第69話 名前呼び
『行こう玲奈さん!』
『…うん!承くん行こ!』
(名前で呼んで断られなかった!)
もう夢中だった、すっかり香椎さんの笑顔に魅了されて自分が抑えられない!
俺は香椎さんを名前呼びしただけでは飽き足らず手を引いた。
(漢らしく!乱暴じゃなく!紳士に!)
嫌がられたらどうしようってヒヤヒヤしてたが香椎さんは恥ずかしそうに俯いてついてきてくれた!
(良かった!香椎さんの手小さくてすべすべですごい手触り良い!)
入り口に戻ると小石が俺たちを探していた。
急いで手を離す。
『お!どこに居たん?』
『そこの御厨。暗い部屋に窓の光のコントラスト綺麗でしばらく見てた。』
『へー、俺も見てこよ。香椎さんも一緒に観に行こうよ!』
『私も今見てきたよ。綺麗だったよ!』
『後で見るわ!香椎さん一緒に回ろうよ!』
『そうだね?ここからは皆で回ろっか?』
香椎さんは小石をひらりひらりとかわす。
香椎さんが一条さんたちの方へ向かい5人であーだこーだ言いながら山荘をまわる。
日本庭園は素晴らしく縁側に座りながらガイドブックの見どころを確認する。
『雨に濡れて緑が綺麗だね?』
『風情あるよねー?』
思い思いに感想を言い合う。
お庭に名物の小さいお地蔵様があり、それを皆で探す。
ニコニコした可愛いお地蔵様!何体かあったのだが3体寄り添うお地蔵様がすごく愛らしい。地蔵探しでバラけたところでこっそり香椎さんが話かけてくれた。
『この3体のお地蔵様は承くんの兄弟みたいだね?』
『そうかな?』
『大、中、小が承くん、望ちゃん、ひーちゃんみたい!』
(名前で呼ばれるのくすぐったい…!)
香椎さんは隣を歩きながら他のお地蔵さんを探し初めた。
俺は近くにお地蔵さんを見つけて言った。
『あのお地蔵様可愛くって優しい顔つきで香椎さんみたいだね?』
『…。』
あれ?聞こえなかったかな?
『あのお地蔵様可愛くって優しい顔つきで香椎さんみたいだね?』
『…。』
『?
あのお地蔵様『聞こえてるよ!名前で呼ばないと返事しないよ?』』
『…玲奈…さん。』
『ふふー♪可愛くて優しいのが承くんの私の印象なの?』
『…。』
こくん、黙って頷くしか出来ない。
『立花くん、お地蔵さんあった?』
一条、二村組が良いところに来た!
『可愛いの見つけたよ!こっち!』
こうしてまた集まってみんなで茶室や庭園を堪能した。
班のメンバーもテンションが上がり、普段は話さない仲でも今日は特別だった。
5人でかたまったと思えば2と3に別れたり。
その組み合わせも今日は誰とでも組める特別なテンション!
次のお寺では気づけば
一条、二村、立花と香椎、小石に別れたり。
次の神宮では
一条、立花と香椎、二村、小石だったりバラバラ。
でも今日ばかりは昔からの組み合わせみたいに誰とでも話せた。
(楽しいなあ。)
どっちも美人なハイスペックだが一条さんはおっとりしてたり二村さんの方は少しチャキチャキしてるって知った。
小石はうるさいけど陽キャで話題尽きないとか知ってるようで知らないこともあるよね。
『立花くん意外と喋るんだね?』
『うん、そうかも?一条さんも静かな人だと思ってた。』
『ふふ、私おしゃべりなのよー。』
なんて今まで交流無かったのが不思議なくらい話せる。
途中で遅めなお昼ご飯食べて、午後の一番楽しみ銀閣寺へ着いた。
金閣寺は明日全体で回るから銀閣寺はどこの班も行き先に入れている班が多い
流石に観光客も多い!よく探せばきっとうちの学校の人たち絶対どこかに居そう!
『立花くん!こっち!』
香椎さんが手招きしてる。近寄ると小声で、
『他で我慢したからここは私と回ろうよ!承くん!』
『みんなに一言だけ言わないと心配するよ?』
『大丈夫!ロインしとく。』
『でも香椎『玲奈でしょ!』』
結局俺も玲奈さんと回りたい!でも名前呼びを聞かれないようにだけ注意!
銀閣寺も言わずもがな風情のあるお寺、落ち着きのある奥の深い美意識の感じられる寺院で侘びを感じる素晴らしい建物だ。
香椎さんにお願いして写真何枚も撮ってもらう。
『香椎さん!この角度の銀閣寺撮って?』
『つーん。』
『玲奈さん、この角度の銀閣寺撮って?』
『しょうがないなあ。』
後で何枚か印刷してもらおう。
香椎さんは恥ずかしそうに言った。
『じゃあ今日の記念に一緒に撮ろう?』
『うん。』
恥ずかしい、でも俺も1枚香椎さんとの写真が欲しい。
『香椎さん、これ俺にもプリントアウトして?』
『玲奈!もう、承くんから言い出したのに慣れないね?』
しかし俺はさっぱり名前呼びに慣れないが香椎さんはすごい順応してる。
※香椎さんは前々からイメージトレーニングしています。
そんなでふたり盛り上がりながら近くのお土産屋さんを覗こうとした時だった。
柄の悪い6人組が絡んできた。
いつも見ているマッチョ4のギャル2だった。
『へっへっへ!さっきから見せつけてくれるじゃねーか?』
『可愛い子連れてるねー?』
『そんなつまらない奴ほっといて俺たちと遊ぼうぜ?』
なぜか甲高い声で俺と香椎さんに絡む謎の6人(笑)
『やめろ!香椎さんに触るな!』
『立花くん…!』
これ誰が考えたコント?雑じゃない?なんで香椎さんノリノリなの?
『へっへっへっ可愛がってやるぜぇ?』
『すぐにあいつのことなんて忘れさせてやるぜー!』
あれよあれよという間に俺は彼らに引っ張られる。
香椎さんが目をまん丸くして連れ去られる俺を見ていた。
香椎さんにペコって会釈してマッチョは俺を連れて行く。
『なんで俺なの?普通可愛い女の子が攫われない?』
『あたしが女の子攫ってどうすんの?』
伊勢さんがなんか悪の女幹部のような雰囲気でマッチョを顎で使っていた。完くんもニコニコ。
マッチョたちは満足そうだった。
『ここからはあたしたちと回ろうよ!
『チームギャルマッチョぼっち』でさ!』
俺変なチームに加入させられた。
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