第108話 負け犬モード【side小幡千佳】
片付けにグラウンドに戻り、皆で椅子やパネルなど分担して片付ける。
(朝、みんなで作ったこのパネルを掲げる時あんなに誇らしく、嬉しかったのに…みんなごめん。)
各組の得点パネル見るたび悲しくなる。早くあれ片付けて欲しい。
そんなどん底気分のまま教室へ戻る。
(みんなを焚き付けて、煽ってこの体たらく。笑えないわね。)
みんなもきっと残念な気持ちだろう。いっそ馬鹿にして罵ってくれたら楽なのかしら?みんなはそんなことしないのがわかっているから虚しい妄想よね?
宏介『負けた時こそ論功行賞は迅速にやるべきです。』
小幡『それまだやるの?』
私はちょっと面倒になってきた。
何が女王よ?みんなを引っ張り回した負け犬女王よ。
宏介『女王より!皆1人、1人に感状がある!』
感状…主君が家臣の手柄や功績を感謝と共に書き綴った手紙。当時再就職時などにどれ位手柄を立てて褒美をもらったかわかる、褒美兼実績証明書。家宝として子孫に伝えられたりしている。
1人1人名前を呼んで直に手渡し、握手して渡す。
感謝と謝罪の手紙。これは私の出来る気持ちを伝える手段だった。
皆に手紙が行き届く、みんな手元の手紙を夢中で読んでいる。
小幡『読みながらで良いから聞いて?』
私はまずみんなに感謝を伝えた。
赤と良い勝負ができたのはひとえに皆の協力があったから。
その努力に、献身に、協力に心からの感謝を伝えた。
リレーまで勝ってた。それでも最後に負けた。
なぜか?みんなは最高だった。
それなら?私のせいなの。
玲奈はクラスが割れていてまともにエントリーシート埋まらないほどのクラス分裂してた、うちは一致団結していた。それで負けたのはリーダーとしての差だ。
リレーで玲奈と私の対決で三秒も差を付けられ、最後青井が1歩差まで迫っていた、私が3秒付けられていなければ今頃勝利に湧きかえっていた。運動能力の差だ。
私より三秒早くゴールした玲奈はその足で陣地へ戻り応援の指揮を取り、応援を盛り上げた。私は息が切れていて一歩も動けなかった。適切な判断能力の差だ。
うちは私が勝ちたくて運動能力の優れた子を最大の3競技にエントリーしてもらって勝つ為のシフトだった。玲奈は内紛もあり、あまり運動が得意でない子を多くエントリーしてクラスのメンバーを出来るだけ多く散らして出場させていた。
クラスみんな出場によりみんな体育祭を赤は楽しんでいた。クラス全体を考えていたリーダーの違いだ。
みんなが負けたんじゃない、私が、私だけが負けたの!
みんなごめんなさい。
私は体を大きく曲げて床に頭をつけそうな程頭を下げた。
土下座しても良かった、でも見る方もあれはしんどいから頭を極限まで下げた。
もし土下座を求められたらしても良い。
青井『頭下げるなよ!お前のせいじゃない!』
そうよ!そうだよ!頭あげて!
そんな声がする。みんな優しいから…私は罰してほしい。
小幡『本当にみんなごめんなさい、何が女王よね?』
顔を上げるとみんな泣いていた?
なんで?
田中『手紙読めば伝わるよ!女王の無念が!』
青井『俺が、あと1歩早ければ!俺が敗因だ!』
青井が泣きながら、皆に謝る。
小幡『青井はMVP取るほど活躍したわ。至らない私のせい。』
青井『好きな娘に勝利を手渡せなくて何がMVPだ!』
(ん?今さらっとすごい事言わなかった?…いや負け犬の空耳よね?)
小幡『青井くん、頑張ってくれたから、こんな縁起の悪い私ので良ければ約束通りキスするよ?』
え?キス?!委員長?!女王のキス?!
青井!!青井てめえ!!どさくさに紛れてなんて要求を!
弱ってる女王に何要求してんだ!
青井がめちゃくちゃ詰られている。
小幡『約束通り頬でも唇でも、濃厚なやつぶちゅーって…。』
お前!信じられない!青井くんさいてー!
落ち込んでる女の子につけ込んで!
濃厚?!ゴクリ!
青井が責められている。
小幡『こんな私で良ければ、皆んなにキスするよ…
好きにしてくれて良いよ…?』
す、好きに?キス…?初キス?!
女子が前に集まって壁を作る
女王!気を確かに!後で後悔するから!
男子そんな目で見るな!
ザワザワしてる。
青井が大きな声で私に話しかける。
青井『今のお前にキスして欲しいとは思わない!』
(そうよね?私なんかじゃ…?)
小幡『ごめんなさい…でも、本当に好きにしても良いよ?』
だめー!男子にそんなこと言ったら何されるか!?
小幡ちゃん!正気に戻って!男子!もの欲しそうな顔しない!
男子に好きにして良いって言ったら小幡ちゃんピーってなっちゃう!
女子たちが私を守っている。
青井『今のお前は魅力が無いんだよ!
いつもみたいに一生懸命で頑固で真面目で…そんな女の子だろ?
なんでも出来んじゃん?
そんなこと言わないでくれよ!』
小幡『はは!私なんかが出来ることなんてたかが知れてるよ?
大した事出来ないけどなんでもお返しに言う事聞くよ?』
自暴自棄になってるって自覚はあるわ。でも皆の頑張りに返してあげられるものがないから唇でも勉強でもなにか労働でも、要求されたら黙ってそれをするつもりだったわ。
宏介『なんでもって言ったよね?』
小幡『私の能力の及ぶ範囲よ?
えっちいお願いはさすがに…。』
宏介『1組に勝ちたい!文化祭で!』
おおお!クラスがどよめく。
田中『俺も1組にリベンジしたい!』
『俺も!』『私も!』『頼むよ!』
青井『小幡が香椎に勝つところ見たい!』
私は涙が止まらない。
小幡『ふ、ふえぇ、えぇ、ぇえん!』
メガネを外し泣きじゃくる私を女子たちは抱きしめてくれて、男子たちは力づけてくれた…。
私はなんて幸せものなんだろう。
私の全てをクラスに捧げる。口には出さないがそう誓う!
必ず目標の為に努力をしてそれが報われる喜びを皆に教えたい!
私は怜奈に、勝ちたい!これは本音。
でもそれに囚われ過ぎていた。
もう迷わない、私じゃなく、『私のクラスが最高』ってみんなに知らしめる!
そこへ1組の方から、
『3年1組!
学年最強!!』
どっ!!
3-1の勝ち鬨に教室がどよめく!
教室内に怒りが充満する。
リベンジだ!誰がが叫ぶ!
小幡さん!千佳さん!委員長!
小幡ちゃん!おばちゃん!
メガネ!小幡!ちかちゃん!!
みんな私に呼びかけてくれる!
小幡『みんな、ありがとう…。
でも?おばちゃん!とメガネ!って言ったのだあれ?』
私はキレながら大声で宣言する!
小幡『宏介、このまま文化祭の会議を初めるわ。
みんな!文化祭では必ず勝つわ!
また力を貸して!』
おおおー!!
3組はこうして体育祭で負けた日から即座に文化祭の準備を開始した。
3組の熱い季節はまだ終わらない。
□ □ □ □
小幡ちゃんが息を吹き返しました。
今回一番苦しんだのは彼女でした。
これで体育祭終了!
完璧女子の失脚編完結になります。楽しめたよ?って方は♡、☆是非お願いします!
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