第107話 戦い終わって

最後の組対抗リレーでアンカーの外町が青井の猛追を凌ぎきり、見事赤組大勝利!!



終わってみれば香椎さんの宣言通り、


□ □ □


香椎『圧倒的リードからの大逆転劇!今日見に来た人は得したね?見応えは保証するよ!

リレーでは一回も前に出すこと無く勝つから!』


□ □ □

だったね。

外町が決めた時赤組が狂喜乱舞してグラウンドに雪崩こみ危うく勝ち点を剥奪されるところだった。

でもそれ位大盛り上がりだった。


香椎さんはリレーから戻るなり、


『私の学ランが無い!!』


(私の?)


『あー、リレーの時に応援仕切る人居なくて伊勢さんがやってくれたんだけど、その時気合い入れるため着てったみたい?』


『なんで?完くんのあるでしょ?

私の着なくってもいいじゃない!』


『じゃあ完くんの着る?』


『返してもらってきて!』


駄々こねるなあ。俺は1000mの後遺症、香椎さんもリレーで疲れてるからさ。

座ってゆっくりしよう?と提案。すると香椎さんは、


『あ!喉乾いてない?ポカリ冷たい水筒でいっぱい作ってきたんだよ?

一緒に飲もう…よ…?』


香椎さんが俺の椅子の足元のポカリ缶を見つめて無表情になっていく。


『つーん。』


拗ねた。これを放置できないよ。


『…俺、香椎さんのポカリ飲みたいなあ…!』


(チラチラ)

『仕方ないなあ…誰にそれもらったの?』


『…伊勢さん。』



『伊勢さんか…学ランだけじゃあ飽き足らずポカリまで…。

伊勢さんのポカリ缶340ml飲んだからには私のポカリは680mlは飲んでもらうよ!』



『そのルール止めない?』


※承くんが責任持って飲みました。



その後、閉会式があった。

クラスMVPは3−3で団体競技が抜群に強かった。

MVP取ってもみんな顔は冴えない。小幡さんなんかお通夜みたいな顔。

個人MVPは望(赤)と青井(青)だった。

香椎さんは二人三脚でやらかしてるから惜しくも取れなかった。


赤組内でも泣くもの、笑うもの表情はさまざま。

でも外町たち陽キャは本来なら中心になってるはずのイベントでノリきれずに泣けなくて、なんかノリで笑ってますって感じの戸惑った様子にこのクラスの歪さが見えた。

3組はみんな同じ表情。同じ目標にチームで取り組んだから意識に差がないんだと思う。




なんにせよ、このあとのフォークダンスで体育祭はおしまい。

片付けとSHRがあるけどそんなのはオマケでしょ。


色々あったけど勝てて良かった!

体育祭を勝利に導いた香椎さんはこれで失脚から完全に回復!

ハブられていたのも解決したし。

外町たち陽キャの力をほぼ使わずに勝利したのは香椎さんの力を知らしめるに十分!これでさらに香椎さんの発言力は増すだろう。

普段はクラスの非主流の子たちが活躍したのもクラス内バランスを変えるかも。

文化祭はこううまくいかないだろうけど香椎さんの願い通りみんなで楽しんで良い結果を残せたら良いなあ。

俺も慣れない実行委員大変だったこれは陽キャがやるべき仕事だよね?



最後のフォークダンスは適当に…。他の男子は女子と踊れる機会なんて無いから色めき立ってる!

何人と踊れるんだろう?香椎さんと踊れるかな?


『香椎さんにもう一回告ってみたら?』


『立花くんあれからどう?』


『香椎さんは高目すぎる!』


ダンスした女の子たちは口を揃えて香椎さんの事を言う。

女子は恋愛好きすぎて俺の嘘で3回告って断られた話にみんな興味深々。

伊勢さんとは順番的にずれちゃって踊れなくて目の前を通過、残念。


香椎さんは5人向こう。順番来る前に曲終わるかな?

そもそも男子列、女子列ともに1ずつずれるから奇数の子とは踊れない。


(香椎さんと踊りたかった、残念だなあ。)


香椎さんも目で数を数えて組み合わせ的にダンスできないと悟ると、

なんか強引に飛ばしてこっち来た?!

体育祭のノリなのかいつもよりずっと距離が近い。


『来ちゃった!』


『強引だなあ。』


小声で香椎さんは言った、

『ありがとう、承くん。

ハブられたの解決してくれたのも、今日みんなと一緒に戦えたのも、今日勝てたのも全部、全部承くんのおかげだよ。』



『そんなことないよ。』


『そんなことあるよ。』


香椎さんの手は小さくて、すべすべ。ずっと触っていたい。いや、キモいな。

こないだのダンスでも感じた、香椎さんの体温と匂いがダイレクトにクる。



『楽しいね?

こないだのダンスの続きみたいだね!急に香椎さんが踊り始めるからびっくりしたよ!』


『あの時は柳先生に見られて恥ずかしかったね?でもあの時ははぐしてくれたよね?』


『…。』


『私、嬉しかったよ?

今も一緒にフォークダンスができて嬉しい。

ねえ、私今ドキドキしてる。承くんはどう?』



『…まるで好きな娘とフォークダンス踊ってる位ドキドキしている。』


『しょうがないなあ!

…今はそれで良いよ。』


香椎さんはくすって笑うとダンスを続行した。

あまり俺と近すぎても厄介なことになるから適度な距離を保ちたいんだけど今回の一連の流れで信頼を得たのか香椎さんが少しだけ俺に依存している気がする。

でもそれを突き放せないほど香椎さんに夢中な自分に苦笑いが出ちゃう。



片付けが終わり先生のSHRも終わり解散。

これで体育祭終わった!

完『去年みたいにあれやろう!勝ち名乗りっていうか勝鬨きって言うか?』


『やろう!やろう!』



他クラスお通夜みたいになってるから刺激しない方がいいんじゃ?

今までは香椎さんとかが仕切ってるイベントに参加だけって感じだったけど、今回運営側に周り初めて感じたことがたくさんあった。

小幡さんを初めて、みんな必死で戦い、僅かな差で勝てた。

少しの差で敗者だったかもしれない。

その悔しさは簡単に想像できる。

俺は負かしたチームを煽りたくない。


でもクラスはノリノリ!

少しだけってことになった。



完『3年1組!!』


みんな『『学年最強!!!』』



わあああ!!クラス大盛り上がり!

次は文化祭だし、負けて悔しがってるライバルたちを煽らない方がいいと思うんだよね?

散々煽ってきた俺は何も言えないけど。



こうして、中学生活最後の体育祭は勝利で無事終わることができた。

一日中着ていた体操服を脱いで適当に丸めてカバンに突っ込んで、学生服に着替えて、家路につく。


学ラン…持つのも面倒だから羽織って帰るか…。


帰り道、すごい驚いた!

俺の学ランめちゃくちゃ良い匂いがする!

フローラルな、やさしい香り?表現できる語彙が無い!

香椎さん7割、伊勢さん3割?

ふわって香りがして頭がクラクラする。

女の子の身体ってどうなってるの!

俺、変態なのかな?学ランについた女の子の残り香で興奮しちゃうなんてこんなこと香椎さんには言えないよ…。

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