第111話 発覚
俺はずっとぼっちの陰キャっていうのが肩書きだったんだけど、
『立花おっす!』
『立花くん香椎さんとはどう?』
『お!立花!文化祭負けないぜ?』
最近、声をかけられることが多い。
マラソン大会優勝した頃から少し声かけられることがあり、体育祭前の
『立花が火を吹いた事件』、『体育祭』ですっかり目立ってしまった為頻繁に声かけられるようになってきた。
特に女子や香椎さんファンには
『ハブられた香椎さんを1人で守り通して、香椎さんに体育祭を勝利させた漢』
(3回告白して全部断られた)
みたいなちょっとした
さながらプチ陽キャ。
正直に言うと、くすぐったくて面倒臭くて嬉しい。
みんなが好意的に話かけてくれて、たわいもない事を言って肩を叩いてすれ違う。昔の内気な自分では考えられない事。
もちろん煩わしいことも多いんだけどね?
ぼっちはぼっちの良さが、陽キャには陽キャの良さ、楽しみがあるんだよね。
ただ本来の陽キャたち。
具体的には外町グループの俺を見る目は冷たい。
自分達が体育祭に非協力的な姿勢を見せて、クラスを巻き込んで内乱状態にした事で香椎さんが苦労する羽目になった。
その上で陽キャたちの助力は最低限で勝利したため、彼らに対するクラスメイトの目には前ほどの彼等への敬意は無い。
それが気に入らないらしい。変わって皆や香椎さんに信任されてる俺が相当目障りらしく、嫌な目つきで見る。
そこはお前のいる場所じゃない、クラスの中心は俺らなのに!なんだよあいつは!そんな声が聞こえてきそう。
これがここからの問題。
文化祭は準備がものをいう。だから何をするにしてもこの陽キャたちの協力は必須。外町の実行力、判断力や陽キャたちの適応力や目立ちたがりな性格はとにかく文化祭向き。
そしてカースト上位は下位が目立ったりヒーローになるのを好まない。俺に対して当たりがきついんだよね。
他のクラスメイトも体育祭の勝利に浮ついていてまだ体育祭の話をしている。大丈夫か1組?!
10月3週半ば。
今週末のHRで文化祭のことを決めていよいよ10月4週から文化祭月間が開始する。
例年より1月ほど遅く、校舎の塗り替え補修のお披露目を兼ねているため例年と違う変則的な日程。
11月4週の土日に文化祭、12月2週に期末テスト、12月3週に終業式で2学期おしまい!いよいよ来年、受験シーズンに突入する!
だからバカをするのもこのイベントまで。
香椎さんの言う通り最後の大きいイベントだよね。
先日香椎さんがハブられていた頃のHRでなり手の居ない文化祭実行委員は香椎、立花で決めてあり、文化祭本部委員は香椎さん友人の一条さんで決まっている。
珍しく香椎さんは今回楽観的でもうみんなと仲良く出来てるし大丈夫じゃない?って見通し。
クラスメイトもあんなにばらばらでも体育祭勝てたし、去年も勝ったから(体育祭、文化祭両方)真面目にやれば勝てるでしょ?って雰囲気。
そんな秋の日の帰り道。
美術室で少し勉強を教わり、手作りクッキーを頂き優雅な放課後を終えて帰宅する準備をする俺と香椎さん。
『そうなの?クリスマスは家族で過ごすんだ?女の子と予定とかないの?』
『あるわけないよ!
クリスマスは母さんが休み取ってくれてケーキ作ってくれたり、唐揚げ作ってくれたりするから妹の望も楽しみにしてて、幼いひーちゃんはよくわからないけど楽しみ!って(笑)』
『立花くんちも?うちもクリスマスは唐揚げなの!』
『結局、唐揚げが最強だと思う!』
そんなバカな話をしながら俺は青井と、香椎さんは小幡さんと帰る約束をしてる為途中で別れる…はずだった、少し早めに待ち合わせ場所の玄関へ向かう俺たち、早めだからまだ教室に居るかも?
最初に異変に気づくのは香椎さんだった。
美術室を出て途中で3組の前を通った時に
『あれ?小幡ちゃん居ない?』
『青井も居ない。どっかで勉強してるんかな?』
少し考えて香椎さんは、
『でもカバンあるんだよ?』
『青井のもあるからまだ玄関へは行ってない?』
『よく見ると…3組の机カバン多くない?』
『…え?!』
香椎さんに指摘され驚く、確かに机横にカバンがある机がほとんどだ!
なんで?1組も、2組も大半が帰っていて机にカバンが無い、もしくは何人か教室で残ってたり、図書室などで勉強の為残っている人のカバンがあるくらいだ。
『このカバンの数で教室に誰も居ないっておかしくない?』
『言われてみれば…おかしい!』
香椎さんと手分けしてざっと教室棟を見て回るが3組生徒は居ない。
1人も居ないのはおかしいよ。
特別教室棟を見るとき香椎さんは、
『あ!3組の担任の先生って理科の教師だった!』
香椎さんは確信した表情で理科室へ向かう、
理科室の前は不思議な緊張感がある。
廊下に居る分にはとても室内に何人も居るとは思えないほど静か。
コンコン、香椎さんが扉をノックする。
返答は無い。
誰か居れば返事があるだろう、無ければ人は居ない可能性が高いのだが。
香椎さんが借りてる美術室もだが使用時は鍵をかけないルールだしね。
意を決して扉を開く、扉はすんなり開く。
中には二十人を超える3年3組の生徒が静かに文化祭の出し物、課題発表の2つの準備を黙々と行っていた!
香椎『こ…これは!』
小幡『玲奈…見てしまったわね?』
香椎『まさか…文化祭の準備?』
小幡『ふふ。見られたからにはしょうがないわね?』
戦隊モノのヒーロー側のピンクが悪のアジトを見つけてその場で悪の女幹部に見つかってしまうシーンみたい。
香椎『でも?まだ文化祭準備月間じゃないよ?』
小幡『例年9月の最後に体育祭があり、翌週の10月1週ー11月1週の文化祭までを準備月間にしてるだけ。
今年は校舎の補修、塗り替えのお披露目があるから11月4週開催だから例年より体育祭ー文化祭の間隔が長いのよ。』
立花『そっか、別に準備月間まで準備しちゃいけないってルール無いもんね?』
宏介『…。うん。』
香椎『そうなんだ?ほぼ毎日一緒に帰る約束してたのに…?
ずっと黙って準備してたの?』
小幡『ガッカリした?でも私たちは絶対に1組に勝ちたい!ルールを破る以外は何でもする!』
香椎『ガッカリだなんて…
逆だよ!…すっごく嬉しいよ!小幡ちゃん最高だね!』
小幡『あなた達が体育祭が終わって一息ついてる頃から私たちは地獄の特訓をしたわ!』
立花『青井、地獄の特訓って?』
青井『委員長の愛読書『ガラスの仮面』なんだよ…』
立花『…あー…。』
明日からはもう隠さないって宣言して小幡さんは青井達と理科室で続きを始めた。
小幡さんと青井と帰れなくなった為、香椎さんと俺は一緒に帰る。
香椎『どうしよう、承くん!
私!燃えてきた!小幡ちゃんが体育祭に続きこんなに私に勝ちたいってギラギラしてるなんて!
明日のHRで文化祭の諸々決めよう!』
香椎さんはウットリしながら微笑んでいる。
こうして最後の文化祭へ向けた戦いが始まる!
□ □ □
文化祭編がスタートします。
導入はほぼ体育祭と一緒ですが展開はまったく違うものになります。
よろしければお付き合いください。
続き気になるよ!って方はいつもお願いしてますが♡、☆よろしくお願いします!
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