第73話 帰るまでが修学旅行

最終日、三十三間堂を見ておしまい。千手観音が1001体は圧巻の迫力。

これいつまでも見てられるやつだ!

寺の雰囲気も素晴らしくって良いところだった。


そして京都駅に着き、お土産ものを最後に買う時間があり、新幹線で帰る。

そしてお土産屋さんでトラブルが起きる。



『あ!ごめーん!気づかなかったわw』


俺は家族に頼まれたお土産を購入して、それを入れるためのバッグを用意していた。大きめのバッグに生八橋を6箱(笑)入れた途端に上記の声で外町が俺のバッグを踏みつけた。

真ん中踏まれなかったけど多分3割は潰れたか?


『何すんだよ!』


『いやだな、うっかり間違ったんだってw』


ニヤニヤしながら俺のバッグを蹴った。


『痛て!』


俺のバッグを蹴った外町が足を抑える。

周りのクラスメートもなんかトラブルだぞって集まる。

外町の横に居た木多さんはトラブルの気配にびっくりしてる。


俺はバッグから木刀(妹リクエスト)を取り出して突きつけた。これ蹴れば痛いよな。


『だから!何すんだよ!』


『木刀?厨二病かよ!武器なんて卑怯だな!』


『俺だって好きで買ったんじゃないやい。

それよりどうしてくれるんだよ?』


『だから間違ったんだって!』


こいつだめだ!俺は今購入したお店のお姉さんに頭を下げた。


『購入したとはいえ、お店の方、作った方に失礼なことをしました。申し訳ありません。』


深々と頭を下げた。外町は外面だけは良いから第三者を巻き込むに限る。


『すいません、弁償します。』


いや、俺に弁償するんだろ外町?


『家族に持って帰るお土産だったんです。どうしよう?』


ちょっと俺わざとらしいかな?

店員さんが気を遣って


『お取り替えしましょうか?』


『外町どうする?』


外町は5千円札を押しつけて


『これで買い直せよ!』


って。修学旅行中は良いやつだったのに本当にガッカリした。

もう元に戻っちゃったんだなあ。


6箱潰して5箱弁償…微妙だけど潰れても食えるからまあいいか?

踏まれたとはいえはじっこだけだし車内で食べることにした。

1番酷そうなやつ1箱一応外町に押しつけて、残り5箱。

完くんと伊勢さんに1箱ずつ。3組の仲間たちに1箱。


香椎さんにこれこれ事情があってと説明して1箱渡して1箱は自分で食べた、

みんな仲間と分けていたけど俺は1人で一箱時間かけて食べた。


行きもそうだけど移動時間が長い。行きと違い4日フルに遊んだ俺たちはもう疲れていた。

夜も興奮で寝れないし、昼も全力で遊ぶから新幹線内で寝てる人も多い。


完くんや伊勢さんとこで修学旅行楽しかったねーって話をずっとしていた。

眠いけど寝るのも勿体無い。

香椎さんは疲れてるのか席で小さくなって寝てた、寝顔めっちゃ可愛い!写真撮りたいくらい。

スマホがあれば…。


そんな弛緩した雰囲気の車中で完くんが思い出したように言った。


『今年は校舎の補修と塗り替えが2学期にあるから秋のイベントだいぶ毎年と比べてずれるじゃない?』


『うん。』


『体育祭が9月下旬から10月上旬に、文化祭が11月上旬から下旬にずれて、その影響で毎年10月半ばでやるマラソン大会が来月の6月下旬にずれるよね?』


『うん。』


俺は相槌を打つ。


『今年が中学最後のマラソン大会なんだけど実は前から気になってることがあるんだよ。』


『うん。』


『立花くんはさ、よく口癖のように『あっちゃんだったら』『あっちゃんが居たらこんなもんじゃない』って言うよね。』


『言うね。』


『去年も立花くん3位だったけど『まだあっちゃんに勝てる気しない』って言ってたんだよ。』


俺は慌てて謝った。

『ごめん!完くん!

君の優勝にケチをつけるとかあっちゃんより下に見てるわけじゃないんだ!

気を悪くさせたよね、本当にごめんなさい!』


クラス唯一の俺に親近感を持つ完くんを不愉快にさせていたと俺は自分の無神経さに申し訳なくなった。


完くんは鷹揚に笑って

『いや、別に良いよ。

厚樹くん居た頃(小学生時代)は彼がいつもマラソン大会1位で俺その頃確かに彼に勝てなかったんだ。中学生になって成長期に入って鍛え方を厳しくして優勝できるようになったんだよ。

でもさ、俺今の厚樹くんに勝てるかな?もちろん本人居ないからわからないけど。』


『…。』


『立花くんもさ俺に負けっぱなし悔しいでしょ?今年が最後だよ?

俺もさ、自分が厚樹くんに勝てるのか試したい、記憶の中のライバルと競うのも良いけどそろそろ越えて次を見たいんだよ。』


なるほど、なんとなく言いたいことはわかる。

完くんもあっちゃんの幻を見てるんだ、俺と一緒。

俺は目標だったけど完くんにとってはライバルだったんだね。熱い!



『それでさ、厚樹くんのこと一番わかってるのは立花くんでしょ?

今年決着を着けたいんだ、俺の中のライバルと、ライバルの認めてる友の君に勝って、居ないライバルの幻影と戦うのは終わりにして俺が最強!って胸を張って言いたい。』


いや完くん最強でしょ?

たぶん完くんは戦って勝ってふんぎりつけたいんだよね?



『だからさ立花くん、来月のマラソン大会は限界まで仕上げてきてよ?

君の中の厚樹くんを超えてきてよ。

俺が勝てば厚樹くんを超えたって宣言する。3年連覇すれば資格あるよね?

君が勝てばいつも通りあっちゃんが居ればこんなもんじゃないって言うなり、立花くんが厚樹くんを超えた!って言うなりしたらいいよ。

最後のマラソン大会ガチでやり合おう?』


え?熱い!

俺があっちゃんの代理?いやあっちゃんを超える?!

そんなことできるのか?

でも完くんは戦いたいんだな。あっちゃんの幻でなく生身のライバルと。

漢としてこんな正々堂々勝負を挑まれるって昂るでしょ?!ぶざまな戦いは見せれない。


しかも完くんほどの漢が俺もライバルとして見てくれる!

これ燃えるでしょ!


伊勢さんが口を挟む。

『え?めっちゃ面白そうなんだけどー?

ガチ?ガチで勝負ってことでしょ?楽しみだね?』


『熱い!燃えるなあ!』

『スポ根もの大好きなんだよ、そして勝つよ!』


完くんはイメージ通りスポ根好き。伊勢さんの口出しは続く。


『じゃあ、勝った方にはあたしがなんかご褒美あげちゃおうかなー♪』


『『何?!』』


『ナイショ♪楽しみにしてて!』


思っていなかった完くんのマラソン大会での勝負を挑まれた俺は帰ったらがっちり走り込むことを決めた。



こうして最後は全く修学旅行と関係ない話で終わった。

駅に着き、バスで学校へ戻り解散。

修学旅行楽しかったな!神社、寺、仏閣、神宮、山荘どれも素晴らしく時間があっというまだった。


勢いで香椎さんを名前呼びして、手を繋いだ。

もう少しでハグする寸前までいってしまった!


忘れられない修学旅行だった。

またいつもの日常に戻っていく。



□ □ □ □ □

立花家にて


『兄ちゃんおかえりー!』


『おかえりー!』


『望ちゃん、ひーちゃん良い子にしてた?』


『おみやげ!』『してたー!』


『はいはい、木刀と生八つ橋だよ?』


『わーい!あれ?1箱しかない?』


『あー外町がふんずけて潰れたから1箱減っちゃった?ほらみんなの分も八ツ橋だからそれも食べな!』


望『あのクソ野郎!

兄ちゃんいじめただけならまだしも私の生八橋を?!』


望ちゃんは外町が大嫌い。

ちなみに外町には生徒会長出馬の話があったのだが2年前から続く望のネガティブキャンペーンにより下級生の間で外町は著しく評判が悪く断念した。

22話ふざけんな 最後参照。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る