成実と玲奈の仲違い ♡200記念外伝【side伊勢成実】

いつもありがとうございます、近況ノートで告知した♡200達成記念の外伝になります。なんで人当たりの良い玲奈と面倒見の良い成実があの距離感なのか?って話になります。

少し長めです、お付き合いいただければ幸いです。



□ □ □


わたしには近所に玲奈ちゃんという友達がいる。クラスは違うけどおうちが近所。

玲奈ちゃんはすごく可愛い上に勉強も運動も得意でピアノや歌などいろんなことができるすごい女の子なんだ。しかも優しくってみんなの人気者!わたしは玲奈ちゃんが大好き!


それに引き換えわたしはおとなしいってより気弱。勉強も運動もそれなり、得意なことって何かあるのかな?

でも可愛いって言われる!お人形みたいだね?ってよく褒められる!

お父さんもお母さんもわたしを可愛いって言ってくれるし自信があった。

でも玲奈ちゃんはわたしより可愛い。悔しいけど認める。

でもわたしはなんでもできて可愛い玲奈ちゃんが繰り返すけど大好きだからずっと友達!って思ってる。


小学校3年生になりクラス変えがあった。今度は玲奈ちゃんと同じクラス!近所の小幡ちゃんも一緒!


玲奈ちゃんはクラス委員長になった。大変そうだけど合うのかイキイキしてるみたい。わたしには無理だなあ。

クラスの女子がわがままを言う、それを困った顔でなんとかする玲奈ちゃん。小幡ちゃんも助けるけど毎日大変。



『玲奈ちゃん、大変じゃない?』


『大丈夫!私結構こうゆうの得意!』


こんな会話は何回かしてた。

すごいなあって思ってた。


クラス変えがあると人が入れ替わり新しい交流が生まれる。

それは良いものもあるし悪いものもある。


新しいクラスに可愛いが気の強い女の子が居た。

その子も可愛いんだけどわたしの方が可愛いからわたしは男子に人気があった。

そしたらそいつがわたしに嫌がらせをしてきた。

聞こえるように悪口を言う、わたしの私物を隠したり、わたしの目の前で私物を投げて遊んだり。わたしは耐性がなくみるみる落ち込んでいった。

学校に行きたくない。あの子の顔見たくない。思い切って玲奈ちゃんに相談した。


『そうゆうわけなんだ…。』


『ひどいわね?』

横で聞いてた小幡ちゃんも呆れ顔。


『なんで?なんでそんな事に?成実ちゃんは何かしたって心当たりある?』


当然無いからそう伝える。でもさ、あっちが悪いはずなのに心当たり無いか?って聞かれるのは地味に傷付いた。

(玲奈ちゃんはわたしも悪いと疑ってるのかな?そりゃあクラス委員長だから友達ってだけでわたしに味方できないんだろうけど…?)


納得はしてるけど少しもやってした。

悪口や嫌がらせなど実際に酷い目にあってるしそこをなんとかならないかな?って藁にすがるような気持ちで相談したわけで、元々玲奈ちゃんの責任じゃないし解決できなくっても恨むつもりもない。

でもね、


『成実ちゃん、向こうはね成実ちゃんが挑発してきて先に成実ちゃんが嫌がらせしたって証人だって友達が2人居るらしいの?』


???


え?なんで向こう被害者面してるの?

わたしが何もしてしてないのに嫌がらせしてきたのそっちなのにこっちを悪者にしようとしてる?!

当然わたしは全然違うことを玲奈ちゃんに訴えた。


『何か証拠はあるかな?』


『証拠なんて…。でも向こうが悪口言ってるのをクラスの子が見てたり、わたしの私物投げてたりはみんな見てるはずだよ!』



それだけじゃあダメなの?


?『成実ちゃんは何もしてないよ?私証人になってもいい。』


それは木多ちゃんって言う、わたしみたいに大人しい子だった。

結局水掛論になった。嫌がらせは収まらない。


玲奈ちゃんは言った。

『向こうの子にごめんねって言えばなんとか私収めるよう動くからどうかな?』


玲奈ちゃんがこの事に心を痛めて奔走してくれてるのは知ってる。

解決しないことを玲奈ちゃんのせいにする気もないよ。

でも!でもそれだけは受け入れられない。


少しするといじりは酷くなった。

わたしは度々公園で3人に囲まれ小突かれて罵られるようになった。

怖くて反撃できなかったからだ。


『確かにお人形さんみたいw壊れた!』


『『あはははは!!』』


俯いて何も言えないわたし。


『弱虫!毛虫!挟んで捨てろ!』


髪を引っ張られて引き摺り回された。

もう嫌だなあ。学校行きたくないよう。




度々そんな日があった。

ある日の帰り道、他のクラスの男子が悩みなさそうに走って帰る。


『カブトムシ捕まえに行こうぜ!』


『待って!あっちゃん!』


『カブトムシって強そうな虫だよなあ!見た目が派手で立派で!』


『だね!カブトって武将みたい!』


なんとなく聞いててわたしは思う。

(虫かあ、わたしは弱虫。

弱虫、毛虫な虫なんだ。)


男の子はおバカなことを言い続けている。

『カブトムシみたいな虫になりたい!』


『クワガタもいいよね?!』


その男子は走って帰って行った。悩みがなさそうでうらやましい。


(はあ、虫はどうしたらいいのかな?わたしもカブトムシみたいに強い虫だったら…?)


わたしは家に帰り、『強い 女 可愛い』で検索した。

女性格闘家とギャルが出てきた。


『ギャル…?』


最初の印象は下品でおばかな印象だった。でも強そうだよね。

家を飛び出し本屋さんで雑誌を買って一晩じっくり読んだ。

いろんなギャルタイプいるらしい。

それでも雑誌のお姉さんはみんな自信満々で自分の美であったりこだわりであったり、『自分の何か』を自分の中心に据えて我が道を往く。

それにわたしは強烈に憧れた。


先日の証人になってもいいって言ってくれた木多ちゃんと友達になってた。わたしはギャルについて熱く語った。


『わたし可愛いもの好きだけどギャルも良いよね?』


『わたしも気弱だから派手で強気なギャルに憧れるよ。強くなりたい。』


こうしてわたしはギャルに憧れ始めた。

この頃から自分をあたしって言うようになった。




いじめは時々起こるが毎日では無い。

でもクラスが変わらない以上4年生になっても時々思い出したようにいじめはあった。クラス委員長の任期は終わったけど怜奈ちゃんは変わらずクラスの中心。


前ほど依存しなくなったが玲奈ちゃんとは友達。

玲奈ちゃんは解決してくれなかったけどいつもみんなの事にかかりっきりで偉いなって尊敬半分、みんなを気にしすぎて呆れる半分って評価だった。

もちろん良い子で献身的で勉強も運動もこなすとんでもない子だって尊敬もしていた。


4年生になりクラスで劇をすることになった。

シンデレラ。あたしもシンデレラやってみたいなあって思ったけど内気あたしは言えなかった。

他薦で小幡ちゃんか玲奈ちゃんが候補に上がった。どっちも可愛いし仕方無いかと思ってたら。


『わたしシンデレラどうしてもやりたい!!』


いじめっ子のあの子が今年転入してきた外町くんが王子さまに決まるとばかみたいにねじ込んできた。


(男の子人気であたしをいじめたりこいつはしょうもない女だなあ、玲奈ちゃん早く却下してよ?)


と思っていると、


『いいよ。』

って言って、自分は継母役を熱演し始めた。

いじめっ子が継母に詰められてるのは笑えた。

57話 女優香椎玲奈 参照。


でもあたしもやりたかったシンデレラ役を、他薦で選ばれたシンデレラ役を名乗りでたらすぐ譲る玲奈ちゃんに少しイラッとした。

(もちろん、あたしは名乗り出なかったんだから言う権利は無いのは重々承知してるけど、でもそんな簡単に憧れのシンデレラ役手放すの?)


あたしは玲奈ちゃんに疑問を持った。

決定的になったのは友達のお姉ちゃんがくれた髪紐だった。


友達のお姉ちゃんが修学旅行で京都に行った。

友達のお姉ちゃんはとっても綺麗なお姉ちゃんであたしの憧れの人だった。


『旅行のお土産だよ!みんなで仲良く分けてね?』


そう言うと4色の綺麗な和柄の髪を束ねるリボンのような組紐のような素敵な紐を私たちに手渡した。


赤、青、ピンク、緑


その友達の一条ちゃんとあたし、玲奈ちゃん、小幡ちゃんの4人は家が近く一緒に遊ぶことが多かったからお姉ちゃんは気を使ってくれたんだと思う。



『じゃあ、私赤がいいな。』


一条ちゃんは妹だから第一希望を通す権利がある。一条ちゃんは赤を取った。


『私は青が好きなのよ。』


小幡ちゃんは青を選んだ。競合が居ないから青は小幡ちゃんが取った。


『『私ピンクがいいなあ?』』


私と玲奈ちゃんの希望が重なった。

確かに玲奈ちゃんはピンクが好き。でも私もピンクが好き!


ふたりはもう髪を束ねて髪紐を付けて鏡見ているけどこっちはまだ決まっていない。

『私ピンクがいいよー!』

『えー私もだよう!』


ああだこうだ言い合いながら私はこの取り合いを楽しんでいた。

緑も綺麗なんだけどピンクがやっぱり可愛い!できればピンク欲しいよ!


結局口での言い争いは決着つかなくってテレビゲームで勝った方がピンクってことになった。


『負けないよー!』

『私だって!』


玲奈ちゃんはゲームもうまかった。

全く勝負にならなくって、泣きの一回で違うゲームをチョイスしても惨敗した。

負けた悔しさ、ピンクが手に入らない、2人の良かったね?玲奈ちゃんピンク好きだもんね?きっと似合うよ?って声が悲しくてもう心はぐちゃぐちゃ。

(そりゃあ玲奈ちゃんの方が可愛いよ!悔しい!でも負けたから仕方ない…。)



あたしは涙目だった。それでも納得していた。

ピンクが好きなもの同士ぶつかっただけ、勝った方にこそピンクはふさわしい。

仕方ない。諦めて緑の髪紐を手に取る。

すると。



『成実ちゃん、ピンクの髪紐付けて良いよ?私緑にするから!』


私はカーッとなった。


『あたしを馬鹿にしないで!玲奈ちゃんがピンク好きなの知ってる!あたしもピンクが好きで勝負して負けた!だからそれは玲奈ちゃんのもの!

あたしに気を使ってるんだろうけど負けて、憐れまれて、譲られて!

馬鹿にしないで!!』


あたしは生まれて初めてキレた。

親友だと思ってた子に裏切られた気持ちだった。

我に帰り、玲奈ちゃん、小幡ちゃん、一条さんに謝って、緑の髪紐を束ねた髪に結んでその日は帰った。


その日の夜、自己嫌悪に陥り私は苦しかった。

もう一度謝ろう。特に玲奈ちゃんには。

私の勝手な被害妄想だよね。

きっと玲奈ちゃんは気を使って譲ってくれただけ。

それでも私の心に玲奈ちゃんの行動はしこりとなって残った。


次の日、登校は近所の子と班を組んで学校へ向かう。

班で集まった時に私は3人に昨日怒ったことをもう一度詫びた。

3人は許してくれた。


私が気にしすぎなんだ、自己嫌悪は続く。


そして1ヶ月ほど経ったある日。

また虐められた。髪を引っ張られて、意地悪ないじめっ子は今日も最低だ。

そのいじめっ子の髪を束ねるピンク色の紐に見覚えがあった。


『それ!それどうしたの?!』


『何よ?毛虫!』


『うるさい!それどうしたの!!』


『友達の玲奈ちゃんがくれたのよ!可愛いでしょ?』


私は愕然とした。腹が立って腹が立って仕方がない、生まれて初めていじめに抵抗した。3人を相手にボロボロになって撃退した。






あたしはその足で玲奈ちゃんの家へ向かった。


呼び鈴を鳴らすとすぐに玲奈ちゃんが出てきた。


『どうしたの成実ちゃん?

ええ?!本当にどうしたの?ボロボロじゃない!怪我も!上がって!』



『そんなことより!『あの髪紐』どこにある?』


『え?』

玲奈ちゃんの目が泳ぐ。


『もう玲奈ちゃんのものだからあたしが言う筋合いじゃないのはわかる。』


『じつはね?』


こないだ遊びにきたいじめっ子がどうしても欲しいって駄々をこねたらしい。

(あいつ本当にうんこだな。)

私も本当はあげたく無かったんだけど、どうしてもって…。

ごめんね?上目遣いで男子だったらなんでも許してくれそうな可愛い笑顔であたしに謝った。一条さんのお姉さんにも許可をもらったよ?って。


『別に?あなたのものだから好きにしたらいいよ。』


『あなた?』


『あなたはさ、いつも私の欲しいものをすぐに人にあげてしまう。あたしはそれが気に入らない、とっても気に入らない!

シンデレラ役も!ピンクの髪紐も!あなたにとっては大したものじゃないんだろうけど!』


『違う!違うよ!成実ちゃん!』


『違わない、あなたはみんなのことを一番に考えて、みんなとうまくやってるつもりなんでしょうけど!

そうゆうところ尊敬してるし、すっごい気持ち悪い。』


あたしに気持ち悪いって言われて顔色が変わる。


『私は!みんながうまくいくように頑張ってる!成実ちゃんにはわかんないよ!』


『わかりたくもないよ!自分が友達、いや親友だと思ってた子がいじめっ子に謝れとか言ったり、取り合いになった髪紐をあたしをいじめる子にあげてたり!

上がって?怪我してる?今あんたの友達のいじめっ子に3人がかりで髪の毛掴まれて引っ張り回されてボロボロになったんだよ!

あたしがごめんねって言えば良いの?!』


玲奈は声も出ないみたい。


『別にあんたのせいでいじめられてる訳じゃない。

でもあいつはあんたの友達だよね?解決して欲しいなんて板挟みになる嫌なお願いをしたことは謝るよ。ごめんね。』



『そんな、成実ちゃんだって友達だよ…?』


はっきり言おう、あたしは変わったんだ。



『友達だった。

ありがとう、仲良くしてくれて、今まで。

別にあんたが悪いわけじゃないよ。『あたし』があんたの中の『みんな』の中に入ってなかっただけ。

いつもみんなのことを一番に考えるあんたを尊敬はしている。

…でもあたしはあんたみたいにはなりたくない。』



お邪魔しました。そう言って扉を閉める。怜奈がなんか言ってるけどもう聞く必要は無い。


家へ帰り怪我してるあたしを心配するママを無視して美容院へなけなしのお金を握りしめて走った。


美容院のお姉さんに強そうなギャルにしてください!って要望を伝えるとそのまま形にしてくれた。

お姉さんは笑いながらノリノリで派手にしてくれた。少しお代負けてくれて助かった。



次の日。


『おはよう、どうしたのその頭?』


小幡ちゃんがびっくりしてる。


『あーし変わる!強くなる!』


妙に似合うわね…小幡ちゃんが呟く、でしょ?あーしもそう思う。

少しパーマみたいにウェーブをかけて髪色を明るくしてもらった。今までより強くなれそうな気がする。

玲奈がビクビクしながら声をかけてくる。

『成実ちゃん…。』


あんた呼ばわりもあれだから今日から香椎玲奈ってフルネームで呼ぶ。まあそんなに呼ぶことはないだろうけど。』



ばいばい。

この日を境に香椎玲奈と直接的な交流は無くなった。


あたしは友達を見捨てない。

あたしは弱虫だけどいじめに負けない。

この2つを誓った。

伊勢成実ギャルデビュー!1人で私は呟いた。



□ □ □ □

香椎玲奈にとって初めて友達が自分から去った瞬間だった。

何が悪かった?何で?

ごめんね、私は、どうしたら良かったの?

あんなに仲良しだった子の失望した眼差しを思い出すたびに玲奈は苦しんだ。

玲奈が出した結論は


私がクラスを統率できなかったせいだ。

いじめは絶対に許してはならない。


去った友の為にもこれ以後香椎玲奈は一層クラスの掌握といじめ撲滅を誓った。

まだ立花承が香椎玲奈も伊勢成実も認識していなかった頃のお話。

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