを俺と思って演技するって…香椎さん…もしかして?いやそんなわけなわけないでしょ?

もう香椎さんは外町と…。)



期待と不安、香椎さんが幸せならそれでいいと言いつつもし…俺と…いや釣り合わないでしょ?ぐるぐる思考は堂々巡りを繰り返す。

(考えてもしょうがないや、素直な心で楽しもう!)


劇が始まった。


それはとても素晴らしく、心を打つ夢のような時間だった。

俺はロミオのつもりで見てたけど頬から顔から熱が引かない。

まだ恋に落ちるの?って自嘲したくなる。


香椎さんの芝居はリハより表情豊かで、瑞々しい!宣言通り香椎玲奈が出ていた。

外町に感情移入できるか?って思っていたけど香椎さんの弾けるような演技にまったく気にならなくなった。

まるで今までの俺と香椎さんの思い出をなぞるような気持ちでふたりが惹かれ合うのを夢中で見ている。

香椎さんは前より客席を意識していて、しばらくすると俺を見つけたのかな?意識過剰かな?俺の方を見てくれてる気すらした。


隣の女子の会話が聞こえる。

『リハも綺麗で可愛かったけど、今日の香椎さんすごくない?』

『すっごい!可愛いだけじゃないでしょ?大好き!って叫んでるよね?あれ!』

『外町くんよく芝居できるな?あんな笑顔見せられたら芝居できなくない?』

『なんか人が恋におちたとこ見たらこんな気分なんかな?』

『恋してる女の子感半端ない!あんな女の子になりたい!』

(同感。すっごい可愛い。)



逆側の男子も小声で

『香椎さんかわええ!!』

『あれはすごい。』

『目が離せない…あんなに遠いのに惚れそう。』

『あんな娘と結婚したい!』

(気持ちはわかる!)



遠目に見ててもわかる圧倒的な存在感、俺はいつも香椎さんを見てきたけど今日は別格。

演技に香椎玲奈の喜怒哀楽と思い出をのせてこれでもか!ってぶつけてくる。リハーサルと違う等身大の女の子の想いが、気持ちがビリビリ伝わる、そして凄みがある、その存在感から1秒も目が離せない!

(ああ、俺は香椎玲奈が好き、たまらなく好き!)

見ているだけでわかってることを再認識させられる圧倒的な女の子。

綺麗で、可愛いくて、いつもみんなのことを考える責任感の強い子。

こだわり症で、女優癖があって、負けず嫌いで、謙虚だけど自信家でもあり、涙もろい、料理が趣味なキラッキラな女の子。

本当になんでだろう?香椎さんの演技を見てると今までのふたりの思い出ばっかり思い出されてくる。




そしてラストシーン。




ジュリエット『ロミオ、幸せだったよ。』


ジュリエットは胸に短剣を突き立てる。

その瞬間暗転し、ナレーションで締める。



隣の女の子たちも、

『ジュリエット…うええ。』

『リハよりガツンとくる…泣いちゃうよぅ。』

『(声にならない)』

『香椎先輩…ふえぇぇ。』


(みんな泣いてる…。)


男子は全員泣いていた…。

俺も泣いちゃった。


俺は思った。

(うちの香椎さんが一番可愛い!!!)

それだけは確信できる。

香椎さんはもう外町と…とか、俺の事好きだったら嬉しいなあとか胸の中はぐちゃぐちゃドロドロ。

本当に収拾がつかないし、何がなんだかわからない。



(中学生の劇で泣くことなんてもうないだろうなあ。)



2組の劇を見て、その後ライバルの3組の『美女と野獣』になる。

多分3組とは接戦になるだろなあ、でも今日のロミジュリなら負けないでしょ?

そんなことを思いながら2組の劇を見る。

2組は『フランダースの犬』だった。


あ、やば。


数十分後、


承『…パトラッシュ…!』


2組の劇も素晴らしく、2組の女子の飼ってるセントバーナードがよく躾けられてて、最後にネロとパトラッシュが召されるシーンで、ボロ泣きしてしまったよ…。

誰だよ、中学生の劇で泣かないって言った奴…。



それでもまず、ロミジュリの優勢は動かない。はず。

いよいよ3組の劇が始まる。

3組は練習もリハも非公開だった為本当にどんなだかわからない。

ドキドキしながら見守る。


3−3美女と野獣!始まり始まり!


☆ ☆ ☆

劇の進行の下の( )が承くんの観た感想です。


☆ ☆ ☆


ナレーション『かつて、フランスに美しい城があり、そこには若く美しい王子が住んでいました。

しかし、その王子は自己中心的で傲慢な性格でした。

彼は村々から美しい物を集め、宴会を開いて楽しんでいました。』



ある嵐の晩、一人の老婆が寒さをしのぐためにやってきました。

老婆を見た王子は、彼女の醜さを嘲笑い、お礼に差し出された一輪のバラと共に冷たく彼女を追い返してしまいました。

(青井、自己中の演技うまいなw)


すると老婆は「外見で人を判断してはいけません。真の美しさは内面に宿るものです」と忠告し、美しい魔女の姿に変身しました。

(え?老婆から美しい魔女早着替えで?!)


王子は後悔しながらも謝罪しましたが、結果として彼自身は醜い野獣に、家来たちも家具に姿を変えられてしまいました。

(?違う青井の演技が上手いんだ!すごい!!)



魔女によって差し出されたバラは、魔法の花であり、「最後の花びらが散るまでに真実の愛を見つけなければ呪いは解けない」と告げられた後、魔女は姿を消しました。

過去、王子であった野獣は絶望し、魔法によって彼と彼の城は人々の記憶から忘れ去られました。

(青井の四つん這いで後悔するシーン悲壮感あるなあ。ところで美しい魔女誰なんだろ?)








『時は流れ、小さな村があります。

その村に住むベル(小幡千佳)は、本が大好きで冒険を夢見る女性ですが、村の人々は彼女を理解せず、変わり者と噂します。


ガストン(木村)という男はベルに一目ぼれしました。

彼は村の英雄であり、村の女性たちが彼に夢中ですが、ガストンはそれには興味を示しません。

ベルはガストンの乱暴さや教養の欠如に嫌悪感を抱いており、彼の誘いにも応じません。』

(木村くん(騎馬戦で活躍したモブ)乱暴ものってちょっとイメージが?)




ガストンは村の乞食であるアガット(宏介)を指さし、「父親が死んだらお前も乞食になるしかないぞ」とベルを脅します。

(小幡さんはそうゆうの嫌いそうだなあ…金髪小幡さんすごい綺麗…)



ナレ『一方、ベルの父であるモーリスは仕事のために村を離れ、山道で狼に襲われながら逃げ回り、そして彼は大きな城にたどり着くのです。

城の内部に足を踏み入れたモーリスは、ティーカップが自分に近づいて話しかける光景に驚き、急いで帰ろうとします。


しかし、モーリスは城の庭からバラの花を一輪摘んでしまった瞬間、何者かに襲われてしまいます。』

(セットめっちゃ綺麗に作ってる?下書き小幡さんかな?本当に手が込んでる…。)



父が返って来ないことを心配したベルは予定で通るはずの城の方へ向かう決意をします。

城の内部に足を踏み入れたベルは、誰かの声が「呪いを解くのはあの子かもしれない」と言っているのを聞きます。

その声の方向へ向かいますが、そこには時計と燭台があるだけでした。

ベルは燭台を手に取り、城内を探索します。

(小幡さん、演技上手い…細部にこだわったベルの心情が伝わる!金髪小幡さんすごい存在感!)




彼女は牢獄でモーリスと再会しますが、モーリスは彼女に城を離れるようにと告げます。

暗闇から聞こえる声が「バラを盗んだ奴を捕まえろ!」と言いましたが、モーリスをかばい自分がバラを取ったことにしたベルは自らを罰するように懇願します。

(ベル!逃げて!でそうゆう娘じゃないんだよなあ。繰り返し言うけど金髪すごい。)




声の主に近づくと、ベルは手に持っていた燭台で明かりを灯し、目の前に現れたのは恐ろしい野獣の姿でした。

(特殊メイクすごい!あれ青井の顔に直で毛を貼ってる?!)




たじろぎながらも、ベルは父親の代わりに自ら囚われの身となりました。


野獣の家来である燭台のルミエールは、ベルを「呪いを解く女性」と見なし、時計のコグスワースの止めるのを無視して、彼女を牢獄から解放するのでした。

(燭台が本当に話してるように見える…どうやってるんだ?)



信じられない話だとされるものの、モーリスはベルを助けるために野獣の城へ向かうよう村人たちに訴えますが、誰も彼の言葉を信じませんでした。


一方、ベルとの結婚を果たす絶好の機会だと考えたガストンは、相棒(田中)を引き連れ、モーリスと共に城へと向かいます。

(やっぱり、木村くんが粗暴キャラ違和感ある。)


城の中では、燭台のルミエールがベルのための席を用意し、野獣は諦めきれずにベルを晩餐に誘いますが、彼女に断られ、怒りに震えてしまいます。

すると、バラの花びらがまた一枚散り、城の一部が崩れ落ちてしまいます。

(本当に小幡さんと青井の初期みたい(笑))




夕食の後、ベルは城の西の塔に忍び込み、そこでガラスの容器に守られた傷んだ一輪のバラの花を見つけます。

その時、野獣が現れ、「我々を地獄に突き落とすつもりか!立ち去れ!」と彼女を非難します。

制止を振り切って、ベルは近くで花を見ようとすると、野獣は怒鳴りつけます。

(小道具が綺麗、小道具は負けてるなあ。)



ベルは野獣の粗野な振る舞いに耐えきれず城を後にしますが、外には狼の群れが待ち構えており、彼女は氷の上で転んでしまいます。

すると、野獣が狼と戦ってベルを救い出し、野獣は負傷しながらもベルを助けるために自分自身を犠牲にしました。

(野獣!ベルを助ける為に…やっぱり小幡さんを勝たせたくって必死だった青井と重なって見ちゃう、応援したい!)





城を目指すモーリスと仲間たちですが、入り口が見つからず右往左往するモーリスにガストンは怒りを露わにします。

モーリスはガストンの横暴さに気づき、娘との結婚を許さないと宣言します。

怒ったガストンは彼を置き去りにして村に帰ってしまいます。

(なんか許せないんだよなこうゆうの、劇とわかってても。)



しかし、モーリスはアガットに救われ、村に戻ってガストンを非難しますが、誰も彼の話を信じませんでした。

(宏介セリフ無いな!)



一方、傷を負った野獣はベルに介抱されています。

(良いシーンだな、青井は小幡さんのこと…)



ポット夫人は野獣の過去を明かし、「ご主人様は母親を亡くした後、厳しい父親に育てられて傲慢になってしまったのよ」と語ります。

ベルもまた幼い頃に母親を亡くし、自分自身の身の上に通じるものを感じ、野獣も聡明で優しいベルに心を開き始めます。

(良いなあ、なんかずっとこうゆうの見てたい。)



次第に心惹かれあう二人、野獣は自分の気持ちを打ち明けようとします。

(青井、いや野獣がんばれ!)


そんな時、ベルは野獣の魔法の鏡の力でモーリスが困難に直面していることを知ります。


野獣はベルを心配し、彼女に魔法の鏡を渡して村に帰るように促しました。

ベルは急いで村に戻りましたが、村人たちはモーリスの話を信じず、彼を精神病院に送ろうとしました。

ベルは魔法の鏡を使って野獣の姿を見せ、モーリスの話が本当であることを証明しました。

(互いを思いやる気持ち大切だよね?)



ガストンは嫉妬に狂い、野獣を倒そうとして村人を引き連れて城に向かいました。

(ああ!ガストンはベルが好きでおかしくなっちゃったんだ!だから木村くんがミスマッチに見えたんだ!でも今は違和感ない…?)


ベルが去った後、生きる希望を失った野獣は、襲撃してきたガストンに立ち向かい、ベルが駆けつけたことで気力を取り戻し、ガストンを倒しました。

しかし、崩れ落ちる城からベルを救おうとしている最中に、野獣は背後からガストンに撃たれてしまいます。

(俺の見当違いかもだけどひょっとしたら木村くんは小幡さんが好き?だから青井を攻撃する芝居が鬼気迫る感じなの?!)


ガストンは野獣にとどめを刺そうとしますが、足場が崩壊し崖に転落していきました。

瀕死の野獣に駆け寄り、ベルは彼との永遠の愛を誓います。

(俺、泣きそう…)




しかし、野獣は息を引き取り、バラの花びらの最後の一枚が散ってしまいました。

ルミエールはただの燭台に、コグスワースはただの時計に戻ってしまいます。

(泣いてる)



そこに現れたのは、ベルの村で物乞いをしていたアガットでした。

(宏介!)


彼女こそが王子と城に魔法をかけた魔女だったのです。

(紐で引っ張って一瞬で乞食が美しい魔女に?!

つーか魔女宏介?!えええ?!)


全てを見届けた魔女は、野獣が真の愛を知ったことで呪いが解け、彼は元の王子の姿に戻されました。

(青井についてた獣の毛や顔のひげなど一瞬で引っ張って外した?!すげえ!

これならメイク替えの時間で白けない!でも痛そう!)


家来たちも元の姿に戻り、村の人々も記憶を取り戻し、それぞれの愛する人と再会する喜びに包まれました。

(良かった!大団円だ!)

ベルと王子は愛を確かめ合いながら城でダンスを踊るのでした。

(本当に素敵な劇だった!これは楽勝とはいかないぞ?いやすごかった!

本当にふたりが金髪のせいか王子とお姫様に見える!)



そう思ってると、



♪♪〜


青井『季節は今移りゆき かじかんだ心にも春がくる!』




小幡『少しずつ歩み寄り 愛はそだつふたりの心!』




『『Beauty and the Beast


めぐり逢い 惹かれあう その奇跡♪』』



(鳥肌立った!すっげえ!目が離せない!)



ふたりは歌うのを止めると、優雅に、時に情熱的にステージを踊りながら回る。


サブキャストがステージに飛び出てきて、サブキャストたちが合唱し出す。


それをバックに情熱的に踊る王子とベル。



合唱が終わり、ダンスはゆっくり、ステージ中央で立ち止まる。

そしてふたりは見つめ合い、そっと近寄り、優しくハグする。


ゆっくり顔が近づいて…。

ってところで舞台の幕は降りる。


幕が落ち、照明が戻る。

拍手が収まらない。

当然だ、ここまでのクオリティのものが出てくるなんて思わなかった!

うちのクラスが勝てると思ってた。

でも本当にわからない。どっちが勝ったんだ?!

明日の夕方合唱コンクール後の表彰式までわからない。


良いもの見た!って高揚感と負けるかも?って危機感がせめぎ合う。

中学最後の出し物の勝負は間違いなく名勝負。

判定はいかに?!


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