第99話 ラーメン大好き女子【side伊勢成実】

あたしは派手に見られるけど男の子とお出かけしたことが無い。

だって好きな男の人以外と出かけて何かあったら困るじゃん?

だから何を気をつけたらいいのかわからない。

揶揄われるだろうなあって思いながらギャル友達に相談すると、


『成実は実際乙女だからねー?』

『ピュアピュアだよね?』


好き放題言われる。まあ確かにそうなんだけど…。

ギャル友達は立花くんならあまり派手じゃない方がいいんじゃない?

話題考えておいた方がいいよ!長く居て苦になるなら早めに切り上げるのも手だよ!ってアドバイスくれたよ。

10時に駅で待ち合わせ。同級生が2組5人居た。


成実しげざねさんちーっす!』

『おでかけー?』


あたしは答える、

『立花と応援団で使う布買いに行ってラーメン食べるー。』


『え?立花って香椎さんに3回告ったんでしょ?』


(もう知られてるんだ?)


『別に応援団の仕事だから関係ないよー。』


待ってると立花が来た。


半袖の青いシャツの下に柄ものTシャツ。チノパンにスニーカー。夏っぽい爽やかな服装で立花っぽい。


私は薄いグレーのミニスカートワンピにしっかりした黒いサンダル。ワンピの上に同色の透け感のあるシャツを羽織ってる。脚長く見えない?


『伊勢さん!お待たせ!』


『今日も暑いねー!ラーメン日和!』


『ラーメンは年中、日和だよ!』


他の同級生も巻き込みながらみんなで電車に乗って街へ向かう。

駅に着くとまたねー!って別れて立花と早速布を買いに行く。

今回の応援団テーマは完全に立花の趣味で『姫と武将』なんだって。

赤組だから赤を中心に見て、言われた面積の量の布を購入するこれ位?

立花のおばあちゃんが和裁が上手い人らしく、明日から立花家と学校の被服室で作成を開始する予定なんだよね。


予定していた金額分、布を購入して11:30頃混み始める前にラーメン屋さんへ着いたよ。

久しぶりのラーメンにウキウキ、立花と一緒だから尚更!

さすがに休日、少し並ぶ。


立花と待ち合わせ場所からずっと話しているけど話題は尽きないんだ。

他愛もない事、家族の事、友達のこと体育祭のこと、なんでも立花に話しちゃう。


『金曜のHRは大変だったねー?』


『いやいや、香椎さんが普段頑張ってたからでしょ?俺はちょっと協力しただけ!』


『周り敵だらけなのに噛みついてるから見ててヒヤヒヤしたよ!』


『まあ、実際怖かったよね?』


でも、立花は誇るでもなく、自慢するでもなく自然だった。


(あたしなら怖くて何も言えないよ…。)

見た目は派手だけどビビりなあたしは本当にあの立花の姿勢を尊敬してる。

もしあたしが香椎玲奈の立場だったらどんなに立花に救われただろうって思っちゃう。


『香椎玲奈は良いね?立花に守ってもらえてさ!うらやま!』


成実しげざねさんがピンチでもきっと同じようにするよ?』


『なっ?!』

あーしは耳まで赤くなってしまう。こいつこうゆうとこあるよね?

本当にそう思ってるだろうところがたちが悪い!


『立花はさ、香椎玲奈が好きなんだからそんなこと他人に言っちゃダメっしょ?』


『なっ?!』

あーしと同じリアクションで同じく耳まで真っ赤になった立花を見て可愛いなあって思うのと、香椎玲奈が妬ましい。

あんなに恵まれていてなんで?

あの頃からいつも思う、あたしの欲しいものみんな香椎玲奈のとこへ行っちゃう。

でも、立花は真面目で良い奴だから私の気持ちは負担になる。

私は自分の気持ちに蓋をする。


私たちの順番が来て、テーブル席に2人で座る。

立花はラーメンセットの大盛り、こってり。

あたしはラーメン普通に煮卵、岩のりトッピング。


少しすると出てきた!うまそー!

2人はピタッと会話は止まり無心にラーメンを啜る。

(美味しいなあ、近所にお店あれば!)


立花を見ると幸せそう(笑)

立花と目が合うと目で笑ってくれる。

あたしはまた赤くなっちゃう。

(香椎玲奈とならきっとラーメンなんか食べに行かないんだよね?)

ラーメンなんか誘ってくる下品な女って思われてたら嫌だな…でも立花だからそんな悪いふうに思ってはないかな?


そんなことを思ってると、


『成実さんが一緒にラーメン食べてくれる娘で良かった!

よく女の子がこうゆうとこ好まないって聞いたから俺に合わせて無理してるんじゃない?って心配だったんだ。』


『あたしラーメン大好き!まあ確かにデートでは微妙っていう子は多いかも?』


『でしょ?宏介に言われたんだ、女の子にラーメン?人を選ぶよ!って。

俺、もし付き合うならたまにラーメン付き合ってくれる女の子が良いなあ!』


『…あーしだったらいつでもラーメン付き合うけど…』


きっと立花はあたしの言葉の意味をわかってない。


『本当?嬉しいなあ!ラーメン食べてダラダラ喋ってるだけで超楽しい!

また付き合ってね!』


『うん。』


立花は嬉しそうに笑った。

あたしはその笑顔が大好き。



その後は立花が本見て、あたしがアクセ見て、クレープ食べた!

クレープ食べながらさっきのアクセ屋さんで見たシュシュと腕につけるバングル、髪束ねるリボン的なもののうちどれ買おう?って思ってた。

髪止める、腕につけるでシュシュは兼用できるから1つはシュシュにしようかな。

まだ暑いしバングルはいいかな?髪止めるやつ買おうかな?二つ結びとかしたいし。

アクセ屋さんに戻り、シュシュと髪束ねるリボン的なものを買う。立花がお金出そうとしてたけどラーメンとクレープ奢って貰ったから断ったんだ。

店員さんが包んでくれてる時に髪紐が目に入った。

(あ、あの髪紐に似てる?)

外伝 成実と玲奈の仲違い参照。


あの髪紐は和柄だったけどこれはスパンコールが入ったキラキラしたピンクの髪紐。派手可愛いな。


『すいません、これも下さい!』


立花が横から店員さんに声をかける。


『いいよ!ちょっと見てただけ!』


『え?絶対欲しいって顔だったって!いいから!

俺けっこう成実さんのことわかってるつもり!

今日のお礼!!』


お礼を言いたいのはあたしの方なのに!

髪紐も立花の言葉も嬉しくってあたしは帰り道ニコニコしっぱなし!

きっとギャル友達にこの話をしたら安い女!とか乙女!とか言われる。

でもそれでもいいじゃん!これはあたしの気持ちだもん!


家の方向が同じだから途中まで一緒。

最後に進路の話をしたよ。


『俺は東光高校を受験するんだ。』


『あたしも公立は東光だよ。本命は私立の麗䕃れいいん女子受験するんだ!』

麗䕃女子は県内では有数のお嬢様女子高校。偏差値は58程度ではあるが非常に厳しく、不祥事や異性関係、身だしなみなどですぐに停学、退学処分になる怖い学校だがそれだけに非常に評判の良い高校でもあり、不祥事起こすとOGが詰めるなんて噂があるくらいのきちんとした女子校。


『そっかあ、成実しげざねさんと東光行きたかったかも。』


(あたしも行きたかったかな?ギャル友達ともう約束してるし仕方ないよね?立花と一緒の高校生活…楽しいだろうなあ…)


東光滑り止めだけど公立が先に受験だから、初の受験を立花と一緒にできるのは心強い。

そっかあ、あと半年でこの関係も終わっちゃう。

特別な縁が無ければ高校進学で繋がりは切れてしまうだろうなあ。


『あたし麗䕃行ったら清楚ギャルにクラスチェンジするよ!』


『清楚ギャル?!』


立花は初めて聞いたのか驚いていた。

きっと清楚ギャルの方が立花好みじゃない?

もし…縁があれば、もう少しお互い大人になった頃再会したらどうなるのかな?そんな馬鹿な妄想しちゃう!




立花の家に寄り、布を置いて、明日からお世話になるばあちゃんに挨拶して帰ろうとすると、



『あ、成実しげざね先輩!いらっしゃいです。』


妹ちゃんの望ちゃんと小さい男の子が帰ってきた。

え?可愛い!立花そっくり?!すご!かわ!


『初めまして、伊勢成実だよ!』


『たちばなひかうです!3歳です!』


『光。ひーちゃんって呼ばれてるよ?』


可愛い…抱っこしてもいい?

断って、ひーちゃんをそっと抱っこさせてもらった。



『あたしはひーちゃんのお兄ちゃんの友達なんだよ?

なるみちゃんって呼んでね♪』



ひーちゃんはあたしをまじまじと見た後あたしのおっぱいをぽよんぽよんと触って言った。



『おっぱいちゃん!』



立花は見てて申し訳ないほどあたしに謝った。

望ちゃんは気持ち良いほど笑ってた。


『じゃ明日からよろしくお願いします、おっぱい先輩!』


『やめて!』

    

望ちゃんの性格もなんかわかった気がする。

家に帰り、買ってもらった髪紐で髪をまとめる。

ふふ!あの髪紐は手に入らなかったけどきっとこの髪紐を手に入れるために必要だったんだって思った!

あの仕舞いっぱなしだった緑の髪紐も今度使ってみよう。

今日は楽しい一日だったよね!ありがと、立花!

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