第70話 取引 【side伊勢成実】

あたしたちと完くんたちマッチョは何気に2年になった頃からずっと班を一緒に組んでいた。あと立花。

立花はあたしや木多ちゃんのいじめを間接的に止めてくれた恩人だから借りがある。でもそれとは別に立花とは色々話してたからあたしにとってちょっと特別。


でもね、立花は香椎玲奈が好きなんだあ。すぐわかった。

がっかりした、みんなああいう娘が好きなんだよね。

しょうがないじゃ割り切れない思いもあるっしょ?

私は立花に借りがるから悩み相談受けた時あえて香椎玲奈を呼び出して譲った。

それは正解だったのかな?いまだに迷うことがある。

あの時厳しい言葉で一回立花をズタズタにしてドロドロに甘やかしたらあたしのものにできたかも?

でもすぐに結論出る。あたしに立花をズタズタには出来ない、もう愛着がありすぎる。

そしたら進展があったのかこないだの席替えで香椎玲奈は立花と組むことを宣言した。

譲りはしたがあたしは連れとマッチョたちと立花がぼっちにならないように組むつもりだったから腹が立ってクレーム入れた。

しばらく香椎玲奈とやり合って結局譲った。

今、香椎玲奈に貸し3ある。





前置き長くなったが銀閣寺で立花を拐った(笑)

あの時の香椎玲奈の顔!ウケる!


すぐに連絡が来たからロインで返信。

以下ロインやりとり




伊勢『立花は頂いた!返して欲しければ哲学の道を通り南禅寺まで来い!』


香椎『は?早く立花くん返して!』


伊勢『でもそっちの班の小石が立花譲ってくれるって言うから銀閣寺の時間合わせたんだよ?』


香椎『意味わかんないよ?』


伊勢『だから立花が邪魔だからあたしたちに引き取って欲しいらしいよ?』


香椎『なんで?』


伊勢『サービスで教えちゃう、立花が居なければ香椎、一条、二村独り占めハーレムらしいよ?あいつ締めとけよ?』


香椎『ぎちぎちに締める必要あるね…。

それはそれとして立花くん返して?』


伊勢『いや♡』


香椎『怒るよ?』


伊勢『本来さあ、あたしや完くんたちと修学旅行の班組むつもりだったじゃん?立花自身もそう言ってたし。

でも香椎玲奈の陰謀で直前に引き抜かれたわけじゃん?』


香椎『理由ならこないだ話して納得したでしょ?』


伊勢『納得はしてる。

でもさ、あたしや完くんたちも本当に立花と一緒に自由行動周りたかったんだ。

だから南禅寺までで良いから立花貸して?貸し1それでチャラでどう?』


香椎『その気持ちは理解したよ。ごめん。

じゃあ南禅寺で返してね?ちゃんと可愛がってよね?貸し1返済了解。』


こうして商談が成立したわけ。貸しあと2。


立花はマッチョと笑いながら歩いて連れのギャルに揶揄われてる。

あたしもニコニコしながら話しかける。


『あたしたち居なくて寂しかったっしょ?』


『今の班も楽しいんだけど伊勢さんや完くんとこ落ち着く!

いつも一緒に組んでくれたからね?』


『立花くん居ないと寂しいよ。君もマッチョチームだから。』


完くんは見た目いかついけど優しい男。筋肉をあたしたちが触ると真っ赤になって照れるんだよね。


『そっかあ、小石に売られたのかあ、この旅行でちょっと仲良くなった気で居たけどやっぱりかー。』


拐ったわけを話したら立花ちょっと傷ついていた。


『でも南禅寺までは一緒に行けるんでしょ?嬉しい!伊勢さんや完くんまじ大好き!』


あたしは真っ赤になってしまった。

見た目ギャルだけど男性慣れしてないのは我ながらおかしいよね。

でも立花は香椎玲奈が好きだから深入りしちゃいけない。


『伊勢さんたちはどこ回ってきたの?』


お互いの行った名所の話をみんなでする。

哲学の道をゆっくり歩きながら。桜の名所で春来たら絶対最高だよね。

立花がぼそっと


『いつか春に来たいね?』


『いつか彼女と来たら良いじゃん?』


『彼女なんてできない!そしたら伊勢さん付き合ってくれる?』


(どっち?!一緒にまたここに来たいってこと?彼女になってってこと?どっちにしても!)

『…。』


あたしはとっさに何も言えない。


『伊勢さん?どうした?』


『別にー?』


立花は優しくて義に男だと思う。地味だけど!

あたしはやっぱ好きなんだろうなあって自分の心の動きでわかる。

立花は真面目で人の心の痛みがわかる人、断ることがどれだけ負担になるだろう。

好きな人の負担になるなら伝えない恋だってあるよね。

あたしは自分の心に蓋をする。


馬鹿な話や修学旅行の話、みんなで笑いながら哲学の道。

結構歩くのどうなん?って思ってたけど全然苦にならない。

盛り上がり、マッチョもギャルもぼっちもひと塊。

ほんとに楽しい!


後ろの方に香椎班の4人が見えるけども遠目でわかるほど歩きながら3人に説教されてるみたい。

小石反省しろよ?



そうこうしてるうちに南禅寺に着いた。

国宝の三門、方丈が有名。立花が


『あの有名な伝説の大泥棒石川五右衛門がこの三門の上から桜を見て

『絶景かな絶景かな』って言ったらしいよ?』


ルパンの仲間?違うの?



庭園も立派でみんなでワイワイ見た。楽しい!

もうこのまま立花うちの子になる?って言いかけたところで


『立花くん返して!』


もう来た。約束だから仕方ない。

香椎玲奈は南禅寺に着いたら返してくれると思ってたとかぶつぶつ言うから。

『本当は班わけで立花譲る貸し1のと銀閣寺は終わってたんだから哲学の道と南禅寺だけで貸し1だとあーしの方が損なんだけど?』



そう言うと香椎玲奈は黙った。なんのかんの計算ができる子だから理詰めで説けば納得するのが笑える。


名残惜しいけどお土産もの見たら立花とはバイバイ。


そのまま香椎玲奈と2人で少し話しながら可愛い京都土産を見てると。



『ねえ、君たちどっから来たの?』

『俺たち東京から来たんだ!』

『ねえ、一緒に見て回らない?』


高校生なのかな男の人が3人であーしたちに話しかけてきた。

高校生の男の人って大きくって怖い。


『は?ナンパなら他所でやれば?』

(怖い!)


あーしはビビりながら前に出る。あーしの方が気が強そうに見えるでしょ。


『他を当たって下さい。』

香椎怜奈があたしをかばうように前に出る。

香椎怜奈もあたしと同じで無理する子だよね。



『かわいー!ちょっと震えてるじゃんw』

『大丈夫!お兄さんたち優しいよ!』

『とりあえず場所変える?カラオケ行く?』


大柄な高校生があたしの腕を掴んだ。

(立花助けて!!)


私の腕を掴む腕を誰かが掴む(わかりにくいよね?)



『へっへっへ、可愛い女の子連れてるじゃねーか?

そんなつまんない奴より俺と遊ぼうぜ?』


立花が腕を掴んで棒読みで銀閣寺で聞いたセリフを繰り返す。


『伊勢さん、香椎さん、野球部マッチョたち後ろのお土産ものやで買い食い

してるから全員すぐに連れてきて!』


高校生とあたしたちの間に立花が入る、緊張感が走る。

青井との喧嘩は打ち上げで見たけどこんな危ない高校生が3人も居る!

3人に1人で向き合う立花の後ろ姿は控えめに言って超格好良い。

隣の香椎玲奈の目なんかハートになってる?


マッチョたち4人がそこに現れた。


『え?何?どんな状況?』


『完くんさっきの続きだよ!』


完くんはあ!って一声出すと。


『へっへっへ!可愛がってやるぜえ!』

『俺たちと遊ぼうぜー?』

『すぐにあいつのことなんて忘れさせてやるぜー?』

『…。』

マッチョたちがつづくが4人目はセリフが出なかったのか無言だったよ。

3番目男が男に言うにはヤバいセリフじゃない?


『チッ!めんどくせえ!』

『さっさと田舎帰れ!』


捨て台詞残して帰って行った。よかったよー。

立花株が爆上げ。マッチョもだいぶ上げ、終わってから現れた小石だいぶ下げ。小石は気づいてたけど遅れてきた説まで浮上している。


『香椎さん庇って前に出たの見えたからさ、さすが成実しげざねさん、猛将だね?』


『しげざねゆーな!』


(ダメだ、私やっぱり立花好きなんだ。)

胸がきゅーってした。


立花はナンパから助けたことを恩にも着せないで笑ってる。

京都の魔力か立花が2倍格好良い。

あたしは泣く泣く立花を香椎玲奈に返した。

マッチョを労いつつ立花を見送ったんだ。

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