第2話 もう一人の委員長

『はい、もし他に立候補が居ないようなら私が立候補します。』


 名乗り出たのは香椎怜奈(カシイ レイナ)だった。


 香椎玲奈は学校1と評判の可愛い女の子だ。

 ミディアムヘアーはふんわり鎖骨まで伸びていて少し髪色は明るくしていた。目がぱっちりしていて他のパーツも整っている。美人だけどいつもニコニコして表情豊か。左目の目尻の下に小さな泣きぼくろが可愛い。

真面目で周りの事を1番に考える気配りの出来る子。女子のカーストトップで周りには男女問わず人が集まる。

 スポーツ万能、勉強も学年で必ず1位を争う位置に居る。ピアノも弾ける。

完璧女子の異名は伊達ではない。

 異論が出るはずない、間違いない人選である。

そして俺は小学生の頃のちょっとした交流から香椎さんが好きだった。


 クラス中から賛成の声がする。

「じゃ、もう一人は香椎で決まりだな。

 新しい委員長2人でこの後他の委員も決めてしまって」


 担任は残りの司会をこっちに丸投げして体育委員や図書委員などの各委員を決めることになった。

まだ日が浅いがこの担任で大丈夫?って思った。



『立花くん、よろしくね♪一緒にがんばろ!』


『よろしくね香椎さん!頑張ろうね!』




 ちょっと自分にガッカリするが香椎さんの笑顔を直視できない。

 それだけの破壊力は間違いなくある。顔が赤くなったのを悟られないようにポーカーフェイスを心がける。



『じゃあ、立花くん司会お願いしてもいい?』


『わかった。』



 決める委員を書き出す香椎さん。字も綺麗。

 ここまでの皆の対応で絶対上手く進行できる気はしない。

各委員の立候補を募る。希望があればやりたい奴がやるのが一番だけど。


 案の定、女子の委員はゴタゴタしながらも決まっていったが男子は全く決まらない。決める気がないのだ。


「俺その委員はやだよ!」

「なんで勝手に人の名前挙げるんだよ!」



 さっき俺の名前を勝手に挙げたやつが言う。

協力するとか言っときながら全く決める気がない。好き勝手言いながらニヤニヤしながら言いたい放題である。

男子が決まらなくて女子もイライラしだす。


「男子!さっさと決めてー!」


クラス大荒れ。


「立花あ!きちんとやれよ!」

「まとめられないなら辞めろよ!」


 陽キャの数人と嫌な奴の小石が野次を飛ばす。

 元々小石はすぐに絡んでくるが最近は特に多い。



 HRの時間が終わりそうなのに男子の各委員はほぼ決らない。

 時間内に決まらないと決まるまで帰れない。

 陽キャたちは男子側の委員を決まらないように動いている。

 女子は決まらない男子に苛立ち、その不満をこっちにぶつけ始めていた。


 俺は必死に一個ずつ委員を埋めるべく適任者を理由とともに挙げて頭を下げてお願いした。でも陽キャたちはそれをことごとく覆したり、名前あげたやつに圧をかけたりして決まらないように動いている。


 HRがもう終わるって時間に差し掛かった時ついに香椎さんが説得に加わった。

男女問わず惹きつけるその美貌でニッコリ笑いかけながらのお願いは破壊力がある。



『立花くんの言う通り、わたしも適任だと思うな。

 前に本を丁寧に扱っているのを見たし図書委員をお願いしたいの、ダメかな?』


「あっ、香椎さんがそこまで言うなら。。」


 そんな感じでみんな照れながら引き受けてくれた。

 そりゃあ俺のお願いと対応が違うのはわかるけどなんか釈然としない。

それでも香椎さんのお陰でどんどん決まっていった。

 とにかく時間ギリギリなんとか初回を終えた。


 初回からこれか…。今後も絶対にうまくいかない予感がある。

香椎さんの力で今回はまとまったが陽キャの奴らはこれからこんな感じで絶対に俺を晒し者にするつもりだ。

 そんなみっともない姿を側で憧れの香椎さんに見せるのは辛い、それでも下を向くなと自分に言い聞かせる。



なんでこうなった?俺はここまでを思い返していた。

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