第104話 騎馬戦【side 小幡千佳】

応援合戦で負けたのは私たち青組にとって痛かった。

これが取れれば勝負を決することが出来たほど得点配分も高い競技で3位は辛い。

応援団長の青井もちょっと凹んでいる。


青井『…すまねえ。俺の責任だ…。』


小幡『みんなで頑張ってこれなんだから誰のせいではないわよ?』


青井『必ず、必ず!騎馬戦、400mハードルは勝つから、見ててくれよな!!』


(青井、燃えてる。無理しなきゃ良いけど?)


でも、現状青井に期待せざるを得ない。応援団長やりながら青のエースとして青井は今日フルに活躍している。

戻ってしまった荒い口調もこうなると頼もしいわね?


騎馬戦は総当たり、男子は全員参加で暴力厳禁で帽子を被りそれを奪いあう競技で制限時間後残ってる騎馬の多い方が勝ち!

1位30点 2位15点 3位10点

点数も大きい。絶対落としたくない!


組み合わせは

1戦目 赤対青

2戦目 赤対黄

3戦目 青対黄

籤運良くってうちが有利な組み合わせ。

赤も黄も連戦だけど青だけインターバルがあるから少し休んだり問題を訂正する時間があるわ。


宏介『策としては対完くんシフトを訓練してる!』


去年完くんがMVPとった要因として騎馬戦でまさに無双と言える活躍だったから。

マッチョを騎馬に縦横無尽に帽子を刈り取っていた。

対策としてうちの精鋭3騎を完くんにピッタリマークさせる。

3騎は無理に帽子を取らず牽制に努める。


青井がその間に無双すると言うもの。

3騎精鋭を完くんに当てるのは辛いけど、無双されると士気が下がる上に戦線が崩壊する可能性があるのでこのシフトを組んだ。

赤のもう1人のエース外町くんはこの競技嫌いみたいで古去年の映像ではそんなに活躍していなかった。


小幡『どっちにしろ青井次第なのよね?』


『女王!応援の指揮を!』


あ、青井居なくて女子だけだから仕切れる子が居ないのね?

応援団の2年の娘がキラキラした目でどうぞ!と促す。

これどうしよう?青井たちにも聴こえるように、奮起させる言葉?!




私は3歩前にでてみんなを見つめる。

みんなも私を見ている!


声を、激励の言葉を!!





手を大きく振って大げさに威圧的に振る舞いながら叫ぶ!





小幡『やっておしまい!!』





悪役女性幹部のセリフが出て出てしまった…!



『『おおおおおおおお!!!!』』


でも大丈夫みたい?青井含めて盛り上がってる見たいよ?!



赤の応援団女子はみんな学ラン着て鉢巻、白手袋してる!

見栄えするわね!


香椎『みんながんばれ!』



『『おおお!!!』』


玲奈の声かけに赤も盛り上がるが、

(ドラクエでみんながんばれは普通に戦えなんじゃ?

ガンガン行こうぜじゃない?)




赤対青が始まる。


睨み合う両軍。

開始の合図とともに両軍前へ前へと走る!


一番に飛び出したのは完くんでも青井でもなく、3組では目立たない木村くんだった。

木村くんは大人しい子だけど今回の体育祭ですごく頑張ってくれて、準備やサポート、もちろん競技も見たことない位頑張ってくれている。そんな大人しい子が、


『頼むよ!一番に突っ込む!馬係ごめんね!!』


『『まかせろ!』』


本当に失礼だけど、モブと言われる騎馬のメンバー、騎手の木村くんも3人の馬係も普段は目立たない子。

その子があんなに死に物狂いで先駆けてる!



『いくぞお!!』


1番に突っ込んだのは木村くんだった。木村くんに引っ張られて皆も前へ前へと進んでいく!!

木村くんが突出してる為、木村くんに群がる赤組。

木村くんが危ない!


小幡『木村くんを孤立させるな!みんな!突撃ー!!』



そこからは混戦状態でよくわからない。

完くんを3騎が封じている間に青井が荒稼ぎしていることはなんとなくわかった。

私は最後まで先頭で戦った木村くんが終了寸前に外町くんの騎馬に帽子を取られて崩れていくのを悲しく見ていた。


ポポーー!!

笛の音が間抜けに響く。


終了。


残騎は青が多い!!勝った!

すごい!男子偉いっ!!!



引き上げてくる、青井やみんなに声をかける。


帽子の準備や1戦目やってるチームのためにインターバルが多めに与えられている。


宏介『女王、戦場で即褒美を与えることは皆の士気をあげますぞ。

用意してありますか?』


小幡『用意してきたけど…。』



宏介『注目!女王よりお褒めの言葉がある!』


小幡『男子!見事だったよ!

お疲れ様!次も必ず勝って!!』



みんなざわざわ、褒めてくれた!女王見ててくれた!とかみんなニコニコ。



宏介『女王、論功行賞を!』


論功行賞とは立てた手柄に対し褒美を与えること。



小幡『やらなきゃダメ?


…木村くん!前へ!!』



木村くんが不思議な顔をして前へ出る。


小幡『一番槍お見事!


次も期待している!励め!!』



木村くんに手作りのお菓子を手渡し、手招きした私は木村くんにそっとハグする。



『『『おおおおおおおおおおおおお!!!!』』』




男子が沸騰してる!!

まじか!手作りお菓子にハグ?!

次は俺!俺!

委員長クールなのにあんな照れて!グッとくるな!

俺女の子にハグしてもらったことない!して欲しい!!


一部生徒が

『でも帽子は青井が一番とったでしょ?』


青井『木村の勇気でみんな前に出れた、木村が突出して引き付けてる間に帽子取れただけ!

木村最高に格好良い!

次は俺も!!』



おかしなほどみんな男子ハイテンション。


小幡『宏介?手作り菓子だけじゃだめだったの?』


宏介『菓子だけじゃここまで爆発しないよ。

小幡さんが思ってる以上に小幡さん人気あるんだよ?』



小幡『2勝すれば間違いなく勝ちだけどなんか策は無いの?』


宏介『騎馬戦…騎馬には鉄砲!!』


小幡『信長の野望から離れなさいよ?』


2戦目は前回封じられていた完くんが大暴れして、黄の戦線が崩壊して早々に赤が勝利した。



3戦目、士気の沸騰した青は黄色を粉砕した!

我先に!と黄に突撃していく命知らずの青の男子!

おっかなびっくり前に出る黄と迫力が違う!



ハグ!!はぐー!!

青組男子たちの咆哮がグラウンドに響き渡り勝負あり!


見事青が騎馬戦を勝利した!!



1位青、2位赤、3位黄


これでまた点差広げた!



2戦目は該当者無しでハグは無し!


優勝したら何か青組みんなにご褒美企画するって宏介が言ってた。

どこまで許せる?って真顔で宏介が聞いてきた。

何それこわい。


大丈夫よね?なんかいかがわしい接待とかさせられないわよね?

皆の視線に恐怖を覚える青組の女王様だった。


□ □ □ □

小幡さんは常に香椎さんと比べている為自己評価が低めな子です。

でも真面目で頑固で一生懸命で皆の支持を集めています。


小幡さんは果たして香椎さんに勝てるのか?

体育祭も終盤に差し掛かります。


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