第77話 concentration
スタートと同時に足を引っ掛けられた?!
バランスを崩しながらも集中していたから転ぶことはなかった。
隣の完くんも前に倒れそう?お互いに目が合うがお互い加害者じゃないことはわかる。
『俺たちとゆっくり走ろうぜ?』
『ふふ、マラソン大会なんて本気にならなくていいっしょ?』
外町のグループの陽キャが妨害してるのか?小石!またお前か!
俺と完くんの前を3人でブロックしている。外町が指示してるのかな?去年1位と3位が潰れれば4位の外町は大チャンスではある。
それともこいつらも香椎さんのキスを狙っているのか?
スタートからもたついたから先頭集団に行けなかった。
一番渋滞している中団の真ん中。ここはまずい。
無理にこじ開けるとスタミナがやばい。
先頭集団に離されると一気にキツくなる。
『俺の勝負を汚すなよ!』
完くんカンカン(笑)
ここでペース上げるしかないよな?
『完くん、そんなつまんない奴に放っておいて俺と一緒に走ろうぜぇ?』
『立花くん、可愛がってやるぜえ!』
こないだの修学旅行のカップルに絡む不良ごっこは何げに気に入っている。
俺と完くんはペースを上げた。
前を走る宏介が自分のラインを譲ってくれた。
『承、がんば!』
さんきゅ宏介!
7kmを考えるとこれ以上のペースアップはしたくない。
そこまで離されてはいないけどここで先頭集団に辿り着かないとそもそも勝負にならない。
ここは無理して上げたペースは維持!
完くんも同じ考えなのか俺の隣をキープ!
しばらく走ると先頭集団の後方についた。
去年2位の遠野くんや4位の外町が居る。
やっと本番ここまでくれば邪魔は多分入らない。
ペースを上げたり下げたりするのはスタミナを結構消費する。
そもそも完くん打倒を掲げるならここは勝負でしょ?
俺はそのままのペースで先頭を目指す。
同じところからヨーイドン!でスパートしたら絶対完くんに勝てないのはこの2年でわかってる。
ペースを下げないって気づいた完くんはそのまま俺と並走する。
そうすると思っていた。ここで引くなら勝負しようなんて声かけないよね?
ジリジリ先頭集団内で順位を上げていく。
事故やトラブル回避のため一定間隔で先生が立っていて声をかけてくれる。
頑張れよ!あと5kmだぞとか先生によって声かけ違う。
もうすぐ女子とすれ違うぞ!
香椎さんの顔見たら元気になっちゃうぜ?
少しすると女子の先頭集団が向こうから来てるのがわかる。
先頭は香椎さんだった。ポニーテールを揺らして走る姿は可憐でしなやか。
いやポニテ香椎さん最高じゃない?ご飯3杯いける!
香椎さんは俺と目線合わせて
『男子もがんばって!』
って声かけてくれた。
先頭集団では
『俺の目を見て言ってくれた!』
『俺の目を熱い眼差しで見てた!』
『俺でしょ?』
外町まで言ってる。
うーん俺も目を見て言ってくれたと思ったんだけど…香椎さんだからみんなに言ってるのかもしれないね?
思い出したら、ふふ。って声が出ちゃった。
『立花くん、余裕あるね?』
完くんが言う。
『余裕なんてない、『学年最強』が相手だもん。』
『いつまでこのペース?』
さっきの地点で先生が半分過ぎたぞ!って声かけてくれた。
俺の作戦はチキンレースだ。
スパート勝負じゃ勝てないならスタミナ勝負、いや我慢比べって方が適切かもしれない。
去年と同じ事して同じ負け方じゃ進歩が無い。
とにかく完くんを俺の土俵に引っ張り込むしかない!
『最後までいく!』
『我慢比べかい?』
『あっちゃんならきっとそうする!』
俺のヒーローはそうゆう展開が大好きだった。
真っ向勝負!!
完くんは黙った。意図が分かったからもう話す必要が無いよね。
多分あと3kmくらい?
外町の居る4人くらいの集団を後方に俺、完くん、遠野くんが3人で競り合っている。
毎年だったら遠野くんが先頭に俺と完くんがそれを見てゴールを意識できる勝負どころでスパートをかけて決着なんだけど今年は先頭を3人で争う展開。
熱血って古い言葉かもだけど今の俺たちを現すのにこれほどふさわしい言葉は無いでしょ!
熱い!血が滾る!
多分去年よりも結構なハイペース。
本来多少のゆとりを持って走る。その日の天候、ペース、体調などで消費スタミナは毎回違うから。だから余裕を持ち、もう大丈夫だって目処が立ったらそこから逆算してスパートをかける。
俺は今年トレーニングでこのマラソン大会のコースを毎日走った。多分俺が一番このコースを走っていると思う。だから限界ギリギリのペースで逃げ切りを図りたい。
校門をスタートして、宏介の家の前を通り学校横の川を渡る橋を通り田んぼの真ん中を走ってポイントを通過して戻ってくるコースだが田んぼが終わって橋エリアまでに多少のアドバンテージをキープして先頭に立っていたい。
残り2kmくらいかな?レースは終盤。
俺もキツい!まだゴールまでしばらくかかるし。
『付き合って潰れるわけにはいかない。』
完くんは少し下げた。
(良い判断だなあ、もう少し付き合って欲しかった。)
思っていたよりハイペースで本当にギリギリ、なんならギリギリアウトかもしれないペース配分。
遠野くんと先頭を争うマッチレースになった。
とはいえ完くんだってスパートできる体力を残すためのペースに、自分のペースに戻しただけ、怖い!
遠野くんに勝てないと完くんには勝てないだろう、スパートに自信の無い2人の引くに引けないチキンレースの始まりだった。
後から思うとこの頃が一番苦しいよね。
あまり記憶がないけどなんとか遠野くんに競り勝ってリードを結構広げた。
ここが勝負どころ!完くんを引き離し追いつけないリードを!
あと少しで橋エリアってカーブを曲がった時視野の端っこに遠野くんが見えた。
(よし、結構アドバンテージあるかなあ?)
先生が俺に声をかける、
立花あと少しだぞ!結構リードあるぞ!
先生はスマホで学校に連絡、現在1位は立花リードは結構あるよ。って伝えてる。
横目でチラッて遠野との距離を確認する50m近く離してるか?
イケる?そう甘い考えが頭をよぎる。
俺の甘い考えを嘲笑うように『学年最強』完くんが遠野くんをかわし2位に躍り出るのが見えた。
去年は橋エリア入ってからスパートしてたのに今年はそんなにロングスパートかけるの?!
我慢強さは結構自信があるけどもスパートのキレは根性じゃ凌げない。
リードを、リードを広げなきゃ!でももう足は残っていない。
今ペースを下げたらもう2度とペースは上げられない。
我慢して我慢してこのペースを維持するしかない。
維持してるつもりでも徐々にペースが落ちていく。
橋エリアに着いた、ゴールはもうすぐ。
橋の上に香椎さんと小幡さんが見える。
距離の設定上行きはこの橋を通るが帰りは迂回して一個上流の橋を通って校門前のゴールへ行かなければならない。
俺は明らかにオーバーペースでもうスタミナ切れ。完くんが追い込んでくるのも彼女たちからは見えるだろう。完くんにかわされるところ見られたくない。
(俺は確かにもう限界だけど止めて欲しくないなあ、俺に頑張れって言って欲しい。嘘でも俺が勝つって信じて欲しい。)
でも玲奈さんは優しい、今優しい言葉かけられたら俺、折れてしまう。
祈るような気持ちで『俺の女神さま』に視線を送る。
次回決着!
※すいません、ラブコメ成分まったく無い回です。
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