第36話 平和な日々

体育祭が終わり、マラソン大会が終わった。

マラソン大会今年も3位だった。また香椎さんがゴール前応援してくれた!

あれは力でる!ああいうイベントなら多少香椎さんに近づいても目立たないから良いなあって思う。

マラソン大会の1位は野球部の脳筋の人で本気でフィジカルの鬼で勝てる気がしない。

4位だった外町をかわした時だけは気持ちよかった。



そして10月になり文化祭、委員を選出してクラス展示、出し物、合唱コンクールの3つをクラスでこなす。俺はぼっちだから割り振られた役割をこなすんだけど外町、香椎の委員長ペアがバリバリ仕事を割り振ったり発破をかけたりかなり良い感じで作業が進行していく。外町はこういうイベント仕切らせると本当に有能。悔しいが委員長適性が高い上に判断力が速いのでうちのクラスは気持よく、効率よく準備ができていた。


笑いながら外町が香椎さんに仕事の相談をしてそれを笑顔で香椎さんは答える、すぐに周りに人が集まり外町がテキパキ指示を出して香椎さんが一言添えて笑いながら人混みが解散していくとすぐに違うチームが相談に来て真面目に二人で考え込んで外町の提案で香椎さんは頷き、チームは気合を入れて教室を出ていく。

そして香椎さんと外町が寄り添うように教室の壁にもたれて話し込んでるのを見て離れた女子が噂する。

『外町くんと香椎さんって良い感じだよね』

『ねー?外町くんいいなあ、さすがに香椎さん相手じゃ分が悪いなあ』

『本当のとこどうなのかな?』

(…。)



クラス展示は学校の横の川を上流に登ってくと何があって下流に何があるか?で俺は田中たちとそれを調べてでっかい紙に記入したり画像をプリントアウトして貼ったり地味作業。陰キャらしい仕事。


出し物は30分体育館ステージで何か演目をするんだけど俺のクラスはダンスで陽キャたちがメインで3部構成で男子、女子、混合でダンスを披露した。

香椎さんは合唱コンクールの伴奏とダンスの曲もステージのピアノで生演奏をしていて本当にすごくてびっくりした。衣装もなんかドレスみたいで綺麗だった。陽キャたちはキラキラしていて俺とは別世界の人間だった。



合唱コンクールもみんな息があって良い手応えだった。学年3クラス中1位だった。香椎さんと外町を中心にクラスは大喜びだった。



文化祭が終わるとすぐに冬になる。

秋はイベントも多かったし俺への変な注目もほぼ無くなってきた。

青井の自白イベント後しばらく怖い先輩に目をつけられたり、暴力を振るったっていう噂が悪評になり結構冷たい目で見られたりしたけどこの調子で冬休みを迎えて新学期にでもなれば大体ほとぼりも冷めることだろう。


その頃、やっとゴミ当番が終わった。クラスメイトがお前今日ゴミ当番だぞ?って言われてポカーンとしてた。俺と青井がずっとやりすぎてゴミ当番って概念がこのクラスから失われていた。香椎政治の唯一の失策と言える。




元々クラスに友達居ないから話す相手も居ない俺はクラスでも地味な存在だ。客観的に見て勉強も並、運動も持久走以外は並の俺は意識して目立たないように暮らせばそれはもう埋没する個性なのである。


香椎さんをついつい目で追っちゃうからよく香椎さんと目が合うけど特別なこともない。委員長業務で外町と一緒にいるのをよく見かける。


部活も秋の大会は補欠だからあんまり関係ないし。冬になると地味なフィジカルトレーニングが増えるので地味にキツくなる。

外町はすっかりレギュラーで中盤の要になっている。嫌いだけどほんとにすごいよねあいつは。



いじりもいじめもない日々に戻ればすごい平和なんだけど、自分がすごくつまらない、平凡な男子だと思い知らされる。学校でおとなしく過ごし、部活キツいって思いながらこなし、たまに宏介と遊び、同じように青井や田中が遊びに来る。

家に帰れば妹や弟を構い。両親は忙しく働き爺、婆は家でのんびり。 

そんな普通の日常。でもそうだよな一生忘れられない日より1週間したら忘れちゃう何にもない日の方が人生では圧倒的に多いわけだし。


最近ずーっと思っていた。

香椎さんに俺と距離を置いて欲しい、厳しく接して欲しいって何だ?

俺距離置くほど香椎さんに近いわけじゃないだろう?自意識過剰だった?

イベント事の指揮をとる外町を補佐して実務をバリバリこなす香椎さんを見てお似合いだなあって思った。クラスの女子が言ってたことも納得だ。

俺は平凡なぼっち男子で香椎さんはクラスの中心な完璧女子だ。

俺なんか勘違いしていたかも。香椎さんは誰にだって優しい。きっと俺が話しかけても優しく笑って対応してくれるだろう。

少し力になったくらいで勘違いしたら迷惑だよなあ。あんなに人気者で誰にでも愛されているあの子にはきっとそれにふさわしい人が居るはずだ。

『立花くんは子どもだなあ』って香椎さんが微笑みながら何度か呟いていたことを思い出す。



俺は子どもだ。弟が苦しんでいても何もできない。

両親が一生懸命働いているのをヘラヘラ笑って見ていることしかできない無力な子ども。

しょうもないのは俺だろ?

もっと大人だったら、もっと家族を支えられたのかな?

誰かに聞いたら教えてくれるかな?誰かに相談したら楽になるのかな?

…そんなこと人には言えないし言いたくない。





年が明けて3学期が始まった。

本当に久しぶりに香椎さんが話しかけてきた。


『立花くん、元気?』



『ああ、うん、元気。じゃあ。』



『え?え?』



俺みたいな陰キャのぼっちは人と距離取る位の方が良いんだ。

あっちゃんに会いたいなあ、今のを見たらどう思うだろうか?

叱るかな?笑うかな?やっぱり怒るかな?





宏介はその様子を見ても何も言わない。

青井や田中も近寄りにくい雰囲気の立花承に声をかけにくい。


外町はやっとぼっちの自覚が出たかと微笑みながらそれを見つめて、


香椎玲奈は…。


こうして立花承はより無口になりなんの物語も無く3学期を終える。

この年は寒い冬だった。


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こうゆうタイプの厨二病もあるのです。


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1年生編が終了です。

ここまで読んでいただいて誠にありがとうございます!

明日から2年生編がしばらく、そして波乱の3年生編へと進んでいきます。


少しでも楽しめたって方が居たら☆1つでも2つでもつけて頂けたら泣いて喜びます!♡とコメントもすっごく嬉しいです!

どうぞよろしくお願いします。

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