第100話 準備と寸劇と思惑

やっと人数が揃い体育祭の準備が進む。

完くんたち応援団は一般生徒と応援練習に励む。

大道具は大型パネルの慶次に色を塗り。

小道具は応援小物と体育祭飾りつけの造花を作成し、

伊勢さんグループのギャルや一部女子により応援団員の衣装を作成している。


陽キャはぶつぶつ自分達が主役じゃないことに文句を言いつつ、みんなで準備を進める。


立花家では立花祖母の協力で主に女子の姫風衣装、丈の短めな打ち掛けみたいな衣装を衣装係たちがキャッキャ作成してる。

被服室でも女子衣装のセーラー服のような衣装をギャル達が作っている。


ひーちゃんは毎日色々なお姉ちゃんが来てくれて大喜び!


『菓子ちゃんとおっぱいちゃん!』


『納得いかない。』


『今日はフィナンシェだよー?』


『フィナンシェうま!』

望は毎日お菓子が食べれて幸せだった。


毎日そんな感じで準備に大忙し、ぎりぎりではあるが準備は着実に進んでいた。

いよいよ体育祭が近づいて来た。

小幡さん率いる3組の士気は高く、毎日の準備以外にも早朝に青組は色々練習をしている。

体育祭って練習するものなの?

とにかく青組は要注意。

小幡さん、宏介、青井、田中とライバルも多い。特に小幡さんの戦意が高い!

着々と体育祭が近づく…。祭りはもうすぐ!



□ □ □ □

寸劇


体育祭の準備期間中でも通常通り授業は行われている。

英語の授業中のこと。

各班でパートを決めて朗読劇をする。

題目は鶴の恩返し。

若者の妻になるバージョンの方みたい。(老夫婦のバージョンもあるらしいよ?)

各パートを分担してもちろん英語で朗読劇。

吾作どん。つる。ナレーションA、B、と4人、場面によって町の人とかあるんだけどもっぱら評判としては、


『香椎さんと外町くん吾作とつるなんだって?』


『えー?もう夫婦の役柄じゃん!』


『香椎さん、演技力あるから新婚夫婦みたいな朗読劇聞けるかもね?』


『えー?あの2人お似合いだからなあ。』


『擬似夫婦みたいな感じになるのかな?』


去年の文化祭の眠れる森の美女を思い出す。

綺麗で素敵だったけど胸が痛かったな、劇とはいえ香椎さんが他の人と恋人役って嫌だな…。いや、俺がそれを言う資格は無いよね?

複雑な心境で朗読劇が始まるのを待つ。


各班がこなしていく中、香椎さんと外町の班が始まる。



ナレーション役『the cloth was finally finished,』

(ようやくはたを織り終えた娘は)




外町『Please go down to town to sell silk cloth

I have woven and on the way back, please buy some more thread.』

(この布を街に売りに行って、帰りにはまた糸を買ってきて下さい)



????



あれ?なんだ?

外町はいつもより声を高くセリフを朗読。





香椎『This is truly wonderful!!

FUU!!』

(これは、素晴らしい!!ふー!!)

香椎さんはいつもより低い声で朗読してる?




ふー!!は教科書には無い。香椎さんのアドリブだ。

みんなも気づいた!女役のつるは外町、男役の吾作どんを香椎さんがやってる!



外町のセリフのたび香椎さんから

『外町くん!いいよ!可愛い!もっとつるの儚さ出して!』

『そこはもっと女の子っぽく!』

小さい声だけど教室のみんな黙って朗読を聞いてるから筒抜け。

外町は真っ赤になってセリフの多いつるを熱演している。




話は進む、街へつるから貰った布を売りにいくと思わぬ大金が手に入る

家に帰り、つるに売った金の報告をして香椎、外町班のパートは終わりなのだが。

その最後のシーン。


迫真の演技で身振りを交えて香椎さんは一際大きな声で叫んだ!


香椎『Money!!golden money!!!

This is fantastic!!

yeah!!!』

(金だ!!小判だ!!!

これは素晴らしい!!

イェイ!!!)


そこに貧しい青年が初めて手にした黄金に目がくらむ様、若さゆえの万能感、黄金を手にした野心を際限なく表現した香椎さんの姿があった。

あったのだが…



ドッ!!!!!

クラスは大爆笑に包まれる!

教科書はマネー、ゴールデンマネー!!だけなのにこの娘はまたアドリブを足した。

迫真すぎてたまらなく面白いのだ。

香椎さんはなぜ笑われたのか理解出来ていなかった。


『サンキュー、ミス香椎。

発音、演技ともパーフェクトでした!

でもね?アドリブ入れすぎ!

はい、続きを次の班!』



香椎班ほどのインパクトある班は無くって優秀賞は香椎、外町班が受賞した。


放課後の体育祭の準備中。


『ねえ立花くん、なんで英語の朗読劇であんなに私たちの班ウケたのかな?』


『香椎さんの男役が良かったんじゃない?』


(こんなのでも香椎さんの女優癖出るんだな?)


『男役…なるほど。』


この後香椎さんの提案があった。

男子が午前学ランで応援、午後は応援合戦で使用した衣装

女子は2種類衣装あるから午前、午後応援衣装でって予定だったんだけど、


『女子は午後着なくなった男子の学ラン着ても良いんじゃ無いかな?』


今回の紅組テーマは『傾け』と『コントラスト』

歌舞伎の語源になった傾奇踊りは出雲のお国って女性が男装して踊ったのが発祥で『傾け』ってコンセプトに沿った…って香椎さんの説明に皆納得する。

ノリノリな女子が多いが一部女子は男子の学ランに抵抗があるらしく着たく無いならそれはそれでよし!ってことで。

応援衣装可愛いから着てみたい!って娘も多いから学ラン着てる間は応援衣装余るし、着れる子も増えるて思い出になるよ!と香椎さんプレゼンは賛成多数で決まった。

一応サプライズ演出なので応援団内だけの話で秘密!って事になった。


さすが香椎さん!アイディア豊富って感心した。


□ □ □ □

学ラン着たい! side香椎玲奈


しめしめ、英語の朗読劇で承くんの男役がウケるでヒントを得た『女子学ラン』が応援団会議を通った。


これで合法的に承くんの学ランを着ることができる!


ふふふ。

ちょっと笑ちゃう。思い通りに進めるためには真意を悟られてはならない。


『じゃあ予定通り、体育祭園前日にクリーニング出した学ランをタンスから出して学校に持ってこなきゃだね?』


『暑そうだな…まあ応援団って言ったら学ランってイメージあるからなあ。』


承くんと完くんが話してる…。


!!!

そうか、まだ夏服だから学ランはクリーニング出した直後か?


『応援練習も気合入れる為学ラン着用を提案するよ!!』

(クリーニングしたての学ラン着たって承くんの匂いしないよ!)



えー?暑いよー!

いや、練習はよくない?

不満の声が上がるが私は気合が!で押し通す!

最終的には

『香椎さん気合入ってるな!たるんでたわ!』


と、男子は納得してくれた。

承くんがこの一連の流れに感銘を受けた表情で私を見てる…罪悪感がある…。



『じゃあ、誰がどの学ラン着るかだけど…』


正直に言うと私が承くんの学ランを着る!これ以外は割とどうでも…。


『じゃあ、私兄ちゃんの学ランで!』


望ちゃん?

あなたはいつでもお兄ちゃんの学ランくんくんできるでしょ?(微笑)


『うーん、サイズや待機してる椅子の場所あるから同学年同士にしてもらおうかな?』


『えー?他の男の人の学ランですかー?』


『立花さん、僕ので良かったら着て欲しいな!』


『うーむ、仕方ないか…消臭してね?』


望ちゃんの言葉に傷つく同級生。

(確かに、好きな子以外は嫌かも?)


『じゃあ!あたし立花の学ラン着るー!』


伊勢さん?

あなたはもう完くんに売約済みなのよ?


『伊勢さん!俺の着てくれないかな?』


『えー?!

完くんの?…わかった…。』

完くんの申し出を断りにくかったのか、歯切れ悪く伊勢さんは完くん学ランに決まった。



さっき応援団長の完くんに話を通しておいた時に、伊勢さんに着てもらうときっと可愛いよ?伊勢さんの匂いついちゃうかも。って言うと、完くん真っ赤になってお願いしてみる!って言ってた。


私はもちろん、


『じゃあ体育祭実行委員同士で、私は立花くんの学ランね?』


我が策成れり♪

みんなの為に私頑張るから少しだけ役得許して欲しいな!

準備は進み、いよいよ体育祭迫る!

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