第80話 不審者が来たら。

我が家の近くは幼稚園、小学校、中学校が程々の距離で集まっている。

以前も言ったかもしれないが、他所の学区から入ってくることは無いためほぼエスカレーター式に面子は変わらない。

だから幼稚園、小学校、中学校はそれぞれ連絡をとりあってこの地域で一丸になり子育てをしている。


共有する情報としてはインフルエンザの流行とかこんな事件がありましたとか災害など幅広い。

マラソン大会が終わった翌週、この地域に不審者情報が流れ、それぞれ共有した。

不審者って結構多い。不審なおじさんが下校中の女の子に声をかけたとか、下半身を露出させる変態が出たとか宗教の勧誘とかまあ結構色々。

ただ本当に事件になる事案は幸い起こったことがない。田舎町だしね?


今回は不審な黒いワンボックスカーに若い男女が乗ってて下校中の生徒の後をつけてる?みたいな案件だった。


怖いねー?うちにも可愛い弟光ことひーちゃん(3歳)と生意気可愛い妹の望(中1)がいるから、夜ご飯を食べながら気をつけるんだよ?って話をしていた。


『ひーちゃんが攫われたら姉ちゃん生きていけない!』


ぎゅっとひーちゃんを抱きしめる望。

(望や光が攫われたら兄ちゃんも生きていられない)

と思った。


『いい?ひーちゃん?変な大人について行ったらいけないんだよ?』


『うん!わかってうよ、ねえちゃあ!』


可愛い、うちのひーちゃん可愛い!

望は抱きしめながら

『守りたい、守りたいよぉ』

うわごとのように呟いていた。



なんか危機感を抱いたのか望がひーちゃんを訓練し始めた。


『ひーちゃん!これから姉ちゃんが不審者になってひーちゃんを攫おうとします!ひーちゃんはきちんとそうならないようにする!っていう遊びを始めるよ!』


『はい!』


良い返事!兄は黙って妹弟のやりとりを本読みながら眺めることにした。

じゃあ始めるよ?望はひーちゃんに声をかけた。






『ガッハッハ!俺は!えっちな人だあ!

おい!立花光くん!お前のちんちんを触らせろ!!』



『それは雑じゃない?!』

思わず突っ込んでしまった。



望は呆れた声で

『これはひーちゃんが例の不審者が出ても大丈夫なようにするための訓練を兼ねた遊びなの?ディテールにこだわっても仕方ないでしょ?

本当に言うセリフなんて誰にも分からないんだし?』



むむう、一理あるか。邪魔したことを詫び続きを促す。

じゃあひーちゃん続けるよ!うん!続きを始めた。




『ガッハッハ!俺は!えっちな人だあ!

おい!立花光くん!お前のちんちんを触らせろ!!』



(ここからやるのか?フルネームで不審者に呼ばれたら超怖いな。

ひーちゃんどうする?)




『にげる!』


『ぶぶー!

大人は早いからひーちゃんは捕まって接着剤でちんちんを餃子みたいに貼り付けられました!!』



『あ、あ、あ。』


ひーちゃんは股間を押さえて苦悶の表情。


じゃあ、もう一回やろっか?

望は続ける。




『ガッハッハ!俺は!えっちな人だあ!

おい!立花光くん!お前のちんちんを触らせろ!!』



(これは毎回やるのな?

しかし清々しい程の変態だな。)


『たたかう!!』

ひーちゃんは勇ましく宣言した。



『ぶぶー!

大人は強いのでひーちゃんは捕まって、ちんちんを油性マジックで真っ黒に塗られてもう取れなくなっちゃいましたー!』


ニヤニヤしながら望はひーちゃんに宣告する。

想像してるのかひーちゃんは股間を押さえて泣きそう。



気をとり直して3回目!望は宣言する。


『ガッハッハ!俺は!えっちな人だあ!

おい!立花光くん!お前のちんちんを触らせろ!!』


(望このキャラ気に入ってるなあ?)



ひーちゃんは泣きそうな顔で言った。



『…さわらせる…。』



『『触らせちゃダメー!!!』』

兄妹がハモった。


『良い?ひーちゃん?

そうゆう時はね大きな声で『助けてー!!!』って叫ぶの?

良い、もし他の子がそうなってた時に気づいたらひーちゃんが

『誰かー!』でもいいし『助けて!』でも良いし、なんか大声出せば悪い人はびっくりするか大人が来ちゃうって逃げるはずだからそうゆう時は?』



『大声だす!』





『そうそう♪ひーちゃんには兄ちゃんも姉ちゃんもいるんだから大きな声出せばどっちかがきっとすぐ駆けつけるから大声出すんだよ!』


内容はともかく良いことを教えたね?

俺も一言付け加える。


『望ちゃんも女の子なんだから変なおじさんとか気をつけるんだよ?』


『兄ちゃん心配?心配してるの?』


『そりゃあ心配するよ。』


『兄ちゃんはシスコンだ!』


(これでも兄は心配なんだよ?)

『がっはっは!俺はエッチな人だあ!

おい立花望!お前のおっぱいを触らせろー!』



『兄ちゃん通報案件だよ?

父さんと母さんに今言ったこと相談するね?』



『ひどい!』


香椎さんは望をクールで賢いって言うけど家にいる妹はおバカな弟命のズボラな妹でしかない。

きっと外と内では役割が違うんだね?

おうちでは香椎さんはどんななんだろう?そんなことに思いを馳せる初夏の夜だった。



□ □ □ □ □

その頃の香椎家

姉妹が話をしてる。不審者が来たら?


『良い?玲奈は可愛い!だから変な人に狙われる!絶対に狙われる!

お姉ちゃんも狙われた!全部しばき倒したけど!』


『えー?!そんなことあったの?!』


『だから護身術を教えます!』


お姉ちゃんの護身術はとにかく徹底した急所を狙うという物


『いい?目!たまたま!ここを潰せば男ならもう完全に無力化できるよ!

あと指!指取ったらすぐへし折りなさい!』


『そんなことしても良いの?』



『いいよ!全然大丈夫!道具を使ったり、砂を目に投げつけてもいいわ!』


お姉ちゃんも可愛いから色々あったようだった。

妹は今日もお姉ちゃんの得たノウハウを吸収している。


◻︎ ◻︎ ◻︎

明日朝、近況ノートで告知した、♡200記念外伝 成実と怜奈 を更新します。

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