親友でライバル ブクマ50人記念記念外伝【side小幡千佳】

いつも読んでいただきありがとうございます。

今日は玲奈と小幡と望の関係性と何故体育祭に必死なのか?って話しになります。

お付き合いください。


⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎


私の親友の香椎玲奈は完璧女子って呼ばれるほどの万能な女の子だ。

綺麗なのに笑うとすごく可愛い。文武両道で部活のテニスも県を勝ち上がり地方大会まで進出するほど。料理や演技など出来ることは幅広く、多才多芸である。


子供の頃からそばに居た私は最初は競い合っていたが小学生の高学年頃には玲奈が上だと思い知っていた。

私は可愛くは無いが美人系の顔で、玲奈ほどではないが万能ではあった。

よく真面目でクールなメガネキャラって言われる。

玲奈以外には負けない!って自負があり、事実玲奈以外の女子には負けていない。

この学年女子のナンバー2としてのポジションに慣れてしまっていたの。

玲奈と私が親友なのは間違いない。しっかりしていて賢い玲奈だが背負い込みすぎるのと意外に抜けてるところもあって私は放っておけなくって保護者のような気持ちですらあったのよね。



それでも私は玲奈のライバルだと自認していたし、周囲もそう捉えていた。

3年になり、玲奈はしきりに今年がみんなで競い合える最後の年!今年はイベント本気で楽しんでいく!って宣言していた。

確かにね?私もそう思った。みんなで盛り上げていきたい。

燃えてってなんか私のキャラじゃないって思ったけど盛り上げたいのは本心よね。クラスではクラス委員長だからクラスメイトにもその話をした。




テニス部では玲奈はプレーヤーとしてどこまでやれるか本気でやる!って宣言してあの世話好きな子が指導や部員のフォローは最低限に自己の鍛錬を優先している。私もそうした。


そんな中、今年の1年の新入部員に玲奈のお気に入りの立花くんの妹、望が居た。

私は基本後輩は苗字か名前で呼ぶので『望』と呼ぶの。

玲奈が望を可愛がっている。

珍しい、出来るだけ後輩は平等に扱うよう心がけている玲奈が?

玲奈は人気があるから贔屓すると虐められる可能性すらあるがそのことに気づかない玲奈ではない。



望はまだ1年ながらクールでフィジカルは優秀、プレイスタイルは玲奈に似ていて確かにかなり素質ありそうな娘だった。

負けん気が強く玲奈に負けても悔しがり、泣きそうになる様は将来絶対伸びると思わせる資質だった。

玲奈が連れているので必然的に私とも距離が近くなる。

帰り道途中まで一緒に帰ることもしばしばだった。

私と玲奈が話していると黙って聞いている。

時々玲奈は望に好きなこと言わせる。

それが玲奈は面白いらしく聞いては笑っているのだ。


最後の大会が控えた5月頃の帰り道。

玲奈がなんか思っていること言って?って望に言った。


『じゃあ失礼して。

なんで先輩たちは香椎先輩と試合する時1セット取っただけで満足するんですかね?1セットなんて通過点で勝ちに直結してなく無いですか?』


私は答える

『玲奈は強いからね…1セット取らなきゃ勝てないし、1セット取れなかったのが取れたら進歩って思うからじゃない?』


『でも、点差がつくとそのセットすぐ捨てて、次のセットに照準絞るじゃないですか?あれ見てて気持ち悪くないです?』


『まあ、すぐ諦めるのはいただけないけど、勝つためにそのセットを捨てることもあるんじゃ無いかしら?』


『私子供で負けず嫌いなんでそこがよくわからないんですけど。

勝つために捨てるのはまだわかるんです、スタミナを消耗させるとか、手前を意識させるとか。

捨てたからって次有利になるわけじゃないですよね?だったら打ち合った方がよく無いですか?手の内知られるのはお互い様なんで?手の内知られなきゃ勝てるなら前のセット取れてますよね?』


『うーん、まあ言いたいことはわかるけど…。』


『兄ちゃんが言ってることなんですけど試合終了のホイッスル鳴るまでは何点勝ってようが何点負けていようが死ぬ気でただ点を奪い合うものだって。

それまでは点数なんてただの数字。

勝ってるから負けているなんて数字だけの話で試合終了まではたまの取り合いだって躾けられてきたんですけど。』



玲奈は横でけらけら笑っている。


『玲奈が気にいるわけだわ?この娘立花くんを尖らせたような娘よね?』


『価値観がね?立花くんと一緒なの!漢なの!』


『あんなに熱血してませんよー!』


『あなた武士みたいなのよ?』


望は驚いた顔で私を見返した。

そんな感じで私も望を気に入ってしまった。



歯に絹着せない直情的な物言いは清涼感があり、気使って機嫌をとってくる後輩たちより望は信用できると思わせた。



最後の大会迫る6月、出場する部員は最終調整に余念がない。

部員同士で試合形式で仕上がりを確かめるが玲奈は黙々と1人で仕上げる。

これも見慣れた光景だった。

玲奈は全ての技術やフィジカルで上回ってどこか崩したら一気にそこから畳み掛けるスタイル。バランス良く満遍なく強い!

それだけに玲奈相手にすると負担が多く、調子を崩す為大会前に調子やフォームを崩したくないから必然1人で仕上げることが多い。


そこへ望が話しかけて試合形式で2人でやり始めた。

当然、玲奈の敵では無いが入学当初と段違いに望は強くなったのがわかる。

点差がついても、不利でも食い下がる。熱い試合。点差がついてどっちが強いか見てわかってても望の闘志は衰えない。

試合が終わり玲奈が望に握手を求め、悔しい望は渋々握手するが負けに苛つきを隠さない。


(私、いつから玲奈に負けても悔しくなくなったんだろう?)


私はもやもやしていた。玲奈と試合すれば負けて調子崩すから大会前はやらないって自分の発想にゾッとする。


その日の帰り道。

私はまた望がどう思っているか聞きたくなった。


『望、なんか思ってる事言ってみなさい?』


『はい!先輩たちは香椎先輩と大会前の調整で試合したがらないんですけど、あれ意味あります?

強い奴とやっといた方が良く無いですか?大会では去年ベスト4の香椎先輩より強い奴と当たる可能性の方が少ないですよね?折角同じ学校に強い奴いるのに!』


強い奴!先輩に向かって強い奴呼ばわりはダメだよ!

玲奈はすっごいウケている。


『玲奈とガチでやるとスタイル的に全能力をフルで神経すり減らしながらの試合になる上で負けるから調子を崩すのよ…。』


『全能力をフル使用で精神すり減らすから鍛錬になるんじゃ?私だってかなり鍛えられましたよ?』


そうだね?笑いながら玲奈は聞いてる。


『調整に向かない相手なの!』


『じゃあ香椎先輩は誰と調整するんですか?今日見てたら誰も相手しないから私が名乗り出たら香椎先輩超嬉しそうでしたよ?』


私嫌われてる…玲奈は芝居かかった様子でよよよって泣き崩れた。


『…。』


『…私思ってるんですけど、小幡先輩って香椎先輩のライバルじゃ無いんですか?なんで勝負しないんです?』


冷や水を浴びせられた気分だった。

望は続ける。


『私も親友のライバルが何人かいますけど笑って泣いて喧嘩して毎日勝負してるんです。』


『…。』


望はグイッと踏み込んだ事を言う。



『負けるのに慣れちゃったんですか?』



『望ちゃん!!』

玲奈が慌てて止める。

私は続きを促す。


『望、続けて?』


『えへへ!小幡先輩ならそう言うと思ってました!

親友でライバルって特別ですよ?勝負しなくなったら香椎先輩が寂しいですよ!

香椎先輩にこの学校で勝てる可能性がある女子は小幡先輩だけでしょ?

私は悔しいけどまだ勝てない!だから一緒に香椎先輩倒しましょうよ!』


『あなた学年に敵多いでしょ?』


『はい!みんな倒して、今はライバルで親友です!』


『少年マンガみたいに生きてるのね?』


『そうゆう友のが信じられるんですよ?兄ちゃんと青井くんだって河原で対決して…あ!DVDありますよ!観ます?』


『それ観たわ。…っていうか出演してるわよ…。』


『でっかい三角定規ですよね?あれ最高でした!』



ふふー!って玲奈の真似をして望は笑った。

玲奈は横で本当に楽しそうに聞いている。

なんで私は玲奈に挑まなくなってしまったのだろう。

玲奈はそれをどう思っていたのだろう?

望に良いように煽られてしまったが私の胸に火が宿る。

まずはシングルス勝ち上がりたい!勝ち上がれば決勝で玲奈と当たるかもしれない!

次の日から玲奈に似たスタイルの望を酷使してトレーニングに励む。

玲奈とも試合を何度もする、でも勝てない…。

また調整に似たスタイルの望を使う、さすがに文句を言うがハーゲンダッツで黙らせる。



大会が始まる。

私は地方大会へ行けるベスト4の手前の4回戦で敗れた。

玲奈は県を制して地方大会へ進出した。


これが差なのかな?悔しい。

私、玲奈のライバルなんて名乗れない…。





夏休みに入り、受験勉強を毎日こなす。1学期少し勉強を教えた青井くんは立花くんと完くんと勉強しているらしい。

なんか1人はつまらなくって青井くんに勉強教えてあげれば良かったかな?なんて思ったりもした。

部活の無くなった日々は退屈で玲奈はどうしてるか思いを馳せる。

そんなある日、地方大会へ玲奈の家族が応援に行くというので一緒に来る?って誘われた。

気分転換になるかな?って思い、望も誘われたらしく香椎家のワンボックスカーで隣県へ出発した。


顧問の女性教員も合流してみんな揃った。玲奈ママ、玲奈姉、玲奈、私、望、先生の6人。

。明日から勝ち続ければ最大3日の日程。

前日入りして調整する。

当然、私と望が調整の相手。玲奈は仕上がっていた。

試合は玲奈が勝ち上がり、準決勝で敗れ、3位決定戦でも敗れてしまい4位だったが誇って良い戦績だった。全国大会に出場資格も得たが玲奈は最後2敗したことに少し苛立っているのが見えた。


望はハイレベルな攻防に色々インスピレーションを得たらしく、すぐに横にいる私に質問してくる。その姿勢がただただ眩しい。

帰り道、玲奈は車内でぐっすり眠っている。


『望、あなたのテニスでの目標ってなに?』


『今日決めました!香椎先輩に勝つ事!!』


『そう。叶うと良いわね?』


『?

小幡先輩は?』


『私は…なんだろうね?中学テニスは終わったしね?』


『小幡先輩最近しんどそうですね?』


誰のせいよ?と思いつつ、

『後輩に煽られて火がついたけど、もう勝負することはできないもの。』


『あは!勝負すれば良いじゃないですか。』


『わかってるわ、高校生になってもテニス続けて玲奈に勝つわ!』


私は望に言い切った。これでこの話題は終わると思った。

私の回答も特に誤りは無いはずだし。

しかし望は言った。






『兄ちゃんの受け売りなんですけど、


いつかなんて日が来るんですかね?挑まない者のカレンダーに?』




『なっ?!』


私は驚いた、あの地味な男子だと思ってた立花くんは家でどんな漢なんだろう?

どんな教育を妹にしているのだろう?



『そりゃあ続けてれば何回か対戦することはあるでしょうね?

でも、勝ちたいなら今挑戦しなきゃいけないんじゃないですか?

挑戦しなくなったらもっと先に先に香椎先輩は行っちゃいますよ?

第一先輩が勝ちたいのはいつかじゃなく今でしょ?』



『あなた…煽るのうまいわね?』


『ふふー!私は先輩たち大好きなんですよ?だから本当に勝ちたい!

いつか香椎先輩に勝ちたいし、小幡先輩にも勝ちたい!

夏が終われば、香椎先輩のこだわってる体育祭と文化祭があるじゃ無いですか?まだ勝負は終わってないですよ!』


『!!

そうね?負けっぱなしってわけにはいかないわよね?』


『そうですよ!先輩、一緒に香椎先輩倒しましょうよ?』


『私が一番知ってるけど、玲奈はモンスターよ?』


『モンスターは退治しなきゃですよね?』


『まだレベルが足りないわよ…!』


私の胸に炎が宿る。この煽る後輩の煽動に乗ってやろうじゃないの!

私1人で勝てなくても、望やクラスメイトと一緒なら!

玲奈の1組に比べ私の3組は突出した人は居ない、でもまとまりならうちの方が絶対に上!


『望、あてにしてるわよ?』


『任せて下さい!

1年女子では私は最強クラスですよ!』


『ところで望、あなた3組なのよね?』


『え?1組ですけど?』


『敵じゃない!!

しかも玲奈と同組!!』


『え〜?!』


『散々煽っておいてこの娘は!』



ふたりの間になんとも言えない空気が流れた。


玲奈は全国大会では1回戦で敗れた。私は遅く申し込んでた短期夏期講習が始まり応援には行かなかった。


新学期になればまた会える、体育祭で競い合える!

千佳は体育祭を待ち侘びていた。

怜奈に勝ちたい!それだけを胸に3組の女王は体育祭の準備に全てを注ぎ込む。

負けっぱなしじゃ終われない!

悲願の勝利に向けて千佳はクラスを鼓舞し続ける。


⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

千佳と望と怜奈のテニス部の話しでした。

お付き合い頂きありがとうございます。



もし良ければ感想、レビューお願い致します!



明日はpv5000記念で引き続き小幡千佳視点です。

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