第3話 俺にとってのヒーロー

俺は3月生まれの為か同級生に比べて体が小さく、勉強も得意ではなく(今も得意ではないが)引っ込み思案な子どもだったと思う。

家族は両親、妹、同居の祖父母。普通の家だ。



小学2年生頃までいじめられてこそいないが友達も居なくて、同級生の輪にも入れず本だけが友達のコミュ障のような感じだったんだ。





3年生になり初めてのクラス替えの時に隣のその子は突然話しかけてきた。


「お前名前は?俺は神崎 厚樹(カンザキ アツキ)!」


それがあっちゃんとの出会いだった。

あっちゃんは男の俺から見ても格好良くて、明るくて、面白くてさらに運動神経も抜群に良かった。

人気者でいつも輪の中心に居るクラスのリーダーだった。

何よりもあっちゃんは俺が本好きのことも引っ込み思案なことも全部プラスに捉えてくれた。



「本好きなんだ!すげえな!俺も漫画は好き!父さんの部屋昔の漫画いっぱいあるから読みに来いよ」



「承はさ!確かに引っ込み思案だけど別に良いんじゃねえ?話したい奴と話せば良いし、遊びたいやつとだけ遊べば良いじゃん!それよりカブトムシ捕まえに行こうぜ!」



そんなこと言ってくれる人はまわりに誰もいなかったから俺は泣きそうなほど嬉しかった。



あっちゃんと一緒に居れば周りにすぐ人が集まる。みんな笑顔だ。

それは今までとは全く違う世界であっちゃんを中心としたコミュティの片隅で俺は居場所を見つけた。

あっちゃんはいじめとか嫌いだから周りもいじりとかしない奴がほとんどなのも嬉しかった。

でもあっちゃん以外は無口な宏介くんしか友達は増えなかった。



地方の住宅街に住む俺たちはあっちゃんの指揮のもと汗びっしょりになりながらカブトムシを捕まえたり、泥だらけになりながらザリガニを獲ったり、川で鮒を釣ったりして全力で遊んだ。

冬には小学生では考えられないほどのかまくらを作ったり、外で遊べない日はあっちゃんちでゲームしたりゴロゴロしながらマンガを読んだりして過ごした。



4年生になりあっちゃんは言った。



「バスケットボール部作ろうぜ!」



4年生からは男子は強制でサッカー部か野球部どちらかに所属する決まりだったが少年漫画のスラムダンクを読んだばかりのあっちゃんはバスケがしたいですと言った。


俺もあっちゃんの影響でスラムダンクにどハマりしていたので賛成して色々行動してみたのだが女子の部活で体育館はふさがっていて学校にバスケットボールをするスペースが無く却下された。


無理ではあったがやりたい部活無いなら作るって発想が無かった俺はあっちゃんの行動力にただただ感心。

同級生だけどあっちゃんを尊敬していた。俺にとってあっちゃんはヒーローだった。



「じゃ、サッカーでいいか?」



俺はサッカー部の練習について行くのが精一杯。4年生なのにあっちゃんはすぐに上級生と混じって練習するようになった。

俺は下手で体力が無くてずっと基礎練習しかさせて貰えなかったが4年生で5、6年生に混じってるあっちゃんに少しでも追いつきたくて毎日練習後ヘロヘロになりながらも走り込みをした。



今は無理でも6年生になった頃あっちゃんと同じフィールドに立てるように、出来るならFWのあっちゃんにアシストするのが俺の目標だった。

あっちゃんに追いつくのが夢だった。


ある日あっちゃんにその走り込みを見つかった。


「承!お前あんなに部活で疲れた後に秘密特訓してるのかよ!

超格好イイな!すげえ!俺もやるぜ!!」


あっちゃんに練習後の走り込みをされたら追い付くどころか差が開いてしまうではないか!俺は頭を抱えた。秘密特訓だから一人でやると言うと納得してくれた。


「必殺技とかできたら見せてな!」


いや、無理でしょ。

ちなみに無口な宏介は野球部へ行った。



部活無い日は大体あっちゃんと全力で遊んだ。

あっちゃん以外は無口な宏介くんしか友達居ないのは変わらず。



5年生になった。2年ごとのクラス替えであっちゃんとクラスが分かれることだけが俺の心配だったが同じクラスだった。超嬉しかった。



初めて同じクラスになった香椎玲奈って女の子が居た。

同じ学年だから見たことはあったが話した事は無かった。

あまりの可愛さに二度見した。


香椎さんを初めて意識した。

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