第94話 火を吹く!
※前回に引き続き承くんが語る暑苦しい回です。
俺も人を煽る才能あるのかもしれない。
『文句あるならかかってこい!』
とクラスを煽ると…
『陰キャが舐めんな!』
『マジ調子乗ってるー!』
『ぷーくすくす!!』
『必死!』
さまざまな反応が返ってくる。
『恥ずかしくないのかよ!』
ヤジられる。
『恥ずかしいよ!!俺は言う通り陰キャでぼっちだからさ、
こんなみんなの前で自分の意見言うのは恥ずかしい!!』
『恥ずかしいなら黙って引っ込んでろよ!
香椎さんならともかくお前じゃ話なんね!』
『俺は恥ずかしがり屋なの!
でもさ、お前らは何なの?
よってたかって1人の女の子に言いがかりつけて!ハブって!
頑張ってる娘を笑うことより恥ずかしい事ってなんだよ?!
言ってみろよ!
今日頑張ってるクラス委員長の娘をみんなで辱めて笑ってハブってやったら泣いてた!ってお前の家族に言えるのかよ?!』
『ウルセンだよ!恥ずかしがり屋なら恥ずかしがって隅にいろよ!』
俺はキレながら返す
『恥ずかしがり屋でいいよ。恥知らずよりは!
俺はそんな奴にはなりたくない!』
やっとそいつは黙った。
今度は女子が罵ってくる。
『香椎が好きだから庇ってるんでしょ?だっさ!!
そんな必死になったってお前じゃ付き合えないよ!』
(わかるわ!それくらい!!)
『鏡見ろ!』
『月とスッポン!』
『身の程知らず!!』
すぐに返す!
『ああ!好きさ!
俺は香椎玲奈が好き!!
子どもの頃からずっと好き!
でも無理なこと位、百も承知だわ!』
ざわっ!!!!
俺の好き宣言にクラスにちょっとざわめき。まあ俺じゃあこんなもんよね?
『お前じゃ無理だ!』
『やけくそすぎ!』
香椎さんに多少嘘つくかもだけど適当に口裏合わせてって頼んだけどこれ大丈夫だよね?
『むしろ全く好きじゃない奴いるの?!
あんなに綺麗なのに笑うと可愛くて、勉強、運動、ピアノ、演じるなんでもできて、みんなの事に一生懸命で、料理やお菓子もすっごい美味しく作れて、時々抜けてる、最高じゃん!
俺、香椎さんの事好きだよ!!』
やけくそだよ!
『私らじゃなくて本人に言え!』
『月とスッポン!』
『きんもー☆』
『でもみんなの前で宣言するって男らしい!』
一部女子から好意的な感想。
『でも!ダメだった!3回告白したけど、ダメだった!』
でっち上げだよ。すまん。
一瞬シーンとする。いや、やめて?
『えー無理目でしょ?』
『3回告るんはさすがに空気読めなさすぎ…』
『えー?情熱的じゃん!』
『尊敬するわw』
恋愛トークっぽくなったことで俺包囲網が少し緩和された。
俺の香椎さん好き宣言、からの3回告って断られたというスキャンダラスな内容がちょっと今回の事件からみんなの目を逸らした。
『そんな俺が言う、香椎さんは本当に良い子なんだよ、知っての通り献身的で健気で!俺だって多少下心あったさ、誰も味方いない今なら俺を少し見てくれない?って。
でもね、香椎さんの口から出るのはいつもみんなの事だったんだ。』
続ける。
『フった3人が本当は敵対してる人に近いのに中立保ってるけど大丈夫かな?って俺、香椎さんの伝言伝えに行ったよね?』
フった3人に問いかける。
『聞いた!』『香椎さん、自分がハブられてるのに心配してくれた。』
『俺はフラれたけど香椎さん好き!』
俺も言う。
『気持ちわかる!な?フラれたけど誇りなんだよ!』
クラスの反応が少し変わってきた。
『まあ確かに良い子なのは…』
『いつも頑張ってるのは知ってる。』
『え?香椎さんが悪いんじゃないの?』
ここが流れの要になる!好きな『蒼天航路』の劉備が気を吐く演説をイメージする。
ほら吹きからだんだん器の大きな英雄へと成長していくあの大気者をイメージ!
傾け、傾け!傾くなら傾き通せ!
みんなにもう一段声を上げて呼びかける!!
『おまえら、香椎玲奈のことを考えたことがあるか?
みんな、勉強できる、運動できるとか完璧女子とか思ってるかもしれない。
すごい娘でなんでも出来て、リーダーだって。
それはそれで良い。
でもさ…。』
ざわざわはしてるけど皆んな聞いてくれている。
みんなの注目が俺を萎縮させる。
(気持ちで負けるな!)
自分を鼓舞して続ける。
『あえて言うことではないよ!
でも1人の中3の女子なんだぜ?
考えてみろよ!子供の頃から優秀で気遣いができるからって皆に担ぎ上げられてクラス委員長やりながら色々なことを押し付けられて、すぐ頼られて…毎日めっちゃ大変そう!
ところがだ!それなのにこの状態だ!
あんなに頑張ってちょっとしたことでこの仕打ちだぞ?
これはたまらんぜ!!』
今俺は感情の昂るままに大声で皆に語りかける。
正直、言葉や論じゃない、どれだけ『熱』を伝えられるかどうかにかかる。
狂え!狂え!
あのシーンの劉備みたいに大きな身振りで皆に語りかける。
傾け!傾け!
『よーく耳を澄ましてみなよ?
はっきり聞こえるだろ?香椎玲奈の悲鳴がさ!!
おまえらに『義』の心はあるかい?
胸は痛まないか?!』
『ぷっw』
外町が噴き出した。
でも他の生徒は俺の話を聞いてくれている、続ける。
大きな身振り手振りでさらに大きく語りかける!
『今まで香椎さんに少しでも助けられた!とか頑張ってるな!とか偉いな!とか感じたことが一度でも無いか?
後から自分ださいことしたって思い出したく無いだろ?
それなら、今泣いて飛び出して行った香椎玲奈を助けてやりたいって思わないか?!』
教室は静かだった。
やりすぎて外してしまったかもしれない。
(なーんちゃって?とか言ったらリセット出来ないかなあ?)
語りすぎたかもなあ。
香椎さんになんて謝ろう…?俺が悪いって全部引き受けて外町にあと頼むしか無いかも?ってたっぷり1分位の沈黙の後突然教室はざわめく。
『立花くんの言いたいことよくわかった!』
フラれた3人が俺は香椎さんに協力する!って宣言した。
『香椎さんはいつも気にかけてくれた!協力する!』
地味な女子や陰キャと呼ばれる子たちも宣言してくれた。
完くん、伊勢さんも協力を宣言してくれた。
『なんか恥ずかしいこと言ってたけど、言いたいこと伝わったから…。』
男子グループのほとんどが協力してくれるって!
『情熱的!香椎さんにもう一回告ってみたら?』
敵対してた女子もかなりの人数協力してくれるって!
これで後は引くに引けない二村さん周りと外町グループだけ!!
これなら、この流れなら!
そろそろ香椎さん!!お願いします!!
ガラ!
香椎さんが戻ってきた!
顔を真っ赤にして涙目のまま、彼女はまた教壇に立つ。
俺はそっと横から見守る。
『最後の方だけ聞こえていたよ!
ごめんね、それでも協力してほしい。私のわがまま。
でもみんなのためになるわがままだと思うんだ。』
ぺこり、みんなに頭を下げて香椎さんはみんなにもう一度お願いした。
そして二村さんを初め敵対した子一人一人手を取って話しかける。
二村さんは泣いていた。
香椎さんは黙って二村さんを抱きしめた。
あ、これで決まったって思う。
外町にも握手を求め、外町も協力を約束する。
さすが香椎さん!
(なんとか外町の思い通りにさせなかったけどきっと俺を目の敵にするんだろうなあ)
厄介な気配しかしない。
それでも今の香椎さんのホッとした顔より嬉しいご褒美は無いでしょ?
そしてクラスでもう一度エントリーシートを見直した。
本来足早い奴が最大の3競技に申し込んで、残りを普通の奴が分けて体育祭に臨んでいたが今年は普通以下のエントリーが多い。
香椎さんはそれを敢えては足早い奴には変えず、お互いの希望が合えば交代という形にした為まだ弱めだがHR前とは大違い、これなら不利だけども勝負できる陣容になった。
文化祭はこうは行かないだろうけど体育祭はなんとかなりそう!
今日は本当に疲れた、慣れないことはするべきでは無いね?
それでも好きな娘が笑ってくれるなら人生は上々でしょ?2学期始まって1番の笑顔が見れた、俺満足!
やっと体育祭を戦う準備が整った!
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