第90話 穴だらけのエントリーシート
9月2週、今週体育祭のチームカラー決定があり、HRで競技の参加種目を決定したり、応援団結成集会があって1、2年の応援団員と顔を合わせてチームコンセプトや応援歌を決定する。ただ慣例的に3年が決めて1、2年に伝達って事になる。
チームカラーは1組『赤』、2組『黄』、3組『青』になった。
各学年縦割りで各学年の同じ数字の組みが同じチーム。
チームリーダーは3年実行委員の香椎玲奈
サブリーダーに俺。応援団長に完くん。
『私はリーダー業務にクラス委員長業務もあるし全力でなんでもやるけど、手が回らないことも出て来るだろうから、応援関連は立花くん、完くん主導でお願いしてもいいかな?』
『了解!完くんはなんか希望ある?』
『無い!企画は立花くんがやって?俺は熱ければなんでもいい!』
『え?じゃあ完全に俺の趣味になっちゃうよ?』
承認された。では好きにさせてもらう!
完くんや伊勢さん、応援団員と諸々相談した!
来週から1、2、3年合わせて応援練習始まるから気合い入る!
そんな盛り上がりと裏腹なのが香椎さんをハブるグループ。
香椎さんが話しかけても拒絶したり、無視したり好き放題。
体育祭の競技には不参加を宣言し、みんなが盛り上がると水を指す。
クラスは2つに割れている。
それを一番悲しむのは香椎さんなわけで。
香椎さんはめげずに敵対派閥へ話しかける。
『私が嫌いなのはしょうがないよ…でも、最後の体育祭だよ?みんなで一緒に盛り上がろうよ?二村さん居ないとつまらないよ?』
『は?うるさいな!盛り上がろうが、盛り下がろうが勝手でしょ!押し付けないで!』
『そうよ!自分が正しいって押し付けて!』
『いっぱい男の子が味方してくれたから強気!』
『先週はあんなにへこんでたのに男子が味方だと現金!』
敵対女子は好き放題言う。
『陰キャでどれだけやれんのか見せてよ!』
『香椎さん変わったよ!前は俺たちを頼りにしてくれたのに!』
『もっと頭下げなきゃ人は動かないんじゃない?』
外村派閥を中心とした男子も香椎さんを嘲る。
俺は黙っていられなかった。
『お前ら陽キャだって俺たちに色々正しい顔して押し付けてくるでしょ?
頼りにしてくれないって、今のイベント参加拒否してる陽キャに何を頼るのさ?
第一こうゆうイベントで中心になって動かしたり楽しんでない陽キャって何よ?
俺がお前らすごいなって思うところはこうゆうイベントを主導できるノリや行動力だけどお前ら今、ただ悪口言って人をハブるだけの嫌な奴だからな!』
(あ、言い過ぎた。)
『ああん!陰キャが!』
『あいつ実行委員になって調子乗ってる!』
『香椎さんの前だからて良い格好しやがって!』
『きも!調子乗ってるぼっち!きんもー☆』
(最後のきんもー☆だけなんか傷つくな…)
『喧嘩しないで!私の頼み方が悪かったの!
ごめんね?でも諦めないから!また話そう?』
クラスの亀裂はなかなか埋まらない。
先週の香椎さん宣戦布告で体育祭は盛り上がりつつある。
一部の敵対したクラスメイトも軟化した。香椎さんの周りは今まで非主流派の男女が囲んでいる。
怒りは恨みほど持続しない。流されて敵対したクラスメイトと二村さんたち直接怒ってるクラスメイトの温度差がある。
そこをうまく分断できればハブられるのは解けるんだけど…もう少しかかるかな?実際振り上げた拳の落とし所が無いからあいつらも困ってるのかもしれない。
でも体育祭前に、出来れば早く平定しないと体育祭の準備が追いつかない!実働人数が少なすぎる。頭の痛い問題だった。
香椎さんは悲しい顔で教室を出る。
『…。』
悲しい顔の香椎さんを見るのが一番辛い。
そしてHRで競技のエントリーを受け付ける。
例年なら人気競技はすぐ埋まり、1000m走とか400ハードルとかしんどいやつが残るんだけど今年はどこも空欄が目立つ。
煽った効果で敵対してるけど他クラスのライバルと申し合わせた競技に名乗り出てくれる陽キャも数人いるが全然足りない。
俺や完くん、香椎さんなどは最大エントリー数の3まで入れるハメになりそう。
質、量共に今のままでは絶対に勝てない。
香椎さんと完くんはほぼ誰が相手でも勝てるから運の絡まないストイックなとこにエントリーしたい。
完くんはおバカだから借り物競争とか仮装競争とか自慢のフィジカルを活かせない競技に興味津々だし。完くんは50m走、400mハードル、1000m走、と走力を活かした競技を選ばせてもらった。
『そっかあ、その方がガチれるね!』
対戦相手が可哀想。まあ1000mは俺もエントリーしてるけど。
ただ持久力以外は俺たいした事無いから、借り物か二人三脚、パン食いかなあ?
完『あ!俺もパン食いたい!』
承『完くんにはアンパンとプロテインバー支給するから!』
納得してくれた。去年完くんパン食いで最後まで取れなかったんだよ…フィジカルの無駄遣いだよもったいない!
今年はポイント絶対とってもらわなきゃだから遊びのない競技選択になったことは詫びる。
香椎『立花くん何の競技出るかな?』
立花『うーん、考えたんだけど、1000mと2個一応申し込んでおこうかと。
最悪来週末提出だからそれまでに名乗り上げてくれれば変更できるし、もっと足早い奴がエントリーしてくれればもうちょい勝率が…』
今のままだとかなり厳しい。陽キャたちスペック高い奴多いんだよねえ。
もう少しこっちに引き込みたい。地道な活動するしかない。
香椎『…じゃあ私と二人三脚出ない?』
立花『二人三脚は走るの遅くても息さえ合えば勝てる種目だから香椎さん使うの勿体無い!ダメ!』
香椎『そんな言い方しなくて良いでしょ?
遊びも必要じゃない?良いよね?』
伊勢『じゃあ!あーしが立花と出るよ!あんまり早くないけど競技に参加したいし!』
二人三脚は1学年2レース各チーム2組。
だから男女ペア4組必要で計8人。
1組付き合ってるって噂のある男女と去年勝ってた息の合う男女がもう申し込んでいる。
だからあと4人。とりあえずシート埋めたい。最悪あとで変更しても良いんだし。
俺は香椎さんと組みたいけど伊勢さんとも信頼関係があるから迷うところ。
伊勢さんには応援団も引き受けてもらったしね。
俺、伊勢さん、香椎さんの名前を黒板に書き出す。
いつもなら香椎さんが二人三脚に登場ってなったら申し込みが殺到したもんだが…
え?結局争いが起こってる?
さすが、何げに敵対してるはずの男子も居る。香椎さん好きなら敵に回るなよう。
『よっしゃあ!』
醜い争いの末に、小石が残る1枠を手に入れた。こいつ残り1枠を取るのうまいな…?お前外町派閥じゃないの?出てくれるなら良いけど…。
2ペアが決まりだから残りの2ペアを
男 立花、小石
女 香椎、伊勢
で組み合わせる。
早速香椎さんが先制する。
香椎『伊勢さん?私ね?』
伊勢『貸し返して?』
揉めるかと思ったけど即決だった。
伊勢『じゃあ、立花よろしくー!』
立花『うん、よろしくー!頑張ろう!』
伊勢さんとハイタッチ!伊勢さんと息合いそうな気がする。
小石『香椎さんと二人三脚できるなんて!よろしくね!香椎さん!!頑張ろうね!』
香椎『…うん、よろしくね…。』
意気上がる小石と対照的に香椎さん目がハシビロコウみたいになっていた。
香椎さんは借り残り1らしい。
※わからない人は検索!独特の目付きをした鳥です。
それでもなおエントリーシートは埋まらなかった。来週の提出期限までにもう少しクラスをなんとかしなければ、運動苦手な子たちまで動員せざるを得なくなる。
赤組戦う前からピンチ!
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