第75話 香椎玲奈は匂いフェチ(拗らせ)【side香椎玲奈】

そんなわけで、先日後輩の望ちゃんが小遣い厳しい為、中1の頃着てた服お下がりで欲しいと言うから家へ呼んだ。


日曜日の14時ジャストにうちへ来た。


『いらっしゃい、望ちゃん。』


『先輩、お邪魔します!』


家に入れるのは初めてだよね、ママやお姉ちゃんに挨拶して2階の私の部屋へ。


『先輩、本当厚かましいお願いをしてすみません。』


『着てない服だから大丈夫だよ!』


『でも服とか気に入ってる奴って愛着あるじゃないですか?』


今は着てない服でも着てた思い出があるから手放すのって複雑。望ちゃんはわかってる。

でも着れないで捨てちゃったり、売ったりするよりは誰かに来て貰った方が服も嬉しいだろうし、気に入ってる後輩ならなおさらでしょ?


『一応、全部洗濯してあるけど?』


何点か服を取り出す。うちはパパが娘には可愛い装いして欲しいと洋服を買いに行く機会が多い。傷んでるものとかは思い切ってこの機会に処分した。

人にあげるとはいえ変なものはあげられないし、もちろん洗濯して綺麗にアイロンもかけてる。


『え?このブランドのアウター?!スカート可愛い!

こんなブラウス似合うかな?』


望ちゃんも女の子だから洋服を見てテンション上がってる、わかるよ!

結構ものをはっきりタイプの望ちゃんが言いにくそうにしてる?



『迷うなら全部持っていく?』

私は言いにくそうにしてる望に切り出した。


『…いいんですか?本当に?

先輩おしゃれさんだと思ってたんですけど想像以上に素敵な洋服だらけで選べなくって…。』


(この子うまいなあ、さりげなくこっちをいい気分にさせてくる!)

承くんの妹だけど個人的にも気に入ってる後輩だから特別だよ?

他の人にはあまり言っちゃダメだよ?って笑いながら畳んでまとめる。


『私たちの代も夏で引退。望ちゃんはきっともっと上手くなる。

テニス部お願いね?』


『はい!』


本音だよ。きっと1年後には望ちゃんがテニス部のエースになってるんじゃないかな?承くんの妹ってのを差し引いても私は望ちゃんに期待しているし、思い入れがある。私にしては珍しい。


でも、下心もある。


『あげる服なんだけど、

じゃーん!私の一押しはこのワンピ!知ってるかな?このブランドはなかなか手に入らない…』


今日の目玉商品の登場だよ!


□ □ □ □ □

ワンピ! Side 立花 望


じゃーん!そう言って香椎先輩が取り出したのはあの有名ブランドのワンピース!

うちは裕福な家ではないからそんなに服にこだわり無かったんだけど香椎先輩の洋服めっちゃ可愛い!ブランドだから可愛いわけじゃあ無いし、どっちかって言えば否定的にブランド服を捉えていた私にとってカルチャーショック。

その人に似合うブランド服をチョイスするとこんなに映えるものなの?!


香椎先輩の取り出したワンピは今日見た中で一番綺麗で可愛い!すごい!両立してるんだ?!テンション上がるー!


香椎先輩は言った。

『これ可愛いでしょ?私の気に入りだったんだー。』


『可愛いです、綺麗でもあるし。』


『だよねー?愛着あってね。まだ着ようと思えば着れるんだ。』


『じゃあやめときます?』


『ううん、望ちゃんにあげる!絶対似合うよ!』


『良いんですか?嬉しいです!ありがとうございます!

あ、先輩の良い匂いする!』


ワンピが嬉しくって抱きしめながら先輩にお礼を言う。


『まだ着れるんだけどね?

もし承くんに聞かれたらそれは伝えてね?』


もちろん伝えますよ!って言うか兄ちゃんを『承くん』って呼んでるの?

兄ちゃんやるじゃん!


私もね、もらいっぱなしってわけにもいかない。

先輩後輩の間柄ではあるんだけど偏った貸し借りは今後の関係に影響するでしょ?



『先輩、本当にありがとうございます。

私ももらいっぱなしって気が引けるのでつまらないものですが…』


私は服が欲しいけどそれはそれとして兄ちゃんと先輩がうまくいって欲しい。

ささやかながら私にも秘策があるんだなあ。


『気を使わなくって良いのに?』

香椎先輩は兄ちゃんから聞いて我が家の経済状況を知ってるんだろう、でも見ててね?きっと気にいると思うんだけどなあ?



私は持参した大きいカバンから折りたたんだ白いワイシャツ2枚取り出す。



『兄ちゃんがいつも着ているワイシャツです!』


!!!

香椎先輩の表情が変わった。

よし、食いついた!



『洗濯済みと昨日着用のどっちg『どっちも頂くね?』』


先輩はいつもの可愛い、明るい素敵な笑顔で言い切った。

こないだの帰り道の話で香椎先輩は匂いフェチなのかな?ってあたりを付けていたがビンゴだったみたい!

そして兄ちゃんが好きなんだって確信した!わけわからん男子のワイシャツなんて絶対欲しくないよね。



『え?いや、どっちが良いd『両方!』』


学校一番の美人で完璧女子の異名を持つ香椎先輩が駄々をこね始めた。


『望ちゃん?バレッタも付けようか?』


香椎先輩は髪留めコレクションのケースを取り出す。

『これとこれ以外ならどれでも2個良いよ?』


(この2つはきっと兄ちゃん絡みなのかな?)


2個選んで黙っていると、まあ香椎先輩は色々付けてくれた。

映画で見た大金持ちがオークションでお金に糸目をつけないでなりふりかまわず競り落としにくるような光景だ。

黙ってるとどんどんおまけが積み重ねられていく光景にさすがに良心が痛んで。

もう大丈夫です先輩!!と止めたんだ。


『怒られたり、外したギャグみたいな空気になる心配をしてたのに…。』


『望ちゃん、ありがとう!あげた洋服は大事に着てね?

貰ったこれは大事にするよ!

このことはくれぐれも秘密だよ?』


どっちが服を貰いに来たのかわからない(笑)

こうして荷物いっぱいで家に帰った。






『わ!どうしたの望?そんなにいっぱい?』


兄ちゃんに呼び止められた。

『香椎先輩がくれた。』


『すごいね!ちゃんとお礼言ったの?』


『お礼は言ったし、香椎先輩にお返しもしたよ?』

(兄ちゃんのワイシャツだけど。)


『俺もお礼言っておくけどこんなに貰ったの?』


『あ!先輩胸大きくなってこの服とか着れないんだって?』


兄ちゃんは眩しそうに香椎先輩から貰った服を見つめると私の頭をくしゃって撫でて部屋に戻った。

もらったワンピ超可愛くって飽きずに眺めていたよ!


□ □ □ □ □

初めての…。 Side香椎玲奈

※やや性的な表現があります、ご注意ください。



これはすごいものを手に入れてしまった!

望ちゃんのお返しはピンポイントで私の欲しいものだった。

これと引き換えなら多少の犠牲は厭わないよ!

こんな良いものが合法的に手に入るなんて!

※非合法です。他人のものを勝手に他人に渡すことは犯罪です。


テンションが上がるが夜まで取っておく。

1日が終わり、電気を消してベッドに入る。

常夜灯の薄暗い灯りが室内を照らす。


誰が見てるわけでも無いけどソッとワイシャツを取り出す。

くんくん。


(承くんの匂い♪)


誰にも邪魔はされない。

くんくんくん。


なんか体が熱くなってきた。

私は今まで性的なものに興味が持てなかった。

なんか忌避感がありいけないこと!って思ってる。

でも承くんの匂いをくんくんしてるとそうゆう欲望が自分の中にあり、今まで向き合って無い女の部分があることを実感する。


夢中になって匂いを嗅いでいるうちにわけがわからなくなってきた。

(私はこんなことする娘じゃないって思ってたんだけど…?)


ワイシャツの腕を広げて自分に巻きつけると承くんに抱きしめられてるみたい。





その日私は生まれて初めて自分を慰めた。





(これが賢者タイムっていうのか…。)

前に自分で触った時には怖くって途中で止めたのに…承くんの匂いは私を狂わせる。

(とにかくこれは良いものだ!大事に保管しよう!)


私はどうやら匂いフェチらしい。

特に承くんの匂いにめちゃくちゃ弱い重症の匂いフェチ。


しょうがないでしょ?これも私だもん。


□ □ □ □ □

貰ったワイシャツは毎日くんくんしてる。

ジップロックに入れてるけど匂いが薄くなるのが問題だよね?


翌週部活にて。

望ちゃんが、


『先輩!』


『どうしたの?』


『こないだのなんですが、4枚しかないうち2枚を回したら兄ちゃんがワイシャツの枚数が合わないのに気付きまして?』


『うんうん?』


『1枚返して頂く事は…?』


『無理だよ、むしろもう一枚欲しい!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る