第128話 文化祭2日目

こうして文化祭は2日目へ突入する。

AMで一般公開は終了、PMは合唱コンクールになり、終了後に表彰式、HR.簡単な片付け、後夜祭で解散になる。


AM久しぶりに他クラスの友達と合流して展示を見て回る。


承『なんかすっごい久しぶりな気分!』


宏介『そうだね。』


青井『本当それな!』


田中くん、佐方くんは文化祭本部委員として巡回、撮影して回ってる。

完くんは他のマッチョたちと回ってる。


三人で久しぶりにダラダラ話しながら展示を見て回る。

落ち着く!宏介や青井が3組だから出し物終わるまではあまり絡めなかったんだよね。

合唱コンクールはもう手の内とかないから(課題曲や練度はなんとなくわかるし、差は無い。)


承『しっかし、青井の金髪格好いいよね?元々男前だから本当王子様みたい!』


青井『よせって!来週末までに染め戻すって誓約書まで書いてんだぜ?

それより宏介!魔女(笑)』


宏介『…新しい扉開いた。』


承『え?冗談だよね?ね?』


馬鹿なこと話しながら、各教室を回る。

視聴覚教室では昨日は我が校の歴史DVDが延々流れていたのだが、今日は2個のテレビに別々の時間帯の昨日の出し物をエンドレスで流していた。


承『昨日の出し物…どっちだろうね?』


宏介『本当にわからない。』


青井『俺たち!って言いたいけどホントわからん。勝ちたい。』


きっと俺が香椎さんを思い浮かべるように、青井も宏介も小幡さんを思い浮かべてるんだろう。



承『そいえば、青井が小幡さんを熱心に口説いてるって聞いたんだけど?』


青井『いや!それは!そんなことないぜ?!





…いや、うそだ、実はそうなんだ。

断られたけど…。』


青井がしょんぼりしてる。

あの獰猛さはすっかり息を顰めて…


青井『なあ、どうしたらいい?俺諦められない。』


承『漢なんだから、諦められないなら嫌がられない程度に押しまくるしかないんじゃない?

俺わからないよ。俺知ってる中だと宏介が一番的確。』


宏介『道灌どうかん。』

※太田道灌…江戸城を最初に作った武将、有能すぎて警戒されて主君に風呂場で暗殺された人


同感と道灌をかけた武将ジョークでふたりは笑うが青井はわからないので続きを促す。


宏介『青井は今のままで良い、多分まんざらではないはず。』


青井『マジ?宏介頼むな?』


笑いながら、出し物の録画をしばらく見物した。


宏介『ところで承はなんでまたハブられてるの?』


承『んー、ここだけの話だけどさ、カクカクしかじかでさあ。』

土下座や告白しないと誓わされた話だけ端折って説明。



青井『外町、変わらないなあ。』


宏介『また3組に遊びに来なよ?』


そんな近況交換をしてると、剣道部集団が通りかかり、青井はそっちにも顔を出す為一旦別れた。



宏介『…ねえ、まだ何かあるだろ?』


親友はお見通し。全て吐いた。


宏介『やっぱりか。望がすっごい心配してこっちまで聞きにきたよ?』


承『マジで?』


宏介『本当に承は色々起こるな。じゃ、少しだけ彼女と回る予定だから。』


苦笑いして、宏介は三島さん(宏介彼女、周りには交際秘密)と落ち合う為にバザー会場へ向かった。


(またぼっちになってしまった。)



視聴覚教室で続き見ようって思って戻ってしばらく見てると隣に誰か座った。

1組では大変嫌われてるので多分他所の人。

なんかいい匂いするから女子だろう?


(うーん、誰だ?なんか威圧感あるなあ?)


チラッと見ると金髪だった。


俺はそろっと席を立ち、その場を離れt(ばし!)

掴まれた。



小幡『なんで逃げるの?立花くん?』


承『イヤ、なんか威圧感?』


金髪小幡さんだった。


小幡『ねえ、しばらく玲奈と話してないんだけど、なんか色々あったみたいなの。教えて?』


承『本人に聞けば良いんじゃない?』


小幡『本人が話さないこともあるからよ。』


小幡さんの執拗な尋問に話せることは全て話した。

しかし小幡さんの金髪すっごい!しかも似合ってる。ゴージャス!ちょっとドキドキする…!


承『…小幡さんその髪色すごい綺麗だね?似合ってるよ。

もうそのままで良いんじゃない?』


小幡『な?!口説いてもダメよ?

…そうもいかないのよ。今週中に戻すって誓約書書いてるしね。』


伊勢『あー!!立花が小幡ちゃん口説いてる!

ダメだよ!!』


伊勢さんも来た。


小幡『成実なるみ?人聞き悪い!立花くんとは玲奈絡みで話すことは多いのよ?

なんでキョトンってしてるの?』


伊勢『なんかナルミって久しぶりに呼ばれた。』

※この話で普通に名前呼ばれるのにルビ振るのは伊勢さんだけです。


そうなのだ。話す機会は多い、ただ大体尋問口調だけれども。


伊勢『良いなー!その色超綺麗!格好良い!

私もその色にしたいー!』


承『伊勢さんも似合いそうだよね?』


伊勢『でしょ?あーしも似合う色だと思う!

小幡ちゃん、何って言ってその色になったの?』


伊勢さんと小幡さんが話し込んでる間にそろっと俺は部屋を出た。



ぼっちでも文化祭は楽しい。

いろんな人と少し話して別れて、また合流して。



バザー会場では完くんやマッチョたちが軽食を軽くは無い量むさぼり食らっていた。


完『立花くん!』


承『おー!完くん!』


完『ここ1ヶ月各校のトライアウト受けまくってたんだけど、そろそろ決まらないと苦しくなるよね?』


完くんは強豪校の野球部のトライアウトを受けている。

俺は時々、勉強とトレーニングに付き合っている。

うまくいくと良いなあ。

マッチョたちと一緒にバザー名物の焼きそばをいっぱい食べた。


正面玄関を通ると香椎さんが居て、人に囲まれていた。こっちに気づいて助けを求めるように手を振っていた。俺は手を振りかえした。



1組女子『あ!立花だ!香椎さんに近づかないで!』

同上『ジュリエット姿に惚れ直したんだろうけど、あんたまた告るんでしょ?

ダメ!あっちいけ!』


(告白なんてできないよ、誓ってるし。

…香椎さんは外町が好きなのかな?それとも?)



また同じ堂々巡りを繰り返す。

こうして2日目、AMは展示を見て回ったんだ。


□ □ □ □

PMに入り、一般開放は終了。

教室棟の玄関などは閉じられ、生徒もこの体育館しか入れない。


合唱コンクールは全員参加。

伴奏者1名のピアノとクラス全員での合唱。

得点は音楽教諭の採点で決まる。

同学年で競い合う。

このコンクール後、文化祭の表彰式に移行する。



1年、2年とクラスごとに課題曲を歌い上げていく。

俺、これ結構好き。

合唱って1人で歌うのと違う良さがあって、クラスの輪もそうだけど色や形がなんとなく見える。面白さがあるなあって毎回思う。


伴奏者の香椎さんは制服姿じゃなくってブラウスにフレアスカートで大人ぽい。

いつもと違う装いも新鮮!


指揮者は一条さん。一条さんはスラックス姿でいつもほんわかしてるけど今日は凛々しい。この子も綺麗な娘なんだよね?


1組の課題曲は『樹氷の街』

綺麗な曲だなって第一印象だったけど意外と難しい!って練習時思った。

香椎さんがいつも言う、これが最後の文化祭!って言葉が頭をよぎる。

この仲間たちと合唱する機会はもう無いんだって不意に痛感する。


歌い始める。

伴奏の香椎さんは一心不乱にピアノを弾く。

一条さんは、皆一人一人目を合わせ静かな曲調のこの曲を緊張と弛緩を使い分けながら指揮する!

俺たちも一生懸命、できる限り丁寧に声を出す。

(去年勝ったけどこのクラス、こんなにまとまり無いのになんで合唱コンクール強いんだろう?)


ホント不思議こんなに個性が強くて香椎さんと外町でもまとまらないのに合唱だけは気持ち良いほど綺麗にまとまる。

(色々あるし、居心地悪いけどここが俺のクラスなんだなあ。)

なんて思っちゃう。


合唱が終わる。

すっごい気持ちいい!みんなも同じ気持ちなんだろう、笑い合いながら壇上から降りる。


2組の合唱も素敵だった。


ライバル3組の合唱は『野生の馬』

俺この曲のエネルギッシュな曲調大好き!

格好いいなあ。

指揮はご存知!小幡千佳女王。

金髪を振り乱し情熱的にタクトを振るう姿は3組の士気を盛り上げる!

ライバルの名に恥じない良い合唱だった。


これで今年の文化祭、演目は全て終了!

いよいよ表彰式!


□ □ □ □

次回、結果発表!

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