第33話 2人の距離



3日経ってまだ顔の痣は濃い。明日には青井の停学が明ける。

俺たちは青井を自然に出迎えてわだかまりが無いことを皆に見せる必要がる。じゃないと青井がいじめられることすらありうるよね。

(でもめっちゃ強いし大丈夫かなあ?)



『立花くん!こっち向いて!』


そんな俺はここ3日は放課後保健室で香椎さんに顔の殴られた痣の手当てを受けている。

体育祭の準備がいよいよ本格的に始まって応援練習やでっかいパネル作ったり、かざり付けの造花作ったりみんな大忙しだけど怪我あるから俺は部活も作業も免除だったが造花だけは問題ないので造花だけ作っている。

造花の内職しようかな?


『もういいよ。』


『ダメだよ!こんなに腫れて!』


まだ殴られたとこ腫れているから冷やしてから軟膏を丁寧に指で患部に塗ってくれる。ちなみに腫れがなくなったら今度は暖めた方が治り良いんだって。3日たったのにまったく腫れが引かないんだが…。


いじり、いじめ問題が解決してから香椎さんは俺へ何度も感謝してくれて、お礼にお弁当作ってあげようか?とかお礼にどっか一緒に遊びに行こうか?とかなんか距離感がバグっている。


そりゃあ好きな娘にそんなことを言われて嬉しくない奴なんていないだろうけど…香椎さんそれ男勘違いしちゃうからやめた方がいいよ?


何でも言ってって今日も言われたから考えてたことを言うことにした。


夕暮れの保健室にオレンジの光が…あれ前もあったなこれ?

あの時より体育祭が近づいてお祭り気分。

校内がまだざわざわしてる。



『香椎さん、あのさ』


『うん!いいよ!』


『まだ何も言ってないよ?』


『え?』


『香椎さんにお願いがあるんだけど…。』


『うん!いいよ!』


バグってるよなあ?まあ良いなら問題ないか。

香椎さんちょっと上目遣いでめっちゃ可愛い。薬塗ってるから距離が近くって直視できない!

  






『香椎さん、俺と距離を置いて欲しいんだ。

できたら厳しく接して欲しい。』





『え?ちょっと何言ってるかわからない。』



『それ俺がよく使うサンドイッチマンのやつ!』




俺久しぶりに突っ込んだ。


香椎さんは涙目になりながら怒りだした。



『何で!何でそんな事言うの!?』



俺は青井の一件以来注目を浴びるようになった。

評判も定まっていない。

曰く立花はいじめを解決した。曰くあいつ青井に卑怯な手段で勝って脅して罪を自白させた。曰くあいつが本当は黒幕だ。曰く立花みたいなキレる陰キャが一番怖い。

大体危ない、怖い、友達いない、強い、すごいって順番の評判みたい。

(友達は少ないだろ、居ないとは失礼。)


今回いじめの解決は香椎さんの愛のこもった説教と立花の肉体言語で青井が改心したって噂になっているらしい。


愛のある香椎さんと殴り合ってる立花だとやっぱり立花は印象悪いらしくってすげえ危ない奴みたいな噂が広まってるのとなんか怖い先輩たちが俺を昼休み見に来るの!

俺は持久走以外特筆すべき肉体的スペックは無いのは大体の人は知ってる。

(同学年なら体力テストで先輩たちは部活の動きとかで。)

だからそんな立花が青井にケンカで勝つ(2勝)は明らかにおかしい。

なんか卑怯なことしてんじゃね?って事になっているらしい。

確かに持久走後に殴り合いってハンデマッチだったけどね。




そんなやつが香椎さんの側にいると香椎さんにも悪い噂が付きまとうし、そもそも香椎さんのそばに居たら目立ってしまうし仲良くしていたら妬みも買ってしまう。

それに仲良くしてたらこないだの公開説教マッチポンプバレて大スキャンダルになり香椎さん支持が落ちてしまい、またクラスが荒れる原因になってしまう。

だから距離を置いてあまりお互いに関わらないようにしよう。と伝えた。



『やだよ!』



『でもそれが一番香椎さんの為にもみんなのために良いはずだよ!』



珍しく聞き分けがわるいな。


『何でも言ってとは…?』


とにかく、戻ってくる青井のためにも俺と青井は香椎さんに言われて反省しています。って態度とペナルティを受け入れて香椎さんは皆に公平、悪いことしたら毅然と対応する!って姿勢で行かないとまたいじめとか違う形で再発する可能性があると俺は思っていることを伝えた。

確かにいじめた青井は悪いけど皆の前で罪を申告し謝罪した勇気と男気に応えるためにも俺にも毅然とした態度で接して欲しいともう一度お願いしたんだ。

中途半端だと今度は青井が仲間はずれやいじめの対象になってしまう!



『お願い、香椎さんこの通り。』


香椎さんはみんなに優しい、だから本当は人に厳しく当たるとか好きじゃ無いのは重々承知している。嫌な役目だろう。

それでも青井のためにも香椎さんの為にもなるって言って頭を下げて頼んだんだよ。

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