第72話 緊張の一瞬【side香椎玲奈】

3日目 SIDE 立花 承



3日目は全体行動。基本的にクラスで動いて男女で点呼取ってクラス委員長の外町、香椎が統率、進行する形。


朝から

学問の神様藤原道真公を祀る北野天満宮で受験のことをお願いして、

昼ごろ金閣寺を見物しそのゴージャスさに驚き、

お昼を食べた後平安神宮で社殿の美しさに驚いた。



もちろんそのどれもが素晴らしく、美しく、写真映えするものだったんだけど全体行動ってあんまり自由に動けないし、見たいものじっくり見れない。

大体完くんたちマッチョと伊勢さんたちギャルと回っていた。

香椎さんは一条さん、二村さんが側にいるがとても動き回れる感じではなくまるでガイドか添乗員さんみたいでこっちに恨めしそうな視線を送ってくる。


香椎さんのまわりは仕事と人気で人が多すぎてぼっちの俺は近づけない。



午後最後の場所、嵐山の渡月橋だけ、今日最後だから班で行動、4時にここに戻ってこいよ!って柳先生が言った。


『やった!みんな集まれー!』


香椎さんは委員長から解放されてテンション上げ。

みんな集まれー!って言ったらよその班が集まってきてしまったから急いで移動した。


『有名な竹林の小径行こう!』


何気に1km近く離れているけど班みんなで見に行った。


青々とした竹林の間の道はとても涼しげで風情があってずっと歩いていたいほどの景観で風でサラサラ竹の葉の音も爽やかで満足して渡月橋へ戻る。


橋の曲線と川の景観は説明不要の美しさ。

デートカップルもいっぱい居る。

香椎さんが

『ここ秋の紅葉すっごくすっごく綺麗なんだって!デートスポットでも有名なんだよ!』


『えー?見たい!いいな紅葉!』


『いつか彼女と紅葉見に来たら?』

そう言うとジッと俺の目を見る。


(あれ?昨日伊勢さんとこんな会話した?)


『昨日さ、伊勢さんと哲学の小道で似たような話した!』


『なんて?』


『伊勢さんにいつか彼女と桜の頃来たら?って言われたよ。』


『うんうん。』


『で俺は、彼女なんてできない!そしたら伊勢さん付き合ってくれる?って言ったの。』


『!!!

それは一緒に京都旅行また来ようって誘い?それとも交際しようって意味の付き合って?両方かな?どうなの?

立花くんは女の子口説くの得意なの?』


香椎さんめっちゃ怖い。

そんな意味はないよ!って説明した。


『本当、そうゆうとこだよ?』


香椎さんはぶつぶつ文句言ってた。

全体行動楽しいけどそんなに特別なことは無かった。

2日目が色々ありすぎだったのかも。


いよいよ明日帰る。今日は京都駅近郊の宿。

また男子は大部屋、女子は4人ずつの部屋。


班ミーティングに女子部屋へ向かう。

小石が、


『立花、俺腹痛い、ちょっと遅れるから心配しないよう伝えて?』


『わかった。』


ノックして入る。


香椎さんしか居ない?


『あ、立花くん!』


『こんばんわ、香椎さん。小石腹痛だから遅れるから心配しないでって。』


『わかったよ!心配しない!』


『ふたり(一条、二村)は?』


『近くのコンビニに京都限定ポテチとか色々あってそれ買ってくる!って今出たばかりだよ。』


『そっかあ、じゃあ少し待てばみんな集まるか?』


『うん、そうだね承くん。』


『…ここで名前呼び危なくない?』


ミーティングまでちょっと2人きり。

あ、俺緊張してきた!


□ □ □ □

緊張の一瞬! 【side香椎玲奈】


女子部屋でのミーティング直前にふたりが買い物に出かけた。小石くんは腹痛で遅れる?心配するな?わかったよ⭐︎


そんなで望外のふたりきりタイム!もう来ないと思ってたチャンス!

もう明日には帰るんだねってしんみり言うと承くんも残念そう。

楽しかったし色々思い出もできたしそんなことをポツポツ話しながら私は周囲に気を配る。

小石くんはもうちょっとかかりそう?ふたりはコンビニ行ったばかりだから10分は帰らないよね?

もう一段攻めれる?


雰囲気は良いよ、明日帰るってしんみり感、夜のムード、なんかきっかけあれば…。


『ここのお風呂広かったねー?』


『確かに!男子風呂も色々種類があって!』


なんて話ててピンときた!これで行くよ!


『あ、承くんと私同じ匂いする!』


『え?玲奈さんと俺が同じ匂いのわけ…』


『同じホテルのシャンプーや石鹸使ってるからだね!ほら!』


ちょっと体を近づける。スンスン、石鹸の匂いしかしないの残念。。


承くんもちょっと近づいて匂い嗅ぐそぶりをする瞬間に合わせて。

(ここだ!必殺笑顔(仮)!)


私は必死の必殺笑顔!

(想い伝われ!昨日の進展で私の気持ち少し伝わったでしょ?!

えっちい手前までなら良いよ!君だけ、君だけだよ!許すのは!

承くんはどうしたい?)



承くんはポーって私の眼を見続ける、私も視線は外さない。

匂いが分かるほどの近い距離。

また時間が止まったような感覚、3秒?それとも10秒?本当にわからない。

でも承くんの熱い視線に間違いない好意を感じる。

(あ、ハグじゃすまないかも?歯磨きしておいて良かったー。私初めてキスしちゃうかもなあ。)


結構冷静に頭の隅で考えている自分がいる。


見つめ合いながら承くんが私の手を取る。

私も握り返す。お互いの体温を感じる。

緊張してきたかも。



(ハグしてちょっと甘い言葉囁いて欲しい…。)


承くんの顔しか見えない。

承くんがスッと私の手を引っ張った。承くんに引かれ承くんの胸に私が収まる瞬間!


ガチャ!

『『ただいまー!京都限定お菓子すっごい数あるよ!あがる〜!』』


私と承くんは一瞬でアイコンタクト!

アルプス1万尺って手遊び分かるかな?

あれのようにお互いの手のひら押し合って瞬間で5歩くらい離れた!

危なかった!

惜しい!惜しいよ!必殺笑顔(仮)は成功して間違いなく承くんは私に夢中だったのに!お姉ちゃんが使い時考えてって意味わかる。


でも承くんと咄嗟に息が合うのはなんか嬉しいよね?

残念ながら進展はしなかったけど緊張感のある3日目の夜だったよ!

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