第74話 香椎玲奈は匂いフェチ 【side香椎玲奈】

よく聞くことで好きな異性の匂いに異常に興奮するとか執着を見せるとかそういう性癖があることは知識としては知っている。そうゆうのが好きな人は好きなんだろうなあって思っていた。修学旅行に行く前は。



修学旅行で他に人がいない時立花くんを『承くん』と呼んだり、『玲奈さん』って呼んでくれたり誰も居なければ手をつないでくれた!

進展だよね?3日目の夜にはハグ未遂。あれはキスまで行く可能性のあるシチュだっただけに色々惜しいがあそこまで行ければ2学期の色々イベントでもっと先に進むこともあるよね?


帰ってきてから初の美術室での放課後委員長業務なんだけど2人きりなのに承くんは学校では油断すると危ないって名前で呼んでくれないし、名前で呼ぶと周囲を警戒して全く雰囲気が出ない。手なんか絶対繋いでくれない。



(やっぱり旅行ならではのテンションで進展したのかな?でも1回あそこまで行けばそこまでは経験済みだからすぐに取り返せるはず…!)


焦らずに行こう。

来週以降も水曜放課後は美術室で2人きりで業務をしたいのだが


『6月下旬のマラソン大会に備える!』


って承くんが。

なんでも完くんにガチで勝負を挑まれたんだって。承くんがすっごい燃えてる。応援したいし、1ヶ月も放っておかれるのも嫌なのでトレーニングに付き合おうか?って言ったら目立つし、香椎さんファンに殺されるからって断られた。

私のファンてそんなにいないでしょ?殺しはしないでしょ?って言ったら。


『修学旅行の人生ゲームなんて地獄だったよ?』

(何があったのかなあ?)

※香椎さんはクラスメイトの人生ゲームで4人に奥さんに指名されてゲーム内で9人も子供を産まされたことは知りません。


残念に思いながら今日を楽しもうって割り切って、作業を終了した後いつものお茶会を準備する。


『今日はクリームサンドクッキーだよー!』


『おー!オ○オみたい!すごい!』


『そんなことないよー!』

(本当はそんなことあるよ!本当は試作3回の力作だよ!)


じゃあ承くんにはいつものようにハンドタオルを濡らしお絞りを作ってきてもらう間に私はアイスコーヒーと承くん用のミルクを用意…。


椅子に承くんの学ランがかかっている。

ゴクリ。私は修学旅行へ行ってからおかしい。

修学旅行でふたりっきりになって接近して承くんの匂いを意識してから異常に匂いが気になるようになった。

私良い匂いかな?承くん私の匂いどう思ってるのかな?

いや、それより承くんの匂い好き!くんくんしたい!そんな欲求が日に日に高まっている。

そこに放置された学ランである。


(少しなら…良いよね?確認、確認するだけ…。)

椅子にかかった学ランに顔を近づける。すんすん。


(あー、承くんの匂いだー!)


くんくん、くんくんくん!


(一生嗅いでいられるような気がする。)


よく匂いが好きな相手は遺伝子的に相性が良いなんて言うけど前はそうかなあ?って思っていたけど本当かもしれない。


(ん?襟口のところの方が承くん!って匂いするかも?)


くんくん。もう顔を埋めるほど嗅いでる。


(使ってるハンカチとかハンドタオルとか忘れていかないかな?もしくはこの学ラン持って帰れない?)


がらっ!!


ビクン!!!



私はすごい勢いで椅子にかかった学ランから離れた。



『あれ?まだ準備できてない?』


『ううん、もう出来るよ?』


完璧に取り繕う、にっこり明るく微笑むよ!後ろめたい行動を棚に上げて!


(私、変態なのかな?)

承くんに対する罪悪感がひどい。


(これどうなんだろう?私だけなのかな?

もし承くんを1人にしたら私の上着とか匂い嗅いだりするのかな?

でももし私の荷物とか漁ったりしたら幻滅しちゃうな?)


離席する理由にトイレ行ってくるって言いたくない…しばらく観察したいし…試し行為みたいで気がひけるが好奇心に勝てない。


『私、さっきの提出物のことで伝えることあった!10分くらいで戻るから承くんゆっくり食べてて?』


『大丈夫?俺も行こうか?一緒に食べた方が美味しいし!』


(う、罪悪感があるなあ。)



大丈夫!って言い残して上着を脱いで椅子に掛けて美術室を出る。

そしてひっそり隣の美術準備室へ入る、柳先生居ないからそっと美術室と美術準備室を繋ぐ扉を隙間開けてこっそり覗く。



承くんはソワソワしながらクッキーをチラチラ見てる。


(食べて良いよ!)


承くんは我慢してたが一枚手に取ると。ガブリとかじりついた。


『うまっ!』


きゅーんってする。夢中で2枚めにかぶりつく承くんを飽きずに眺めてる。

(私の匂い嗅がないの?良いよ?今なら誰にもバレずにくんくん出来るよ?)



うまいって言いながら幸せそうに食べる承くん。

(私居ないのに美味いって言ってるってことは気を遣って美味しい!って言ってるんじゃないってことだよね?嬉しいな!)


しかし私の上着とか私物には目もくれない。

(私の服とか私物とか興味ない?ロッカーにブラ干してないか見に行ったりしない?)


クッキーが美味しい?匂いに興味ない?私物チェックされないのは良かったけどなんかモヤモヤする。

(私だけ変態の人みたいじゃない?)


なんかちょっと自分が不安になってきた。どうしようバレたら嫌われちゃうかな?これは私の胸に留めておこう。

この日は何事も無くクッキーを食べて承くんと別れたよ。


□ □ □ □ □

次の日。

部活帰り、小幡ちゃん、望ちゃんと帰り道。

それとなく聞いてみる。結構匂いフェチの女の子って多いよね?異常かな?どう思う?


小幡『多いわよね、女の子って結構そうゆうもんじゃないの?』


望『へー、そうなんですね?私まだ子供なんでわからないですね?香椎先輩はそうなんですか?』


『うーん?どうかな?匂いは気になるけどね?女の子として。』

一応サラッと深く触れないように2人に意見を聞いた。

やっぱ結構そうゆうもんなのかな?じゃあ異常じゃないよね?


小幡『でも重症だと彼の服こっそり持って帰って匂ったり、自分の匂いをわざと彼の服に付けたりするらしいわよ?』


望『えー?動物のマーキングじゃないですか?』


『そうだねー。』

(彼の服に匂いを付ける!その発想は無かった!)

少し考え込む。うーん彼服に匂いつけたいかも?すんすんしたい欲求強い。


望『話違うんですけど、お二人って中1位の私服ってまだ持ってます?』


小幡『こないだ処分したわよ。』


望『あーそうっすか。うち結構小遣い厳しくってお二人センス良いからもし嫌じゃ無ければお下がり下さい!ってお願いしようかと…。』


『私はまだあるかも?』


望『本当ですか?』


そんな話をしながら、自己判断だがどうやら私は匂いフェチらしい。小幡ちゃんの話だと重症手前なのかなあ?

遺伝子の相性が良いだけじゃない?自分にそう言い聞かせた。


続く

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