第105話 逆転の為に

赤組は騎馬戦が2位だった為1位青組との差がまた35点差になった。30点差以上ついてリレーまでいくともう逆転は不可能になる。

残る競技は400mハードル、部活対応リレー、1000m走、各組対抗リレー。部活対抗はその部に副賞が出るだけで勝ち負けには関わりない。ラスト付近は得点が高くタフなレースが続く。


例年このあたりの時間からピリピリしてくる。勝ち負けを意識してくる時間帯で集計結果が得点板に表示されるたび歓声やため息が聴こえる。


400mハードルは結構力が入っている競技で、グラウンドの1周が200mだから2周ハードルを飛び越えながら走るタフなレース。

各学年性別ごとに2レースずつ。男子は完くんと青井は組が分かれたけど香椎さんは小幡さんと当たる。


男子は危なげなく完くん、青井が勝利!望も出ていたけど1年女子では最強って本当だったのか楽勝みたい。


ライバルらしき子2名が死ぬほど悔しがってて望の友達がたくさんいることに安堵を覚えた。


香椎さん対小幡さんは前評判通り香椎さんが余裕を持って勝利。

小幡さんの歯軋りが聞こえてきそうな悔しさを滲ませた表情が忘れられない。


立花『400mハードルは結構勝ったから追いついてきたね?体調大丈夫?』


やはり心配で聞いてみたが


香椎『うん!全然大丈夫!絶好調!』


(なんでさっき尻餅ついてたんだろう?まあ元気ならいいけど?)


立花『小幡さんとは組対抗リレーでも当たるけど大丈夫そう?』


香椎『大丈夫だと思う!けどあんなに負けてても食らいついてきたのは初めてだよ。』


香椎さんは嬉しそうだった。

ライバルと競い合うのは楽しいよね?


点差は20点差まで追いついてきた。



部活対抗リレーで後輩たちが頑張ってるのを見守りながら、次競技の待機所へ向かう。

約束通り完くんと勝負。

この1000m走はトラック5周の長丁場。

全学年一緒に走る。性別だけ分けて2レース。



女子は黄色が優勝。大勢に影響は無いよね。



男子でメインになる選手は当然完くん(赤)。1000mはスピード、スタミナ、瞬発力兼ね揃えた彼が一番人気、ついで先のマラソン大会優勝の俺(赤)、1、2年マラソン大会2着の遠野くん(黄)、意外なとこで宏介(青)も出てる。

30点以下に差を縮めないとリレーで逆転不可能になるから俺か完くん絶対にどっちか勝たないといけない。


完『いやあ、マラソン大会では悔しかったなあ!今日は勝たせてもらうよ!

立花くんは味方でも敵でもイイね!』


立花『負けない!』


香椎さんも見てるしね?距離的には完くん有利という下馬評。



立花『宏介、中距離得意じゃないだろ?』


宏介『そうも言ってられない。ここでポイント取れればリレー前に決まる事だって…!』


俺と宏介は400mなら絶対宏介が早い。それ以上はどうなんだろう?

3000以上なら俺が早いのはわかるんだけど中距離は初めて勝負するかも。




レースは序盤、マラソン大会と同じように完、立花、遠野が先頭を譲らず後続を突き放す展開。

2周目に入った頃、完くんは少し下げた。宏介は何処にいる?


4周目に入った頃遠野くんを3歩離して俺が先頭!

声援がすごく聴こえる。

4周目の生徒席の前のバックストレートを先頭で走るのは気持ち良い!!!



『立花がんばれー!』『立花ー!』『完くん!』

『完くん!』

伊勢『立花頑張って!完くんきたよー!』



!!!



伊勢さんの声が俺に届く、もう来たの?4周目のバックストレートでもう完くんが仕掛けてきた。

マラソン大会で捉えきれなかったからか?!



香椎『立花くん!立花くん!がんばれ!!』



(すげえ、力出る!香椎さんの声すげえ聞こえる!)


俺もここからスパートかける!!



ラストの5周目!!

後ろは見えないけど気配はビンビンに感じる!


最後のバックスストレート!

あと半周!



『立花!完!どっちもがんば!』『ワンツーきめて!』

『どっちもすごい!がんばれー!』『完くん!!』

伊勢『立花!!がんばれ!たちばなー!!』




見てるチームメイトはどっちが勝ってもいんだろうけど、

ここまでやってるんだから絶対負けたくない!

負けたくないぞ!!!



香椎『承くん!!承くん!!承くん!!』


(ダメでしょ?名前呼びは!!)


最後の一押しをもらい必死にゴールへ駆け込む!

しのげるか?!勢いは完くんの方がある、瞬発力では完くんが上!

気持ちでは負けない!スピード落とすな!!



ゴール直前、横に完くんの姿がフッと現れ、俺の僅か先へ出たところでは完くんにゴールテープが巻き付いた…。


完『うおおおおおおお!!!』


完くんが吠えた!



チームが勝てば良い、1、2位独占できれば良い?

こんなに悔しい。

完くんがマラソン大会で言ってた、負けて超気持ちいいけど悔しくて頭おかしくなそうって言ってたけど俺今ならわかる。

俺、悔しい。

遠野くんが3位、宏介は5位。



俺は息も絶え絶え、自分席へ戻る。


伊勢『…立花お疲れ、惜しかったね?』


立花『…完くん強い、悔しいけど負けちゃった…。』


伊勢『頑張ったよ!立花頑張ったの見てて胸が熱くなったし!

…格好良かったよ?

…ポカリどうぞ!!』


伊勢さんは自分用なのかな?小さいクーラーボックスからポカリシットを出してくれた。


『…ありがとー。

ぷふー!!!うまい!!』


しょんぼりしてたけど伊勢さんが気遣いが嬉しくて笑顔が出る。


ポイントは取れて、これで10点のビハインド。

赤が優勝するには勝つしかない。

青が優勝するには勝つか、赤が3位なら優勝。黄が勝っても2位なら青が優勝。

黄は勝ってなおかつ2位が赤なら優勝


青が若干点数差では有利だがリレーでどこもひっくり返る可能性がある為、自然と各組力が入る。



俺と完くんは息が切れてしばらく声出ない。

香椎さん、望、外町はリレー選手だからもうホームストレッチで準備している。

応援、やべ、誰が仕切る?



伊勢『あーしがやる!

立花と完くんはもう少しだけ休んでて?』


暑くて完くん学ランを脱いでセーラーに戻していた伊勢さんが声を張る!

香椎さんの席にかけてある学ランを肩掛けに羽織ると、



伊勢『完くんと立花が点差縮めたから!勝てば文句なく優勝だよ!!

リレー走るみんなに声届けよー!!

いくよ!』



応援歌をみんなで歌い始める!

よそのクラスもそれを見て自分のチームの応援歌を歌い始める!





伊勢『とどろけ!!』


(轟かないなあ…。)


伊勢さんは声が高くてあまり迫力が無い。

それでも今自分の出来る事を!必死に!

そんな伊勢さんの健気さが皆を鼓舞する!マッチョやギャルたちが応援団席に雪崩こみみんなで声を出す!


レース前からまるで応援合戦のような雰囲気!


いよいよ体育祭も最高潮クライマックス!!

会場にいる全員が固唾を飲んで見守る中いよいよ最後の組対抗リレーが始まろうとしていた!



伊勢『とどろけ!!』


伊勢さんは健気ギャルだよね。


□ □ □ □

いよいよ体育祭も大詰めです。

明日はメインイベントのリレーで、

香椎玲奈 対 小幡千佳


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