第121話 見てるだけの日々

伊勢さんのフォローを受けながら淡々と文化祭のロミジュリの準備、合唱コンクールの練習、課題発表の制作の各下請けを行う日々。

もちろん自業自得だが悪意の向く日々は決して楽しく無い。


香椎さんは精力的に頑張っている。

以前と違い話すことは無いが彼女が必死に活動しているのがわかる。

頑張って、玲奈さんっていつも思っている。



10月4週

教室で作業していると、香椎さんが通った。

目が合ってちょっと手をぎゅって握って小さなガッツポーズしてくれた。


頑張ってるんだなあ、俺も頑張ってクラスに貢献しよう!


帰り道に伊勢さんと駄菓子を買って食べながら帰った。

ホントチョコ好きだね。



11月1週。

放課後は文化祭準備があるから昼休みに委員長補佐の仕事をこなすようにする。

香椎さん忙しいのか去年同様仕事ためてる。少しでも処理をしておく。

次の日クッキーとありがとうってメモが入ってた。

忙しそうにしてる香椎さんを遠くから眺めることしかできない。

外町頼むな。


11月2週。

大道具の森と仮面舞踏会の仮面が香椎さんの基準でダメだったらしい。

申し訳ない、不器用なんだよなあ。

伊勢さん、そんな怒らないで?香椎さんは勝つために必死なんだ。


仮面を着けて訂正ポイントを出し合ってたら通りかかった香椎さんに

遊んでると思われ、ダメ出しされて伊勢さんがキレかけた。

俺は謝まった。役に立ちたいんだけどなかなかうまくいかないよね。


香椎さんが外町と2人でお茶してるって噂?いや事実らしい。

別に付き合ってる人居るわけじゃないんだからお茶くらい良いでしょ?

それでも胸がちくっと痛いなあ。


11月3週。

小道具や大道具差し戻されて係の人は大忙し。衣装係の伊勢さんギャル友達がキレてた。うちは先週そうだったからその腹立たしさ、悔しさわかる!

陽キャたちが来て

『道具係!もっときちんと作れ!』

って言って、道具係を罵って行ったけど逆効果じゃないかそれ?




道具係終わって、トイレ行った帰り道、人気の無い廊下で

2人が見つめあってる場面に出くわしてしまった!

急いで隠れた!



幸い気付かれなかった!



『和也くん。』

『玲奈さん!』


って呼び合っていた。


…結構ショックだった。


俺以外に名前呼びしあう男子位居るよね?って自分に言い聞かせつつ、和也くんって響きが胸にクル。


すると外町が香椎さんの手を取って手を繋ぎ歩き出した。

香椎さんは一瞬ためらったが抵抗せず手を繋いでた。

ちょっと困ったような笑顔で話し続けてふたりは歩いて行った。


(俺も修学旅行で少しだけ手を繋いだことあるなあ…後ダンスのとき!

幸せだったなー。)

心臓がバクンバクンする、香椎さんが近くにいてドキドキするのと違うバクンバクン。


情けない、自分が距離を置いて欲しいって言ってこのざま。

俺はしょうもない男だ。

好きな娘が頑張っていて幸せならそれで良いじゃないか!

必死に自分に言い聞かせる。



11月4週。

クラスで香椎さんと外町くんがついにカップルになった!って騒がしい。

香椎さんは冷やかされて、

『役柄では大恋愛して結婚してるわけだから…ね?』

って答えて、女子大興奮だったって。

肯定も否定もしてないが、そもそも香椎さんが男女交際話題で否定しなかったことがないのでこれは決定的!って噂好き女子が熱く語っていた。

役に入り込むタイプだけど今回は怖いほどジュリエットに成り切った。だからロミオの外町を好きになっちゃったんだよ。


祝福しよう。

元々俺とは釣り合わないよね?外町の方が…。

なんか胸に穴が空いた感覚がする。



明日は前日で最後の確認のリハーサルが行われる。

俺、ちゃんと香椎さんと外町を見れるかな?



大丈夫、大丈夫!俺は玲奈さんの幸せを一番に考えられる男!

そう言い聞かせる。


□ □ □ □

兄ちゃん元気ない? side立花望


11月3週。立花家

『私!ももクロと慶次を文化祭のステージでやるんだよ!』


『そっかあ、見にいくから頑張れ?』


最近、兄ちゃん元気がない。

グダグダ2人で話していると兄ちゃんが思い出したように言った。


『あ!望!お前外町の悪口広めてるらしいじゃないか!』


『えへへ、バレた?だってむかつくんだもん?

兄ちゃんをいじめて、青井くん切り捨てて自分だけのうのうと!』


兄ちゃんは本当のことでも相手が被害出ると名誉毀損?って罪になるからもうやっちゃダメ!って私を叱った。



『外町のやつ、兄ちゃんにチクったな!』

(ごめんね、兄ちゃん)


『望?本音の方が出てるぞ?』


でも、家でもぼーってしてること多い。なんでだ?

次の日こっそり3−1へ向かう。

香椎先輩に声かけて聞いてみた。


なんか歯切れ悪い?結局知らないって。香椎先輩絡みじゃない?て思ってた。

(フラれたかと思ったけど?)


あ!おっぱい先輩!


『先輩!あの、聞きたいことがあって?』


『望ちゃん?何ー?』


階段まで連れ出して兄ちゃんのことを聞く。

うーんって考え込むおっぱい先輩


『!!

望ちゃんはではない!

ならいっか!!』



そう言うと、伊勢先輩は動画を見せてくれた…。

兄ちゃんが!土下座!してる!


『な、な、なんでですか?』


かいつまんで状況を教えてくれた。

クラスをまとめる為兄ちゃんは捨て石になってること。

私が外町をディスったことも含めて土下座させられたこと。

兄ちゃんから香椎先輩へ告白しないと誓ったこと。

兄ちゃんは今苦しい状況なこと。

兄ちゃんには他人には絶対言わないでって頼まれていること。

今、成実しげざね先輩(おっぱいから昇格)が兄ちゃんをフォローしてくれてると?



知らなかった…そして、そんなの嫌だ。

私は兄ちゃんが告白出来ないなら香椎先輩が告白してくれたら良いって思いついて、それから数日、何度か香椎先輩のところへ通った。


でも、香椎先輩は兄ちゃんの話題を出しても上の空。


『望ちゃん、私今文化祭で忙しいから今はいいかな?』


婉曲表現で断られた。

香椎先輩もおかしい?なんだこれ?



動画を見せて貰った時、伊勢先輩がめっちゃ怒ってたからなんか私は落ち着いてしまったけど後から1人になるとめちゃくちゃ腹立ってきた!!外町め!



私は香椎先輩が好きだから兄ちゃん気に入ってるなら嬉しいなあって思ってたし、こないだまで先輩は兄ちゃんに気がある素ぶりだったけど…なんで?

今の先輩は全く兄ちゃんに興味がない?

それも腹が立って仕方ない!

多分、兄ちゃんは香椎先輩の為に自分から捨て石になったはず。

もちろん兄ちゃんが自分でやったんだから香椎先輩を咎める筋ではないよ?

でも以前に、


『大事なものの為なら損得無く自分を顧みない男です。

普通の人には分かりにくいかもだけど自慢の兄なんです。

でもその良さをわかってくれる女の子っているかな?って不安だった。』

62話 新入部員 立花 望 参照


って、先輩に兄ちゃんを託したつもりだったから余計に裏切られた気持ち!





3組に居る宏介くんにも聞いてみたが3年は今、ばちばちに文化祭モードでわからないって。

宏介くんにせっかく来たからっておやつをもらいクラスへ帰る。

宏介くんは私を見ると持ってるお菓子を必ずくれる。時々宏介兄ちゃんって呼ぶとめっちゃ喜ぶ。

大体兄ちゃんの友達は兄ちゃんに似てちょろくて優しい。




とりあえず文化祭か…私のせいで兄ちゃんと香椎先輩が結ばれないなんて悲しすぎる。

私のせいで兄ちゃんは土下座までさせられた。

香椎先輩に告白して付き合えないって誓わされていた。

私はどうしたら償えるかな?


いくら考えても答えは出なかった。



□ □ □

最近ラブコメじゃありません。

申し訳ないです。


鬱展開だからこそ、感想お待ちしています。

明日のリハーサル回で鬱展開は一回落ち着くはずです。

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