第95話 君の想い【side香椎玲奈】
※93話、94話の香椎さん視点になります。
今日のHRで立花くんと不参加を表明するみんなへ最後の説得を試みると中立の子たちに話をしていた。
私がまず話して一度退場して承くんが煽ったり情に訴えたりしていいところで私が締める!って段取りなんだけど大丈夫かな?
承くんは。
『俺多少オーバーに話すし、少し嘘も入れるけどなんとか口裏合わせてね?』
(何をいうのかな?嘘とか嫌いなはず?)
HRで外町くんがリレーのアンカーを承諾してくれた流れで、不参加表明してる、敵対してる子たちに私は必死に呼びかけた。
私はどこか思っていたんだ。
私は正しいことをみんなのために言っている、聞いてさえ貰えばわかってもらえるはずだ!って。
でも
『良い子ぶりやがって!男おもちゃにしてんでしょ?』
『そんなにみんなに良い顔したい?』
『八方美人ビッチ!』
『男好き!』
それでも耳を傾けてさえ貰えば真心は伝わるはず!だってつい数日前まで仲良くって、班組んだり、休日お買い物行ったり、信頼してる子たちだったんだから!って。
私を見る承くんが辛そうだけど、私は大丈夫!私の方がこの子たち知ってる!だから!
二村さんは、
『あんたの話なんて私聞かない!』
ショックだった。私の言葉は彼女に届かない。正しいだけじゃダメなんだ…私わかってなかった。でも、色々思い出もある二村さんにキツイ事は言えない。
私の力が足りない…。
『…そっか…。』
自分の意思とは裏腹に涙は止まらない。一度退場する段取りだけど関係無く私はここに留まれない。教壇の横で聞いてた承くんにお願いして教室を出る。
私は教室を飛び出した。
すぐそこの蛇口で手を洗い、冷たい水流で手を流してると少し頭が冷える。
(承くんが戦ってくれてる、すぐに戻ろう。)
承くんは本来この騒動に関わりない。
体育祭の不参加だって私憎し!って敵対グループの仕業で私に潜在的に敵が多かったのに油断したことが原因、承くん大丈夫かな?
そもそも承くん弁が立つのかな?
見返りも要求せずに黙って1番しんどいとこ引き受けてくれる優しく、頼もしい私の武将、そんなイメージ。
急いで戻ってドアの前に立ち、教室の中に聞き耳を立てた。時々ガラス部分から横顔を確認する。
お守り代わりにもらった栞をさわりながら。
承くんが二村さんと大声で話してるのかな?
『じゃあさ、例えば仮に俺が二村さんやフラれた君に、クラスでプールに行ってさ、夕方に
好きです!って見た目や性格や、エピソードトーク交えて求愛したとするよ?どう答える?』
『『ごめんなさい?』』
(これからずっと一緒だよね?って答えるかな?
いいなあ、求愛して欲しい…。)
それどころでは無いんだけどね?そんな事思っちゃった。
承くんは続ける、
『まあ仕方ないよね
でもその直前に仮に仮にだよ?
俺を好きな娘が居て、俺に告ってたとする。
まあ俺を好きな位だからあまり趣味は良くなくって美人じゃないかもしれない。
でも一生懸命告白してくれて、俺はその子に勇気をもらって告白したんだ。』
(例え話でも不愉快だなあ…!私の趣味が悪くて美人じゃないって!
例え話なんだからもうちょっと良い娘設定してもよくない?)
『俺に告った子が二村さんたちを『立花が一生懸命告ったのに!』ってキレて突っかかってきたら面倒じゃない?』
『まあ面倒だね。逆恨みみたいなもんだよね。』
『仕方ないでしょ?って感じ。』
『そうだよね、急に告られてごめんなさいしただけで…ねえ?』
(ああ承くんは、私の対応は当たり前でよくある話だからここまでするのはおかしいと皆にアピールしてるんだ)
もう少し色々話しているが語気が強まる!
『それだけのことって何よ?二村さん大して知らない男から告白されて断ったらクラスの大半にハブられても文句無いの?好きじゃないなら断るでしょ?
香椎さんもそうだよ、断ってんのにビッチだ男好きだってなに?
彼だって傷ついてって誰だってフラれれば傷つくし、香椎さんだってフルたび申し訳ないって傷ついてるよ?今までフッた人に義理立てて中学卒業まで絶対誰とも付き合わない!って宣言してるくらい。』
普段は表に出ない承くんの『熱』。それが前面に出ている。
ごめんね、本来人と争うなんてしたくない人なのにね…。
『そもそもそんなキレ方して昨日まで仲良かった友達、クラスの為に健気に頑張る良い子をハブって、ビッチとか男あさりとか寄ってたかって罵倒する女の子なんて誰も惚れないよ?』
はっとして思いびとを振り返る2人。
『自分の行動見て見なよ、それでも香椎さんは君らに謝って、仲直りしたいっていつも言ってるよ。自分がされて嫌なことは人にしないって習ったでしょ?
寄ってたかって言葉のナイフ突き刺して、黒ひげ危機一発なら香椎さん飛び出してるよ?』
『…そのツッコミ小6のサッカー試合負けた時聞いたわー。』
(突っ込みに突っ込まれてる方がダメージ受けてる!承くん可愛いなあ。)
皆を見渡して声を高く宣言する。
『俺は今のクラスの状態が本当に気持ち悪い!
なんなの?協力しないなら、端っこで黙ってたら良い。
香椎さんの優しさに甘えてなんでも押し付けやがって!お前ら恥ずかしくないの?』
嬉しいな、好きな人が自分を信じてくれるだけでこんなに心は強くなる。
好きな人がクラス中を敵に回しても私を守ってくれる。
お姉ちゃんが言ってた、
『男が『君を守りたい』とか言うけどこの時代に早々守られなきゃいけないような事ってそんなには無いよね?経済的以外で何を守るつもりで守るって言うんだろう?セ⚪︎ムなの?異世界転生でもすれば物理的に守ることもあるだろうけど?
実際痴漢に会ったってすぐには来てくれないんだから!』
って言ってた。お姉ちゃん男性に『君を守る!』って言われてそれに対する嫌な思い出でもあるのかな?
私も確かに何を守るんだろうね?って言った。でもね?
(守られてるって感じる、すごく心強い。)
承くんは大きく息を吸い込む。
『文句あるならかかってこい!』
(大丈夫?煽りすぎじゃないの?)
室外で聞いてて私はハラハラしっぱなし。
ほら!クラスのみんな怒ってるよ!
『恥ずかしくないのかよ!』
『恥ずかしいよ!!俺は言う通り陰キャでぼっちだからさ、
こんなみんなの前で自分の意見言うのは恥ずかしい!!』
『恥ずかしいなら黙って引っ込んでろよ!
香椎さんならともかくお前じゃ話なんね!』
『俺は恥ずかしがり屋なの!
でもさ、お前らは何なの?
よってたかって1人の女の子に言いがかりつけて!ハブって!
頑張ってる娘を笑うことより恥ずかしい事ってなんなの?!
言ってみろよ!今日頑張ってるクラス委員長の娘をみんなで辱めて笑ってハブってやったら泣いてた!って家族に言えるのかよ!』
『ウルセンだよ!恥ずかしがり屋なら恥ずかしがって隅にいろよ!』
承くんはキレながら返す
『恥ずかしがり屋でいいよ。恥知らずよりは!
俺はそんなにはなりたくない!』
(承くん…!)
承くんは何を言われても一歩も引かずに正面から言い返す。
普段の彼とは全く印象が違う。
女子もやじる。
『香椎が好きだから庇ってるんでしょ?だっさ!!
そんな必死になったってお前じゃ付き合えないよ!』
(そんなことないよ!)
私はムッとしてしまう。余計な事言わないで!
『鏡見ろ!』
『月とスッポン!』
『身の程知らず!!』
(好きな事言って!承くん言い返して!!)
そう思いながら聞いていると、
『ああ!好きさ!俺は香椎玲奈が好き!!
子どもの頃からずっと好き!!
でも無理なこと位、百も承知だわ!』
ええええええ?!
好きって!好きって!好きって言ったよ?!
みんなの前で?!みんなの前で宣言しちゃったよ?!きゃー!!
思っても見ない告白に私はオーバーヒート!
顔が火照り、心臓が暴れて、喉が渇いてきた…。
きっと今漫画だったら私の目はグルグル🌀な感じになっているかも?!
ざわっ!!!!教室もざわめく。
『むしろ全く好きじゃない奴いるの?!
あんなに綺麗なのに笑うと可愛くて、勉強、運動、ピアノ、演じるなんでもできて、みんなの事に一生懸命で、料理やお菓子もすっごい美味しく作れて、時々抜けてる、最高じゃん!
俺、香椎さんの事が好き!!』
(あばばばば!?
録音?録音しゅりゅ!早く、早く!!
ワンモア!ワンモアプリーズ!!!!)
私は慌ててなかなかアプリを起動できない!
『私らじゃなくて本人に言え!』
『月とスッポン!』
『きんもー☆』
『でもみんなの前で宣言するって男らしい!』
一部女子から好意的な感想。わかる!
男らしいって結構ポイント高いよね?
『でも!ダメだった!3回告白したけど、ダメだった!』
(…は?…一度も告白してもらった事無いんですけど?)
スンってテンションが戻った。
(あ、これ事前に来てた『嘘』の部分かな?でもさっきの『香椎玲奈が好き!』が嘘だったら私もう死んじゃう…。
さすがに…そこじゃないよね?嘘の部分?要確認だよ!)
『えー無理目でしょ?』
『3回告るんはさすがに空気読めなさすぎ…』
『えー?情熱的じゃん!』
『尊敬するわw』
みんなの反応はさまざま。
『そんな俺が言う、香椎さんは本当に良い子なんだよ、知っての通り献身的で健気で!俺だって多少下心あったさ、誰も味方いない今なら俺を少し見てくれない?って。
でもね、香椎さんの口から出るのはいつもみんなの事だったんだ。』
承くんがいかに私がみんなを思ってきたか力説する、前にフってしまった3人もそれを援護してくれる。
クラスの反応が少し変わってきた。
『まあ確かに良い子なのは…』
『いつも頑張ってるのは知ってる。』
『え?香椎さんが悪いんじゃないの?』
(承くん、すごい!熱で流れを力ずくで引っ張ってる!)
承くんがみんなにもう一段声を上げて呼びかける!!
『おまえら、香椎玲奈のことを考えたことがあるか?
みんな、勉強できる、運動できるとか完璧女子とか思ってるかもしれない。
すごい娘でなんでも出来て、リーダーだって。
それはそれで良い。
でもさ…。』
ざわざわはしてるけど皆んな聞いてくれている。
『あえて言うことではないよ!
でも1人の中3の女子なんだぜ?
考えてみろよ!子供の頃から優秀で気遣いができるからって皆に担ぎ上げられてクラス委員長やりながら色々なことを押し付けられて、すぐ頼られて…毎日めっちゃ大変そう!
ところがだ!それなのにこの状態だ!
あんなに頑張ってちょっとしたことでこの仕打ちだぞ?
これはたまらんぜ!!』
承くんは大きく身振りしながら高らかに語る!
『よーく耳を澄ましてみなよ?
はっきり聞こえるだろ?香椎玲奈の悲鳴がさ!!
おまえらに『義』の心はあるかい?
胸は痛まないか?!』
みんな承くんに注目している。
『今まで香椎さんに少しでも助けられた!とか頑張ってるな!とか偉いな!とか感じたことが一度でも無いか?
後から自分ださいことしたって思い出したく無いだろ?
それなら、今泣いて飛び出して行った香椎玲奈を助けてやりたいって思わないか?!』
教室は静かだった。
ここまでの承くんの『想い』に『熱』に私は言葉より涙が溢れてくる。
こんなに想ってくれてたんだ、言葉もない。
ハブられた初日、承くんが私を甘やかしてくれた時、私を『月』に例えていた。
今、私わかった。
私にとって例えるなら承くんは『星』。
燦々と光輝く
暗い夜、どっちへ行って良いかもわからず泣いてる私に帰る方角を指し示す『星』。
暗い夜道を勇気付ける我慢強い何万年前からの光。
そんな私の『お星様』。
こんなに君が好きなことが誇らしい。
妹の望ちゃんが
『本人には言わないですけど、
兄ちゃんはダサかっこいいんですよ?』
わかる気がするって思ったけどダサ要らない。
君のお兄ちゃん格好いいよ!私のここまでの15年の人生の中で一番!
そして承くんの熱い言葉に次々と私を支持してくれると名乗りを上げるクラスメイトたち。
敵にまわった子たちも次々私を支持すると宣言してくれる。
ここが勝負どころ!
顔は赤く、涙も止まらないけど私は教室へ飛び込む!
私はまた教壇に立つ。承くんははそっと横から見守ってくれる。
私も声を上げる!そしてみんなに頭を下げて私はみんなにもう一度お願いした。
そして二村さんを初め敵対した子一人一人手を取って話しかける。
二村さんは泣いている。
私は黙って抱きしめた。一条さんがそれをさらに抱きしめる!
(二村さんも辛かったんだよね?この件はもうこれでおしまい!!)
外町くんにも握手を求め、外町くんも協力すると約束してくれた。
承くんのおかげでクラスの亀裂がつながった瞬間だった!
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