第4話 エキセントリック少年

香椎さんの可愛さにびっくりしたけれども俺は子供だったからすぐに忘れた。

と言うのも俺はその頃武将ブームで男たちの熱き生き様に夢中だった。


強かったり、賢かったり、志があったり、義に厚かったりそんな漢たちに小学5年生の俺は強烈に憧れた。


それだけに思ったことも言えずに引っ込み思案な自分の性格にコンプレックスがあった。俺は自分のコンプレックスと武将のような漢になる夢をあっちゃんに打ち明けた。


「承は熱いな!いいと思うぜ!武将に!男になれば良いじゃん」


あっちゃんの賛同は俺を安心させた。

漢らしく卑怯なことをしない、義を重んじる、弱いものを守るそんな男になろうって誓った。

この頃から自分を俺って言うようになった。


「後は何か言われたり、いじられた時に言い返せると良いんじゃね?」


たまにあっちゃん以外の陽キャに俺はいじられることがあった。

授業中とか答えられない時などモジモジしてると野次られたがそんな時俺は何も言えなかった。

喧嘩したいわけでは無いが言われっぱなしも漢では無い?


早速優柔不断な漢である。

しかしあっちゃんはそんな俺にまたアドバイスをくれた。


「承は優しいところあるからな、じゃあなんか言われたら反論じゃなくってツッコミ入れれば良いんじゃん?」



目から鱗だった。喧嘩しなくってもツッコミならいじられっぱなしじゃなくて言い返せて喧嘩にならない。いつもながらあっちゃんはアイデアマンだった。



次の日の授業中に当てられて間違えてしまった。恥ずかしい。。

やっぱり陽キャの一部が


「ばっかでー!」

「ばーか!」


ヤジを飛ばしてくる、いつもなら下を向いてしまっていたが今日こそは!と口を開いた。



『もうちょっとオブラートに包めよ!』



陽キャたちは今まで何も言わなかった俺が言い返した事にキョトンとしていた。受けもしないし、笑いも無かったが言えた!って自分の変化に手応えを感じた。

でも元々内気だから強く人を傷付けたり、バカにするようなことはあまり言いたくない。言葉を選んで言おうと心掛けた。



次の日の午前に体育の授業は男女別のマラソンだったがその次の授業で汗っかきの俺はまだ汗が止まらないのを小石にからかわれた。小石はあっちゃんのグループなのにウザ絡みしてくる。


「立花!汗かきすぎじゃねえ?」

ゲラゲラ陽キャたちも笑ってくる。担任の先生は授業中に突然邪魔されて小石を軽く注意をする、授業中に急に大声でからかわれて下を向きそうになるが頭を回す。



まだゲラゲラ笑う小石たちの方を向いてその日は持っていたハンカチで汗を拭きながらできるだけニヤリと笑いながら


『本当だ!オペ中かよ!』


自虐ツッコミをすると初めてクラス中が笑ってくれた。あっちゃんも親指を立ててこっちを向きながら大笑いしている。香椎さんも笑っていて嬉しいような恥ずかしいようなくすぐったい高揚感を感じていた。

絡んできた小石は悔しそうな顔をしているのは面白かった。



うまく返せれば笑いが取れるというのは内気だった俺にはまた世界が開けたような気分でいじっても毎回返してくる俺はウザ絡みはされないようになっていった。



自分にからまれない限りツッコミはしなかったが俺より気弱なクラスメイトが言い返せずに絡まれてる時だけはいじりを打ち消すために突っ込んだ。陽キャたちは面白くなさそうだった。

陽キャたちはあんなに明るかったり友達多かったり何かに秀でているからなにかと自信があるのだろうに何故他人を笑ったりバカにしたり下に見ようとするのか俺にはわからなかった。



自分もそうだったから、あっちゃんに救われてきたから少しでも返したかった。

陽キャは気に入らなそうにしていたが俺の中では言い返せないようにいじる方が聞いてて気に入らないって思っていた。弱きを助け強きを挫く正義の味方気取りだったんだ。

後にこの頃の事が俺に返ってくるのだが。



クラスメイトの俺に対する印象は


武将に憧れているツッコミをする男の子だったらしい。確かにそうとしか言いようがない。


何かの提出物でも


将来の夢 武将


と書いて提出した。笑われたけどこれは突っ込まなかった。俺が何を夢見ようが勝手だろって思ってた。流石に職業として武将がないことはわかっていた。



そんなこんなで1学期半ばになる頃男子の中心はあっちゃん、女子の中心は香椎さんって形が出来てきた。あっちゃんも香椎さんもいじめとかいじりが好きではないから以前よりクラス内のいじりは減っていった。

あっちゃんはそうゆうの見かけると弱い奴もいじる奴も話しかけに行ってどっちも仲間に入れちゃう。なんてコミュ力!


香椎さんは他の女子の意見を受け入れて、調整して何かをするのが得意で面倒見が良いから何か起きる前に丸く収めていると感じた。

良いクラスだなあって思った。


部活のサッカーは変わらずあまり上達しなかった。5年生であっちゃんはもうFWでレギュラーに入っていたし隣のクラスのすげえ奴の外町もMFでレギュラーになっていた。5年生ではレギュラーはその2人だった。

俺は試合に出れない補欠サイドバックだったから外町のパスであっちゃんがゴールするのを見てて外町が羨ましかった。


部活の後の走り込みは変わらず続けていた。持久力は付いてきた。

ほんの少しだけ自分に自信を持てるようになってきた。


夏休みが終わり2学期になった。

席変えがあって香椎さんの隣になった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

承のつっこみが固まってない頃


『あっちゃんカッコいーー!!』


『承‥。それはなんかイヤだな。。』


初めてあっちゃんに否定された。俺ももうやらないって決めた。

オリエンタルラジオのネタは合わなかった。

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