第117話 暗転【side香椎玲奈】
ひょっとしたら来てくれるかもしれない。
そう思いHR後の放課後、私は美術室に居た。
私は仕事ある状態でぼんやりするのが嫌いで全部のタスクが終わってからじゃなきゃ寛げないタイプなんだけど、今日は色々ありすぎて限界だったのか、委員長仕事あってもぼんやり過ごしていた。
1人の美術室は静かで、寂しい。前はこんな事考えたことも無かった。
ポケットに入ってるお守りがわりの三毛猫の栞をいじる。最近不安だとこれを触ってしまう。
がら!!扉が開く!
びっくりして扉の方を見ると承くん!
私が駆け寄ろうとすると手で止められた。
『あ、香椎さん、さっきの話の続きなんだけどさ?』
『どの?』
色々ありすぎて本当にわからない。
『今日だけ、言うこと聞いて?ってやつ。』
『うん、でも!そんなことより!』
『外町の力借りる時点で酷いことになるのは覚悟してる。香椎さん泣かせたし。』
『あれは、私が勝手に…私が解任できなかったから…本当にごめんなさい。』
『勝負だけ考えればあれの方がクラスまとまるからいいよ!
これで小幡さんと勝負できるね?絶対出し物勝ってね?』
『今からでも…みんなに言って、ね?謝って仲直りしてさ?』
私の一言で立花くんが見たことないような雰囲気を出している。
『それはできない。
今更みんなに悪口言って侮辱しておいて…。
俺は相応の罰を受ける。
絶対に香椎さんみんなに言っちゃだめだよ?
俺それだけは許せない!』
ヒッ!てしゃっくりみたいな音が喉から出た。
『わかった。
…でも、今までみたいに仲良くできるよね?』
承くんは答えない。
『さっきの話の続きなんだけど、
香椎さん、俺と距離を置いて欲しいんだ。
卒業まで話しかけないで欲しい。』
『ちょっと言ってる意味がわからない。』
承くんの口癖を真似てみたがニコリともしてくれない。
いつも私と話す時にニコニコしてくれる承くんが…。
この言葉は2度目だ。前回よりショックは少ないけどあの頃より今の方が承くんと離れ難い。絶対嫌!
『私は嫌!!
絶対に嫌!!
なんで?なんでそんな事言うの?
私が面倒くさいからもう着いて来てくれないの?!
みんなばっかり見てる私が嫌いになっちゃった?!』
私のポリシーである女の子らしく、可愛くをかなぐり捨てて承くんに食い下がった。ああ、私可愛く無いなあ。
承くんは優しい目で
『誰よりみんなの事を考えて、みんなの事を思う香椎さんを俺は好きになった。
こんなに良いクラス委員長は居ないって思ってる。
…でもね?さっきの教室を見たでしょ?
俺はもうクラス公認の嫌われ者で、もう香椎さんの隣に居れない。
でも俺が側にいると来なかった陽キャたちも戻るし『みんなと仲良く』を果たして!
今の俺が側にいるだけで香椎さんの人気が下がり、嫌われる位クラスメイトから憎まれているから。
お願いだよ?香椎さん。』
『嫌だよ、承くんがいなくちゃ!』
泣きそう。承くんも泣きそうな顔をしている。
『俺は離れてても香椎さんが大事。信じて?』
『本当?信じていいの?』
信じてって好きな人に言われたら何も言えないよ。
でも…何か、なんとかならないかな。
『俺は裏切ったことは無いと思うんだけど。』
そこは信じてる。
『そうだね、信じてる、信じてるよ。』
いくつか話をした。
外町くんとうまくやること。
俺は気にしないで女優モードで全力でやって欲しいと。
私は役に入り込んじゃう、まして今回のロミジュリは恋愛度が高く、不安だって言ったけど承くんは気にしないからやってって。
(私がジュリエットで外町くんのロミオに愛を囁いたり、愛してるって宣言しても気にしないの?…私が望んだことだよね…。)
そう思うとロミジュリを出し物に推薦したのが外町グループなのが謀略かと疑いたくなるチョイスだよね。
『俺が香椎さんに誓った、
『みんなと前のように仲良く』『体育祭を大成功させて』『文化祭も大成功させて』『クラス委員長を全うして卒業式を迎える』
を叶えてみせるから。
卒業式の日にまたここで…。
決して俺に近づかないで…あとこの件も秘密で。
可哀想とか辛そうとかは全然大丈夫だから!
文化祭頑張ろうね?
じゃあ、ばいばい。』
(承くん、『また明日』って言ってくれなかったな。)
いつもとあいさつが違うだけで悲しい。
私は今まで『恋』が楽しかった。
自分の気持ちが育っていくことや、『彼』の気持ちの一端を知るだけでまだ15年しか生きてないけど感じた事ない幸せがあった。
こんなに好きなのに明日もっと好きになって自分の気持ちが何か深刻なエラーを起こしてるんじゃないか?って悩んだことすらあった。
自分の為に『彼』が奔走して文字通り体を張って私を助けてくれた時、女の子に生まれて良かった!とすら断言できるほどの喜びがあった。
それは全て『彼』が居たから。
恋って辛くなることもあるんだね。
承くんを子ども扱いした私の方が子どもだった。
この後どうやって家へ帰ったのか全く記憶が無い。
気づいたら家に居て、お姉ちゃんに玲奈?寝てんの?ってリビングでボーってしてるところ声かけられてる所だった。
『今日疲れちゃったみたい、私もう寝るね!』
そう言い、20時にはベッドに横になった。
日課の承くんの動画もくんくんもする気にならず、
自分を慰めても居ないのに賢者タイム。
『ううぅ…えぇぇ…しょうくん…。』
私は暗い部屋で1人で泣いていた。
自分の厚かましい要求が承くんの大事なものをいくつも代償として支払わせてしまったことを悔やむ。
承くんはきっともうクラスで楽しく過ごせない気がする。
私本当はもう愛想尽かされているんじゃないか?
色々なことがぐるぐる回って体も心もヘトヘトだけど寝付けない。
いっそ全部私が悪い!ってみんなに言って、土下座でも罰でも受けて洗いざらいぶちまけてしまおうか?
…でも承くんは絶対それだけは許さないって言ってた。
私は前思ってた。
もし好きな人が私を好き!って告白してくれたら興奮して、妄想しちゃって眠れないかもしれないなあ?
って。
はは!それがこんな気持ちで眠れないなんて思わなかったな。
明日からどうなるんだろう?
もう後へは引けない。
私も承くんに誓った!文化祭の出し物を制して必ず最優秀クラス獲るよ!
□ □ □ □
その頃の立花望のクラス。
立花望の1年1組はアイドルを出し物にチョイスした。
当然、見た目、運動神経そろった望はセンターに押されたが…
望『ももクロは良い、好き。
でもセンター要らないから!お願い!他の曲はバックダンサーで良いから
1曲だけ!慶次をソロで歌わせて!!』
自分の欲望もろだしでアイドルソングのセトリに角田氏の熱い漢歌をねじ込もうとしていた。
望『傾奇者恋唄かよっしゃあ漢唄を!聞けば!聞けば熱くなるから!!』
※要検索!!
望ちゃんはクールキャラが崩壊して地の熱さが出てきてしまった…。
□ □ □ □
いつも読んでいただいてありがとうございます。
続きが気になるよ!って方がいたら是非♡、☆、コメント是非お願いします!
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