第22話 運命を試してみましょう。

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カード当て


1.ターヤはAとJoのカードを持つ。

2.サリネが裏向きのまま、カードを1枚引く。

3.Aを引いたらサリネの勝ち。Joを引いたらターヤの勝ち。


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ターヤがルールを説明してくれた。


「これだけ?」

「これだけで良いのよ。あなたと最初に遊んだのはババ抜きだったから。ババ抜きで決めましょう」


すごくシンプルな運試しだった。

わたしが正解のカードをあてるだけ。


「こんなので決めていいの? わたしと結婚するかどうかを賭けるのよね?」

「私としては、あなたと結婚するのはやぶさかではないのよ」

「え? まじで?」


ターヤがすごく嬉しいことを言い出した。


「まぁ、ね。私のためにこんなに努力してくれる人を嫌いになんてなれないわよ」


ターヤは頬を染めながら素敵なことを言ってくれる。


「…………ねぇ、ターヤ」

「何?」

「キスして良い?」


わたしは顔をターヤに寄せた。

しかし、ターヤはわたしのおでこに手を当てて顔を遠ざけた。


「まだ、だめ」

「まだってことは、いつかは良いの!?」

「この勝負に勝ったらね」


ターヤはトランプをわたしに向ける。


「ターヤが結婚して良いと思っているなら、この勝負をする意味ある? これに勝ったら、結婚して良いんだよね?」

「そうなんだけど、これは私とあなたの勝負じゃないわ。私達と神様の勝負なのよ」

「わたし達と神様?」


ターヤが難しいことを言い出した。


「あなたって、神様から言い渡された使命を無視したわけじゃない?」

「まぁ、そうね」


わたしは神様から言われた。

「おまえが18歳になったときに、病院にターヤという女の子が入院してくる。その子を虐めてやるのだ」

これがこの世界でのわたしの役割だった。

まるっきり無視することになったわけだけど。


「わたしも、神様から言われた運命に逆らって見舞いに来た男と結婚するのは諦めたわけだけど」

「……ごめんなさい」

「それは良いのよ。ただ心配事があって」

「心配事?」

「わたしもあなたも、神様の決めた運命に逆らったのよ。もしかしたら罰が当たらないかと不安なのよ」

「あぁ、そう言えば……」


神様って一方的に使命を押し付けてきたけど、失敗した時の罰までは説明してこなかったな。


「だから、今ここで神様に訊くの。私達は神様の命令に背いたけど、結婚して幸せになっても良いのかって」

「それで、……ババ抜き?」

「ええ。ただの運ゲーをやるのよ。もし私達が幸せになっても良いのなら、あなたが当たりのカードを引くように神様が誘導するはず。もし私達に罰を与えたいなら、あなたにJoを引いて結婚させないようにするはずでしょ」

「なるほど……」


わたしとターヤの勝負じゃなくて、わたし達と神様の勝負ってわけね。


「さぁ、カードを引いて! 私達が結婚できるかどうか! 運命に逆らった私達の処遇をはっきりさせるわよ!」


ターヤは意気込んでわたしにカードを向けてきた。

わたしは一旦、天井を見上げた。

考えをまとめる。


「よし、これにするわ」


わたしはターヤの手札から一枚選んで引いた。


そのカードは


当然のように


Aだった。






10年後。


「ただいま!」


わたしが家に帰ると、玄関にターヤがやってきた。


「おかえり。早かったわね」

「今日は大事な日だからね」

「大事な日?」


ターヤは首をかしげる。

心当たりがないようだ。


「10年前にさ、勝負したじゃない?」

「ああ、私とサリネが結婚できるかどうか試したやつ?」

「そう、それ。わたしがAを引き当てるやつ」

「あれから、10年も経つのね」


ターヤは昔を懐かしんで言った。

あれからわたし達は無事に結婚して幸せな日々を送っていた。


「10年経ったらターヤに言おうと思ってたことがあるの」

「私に?」

「あのとき、ターヤは神様を試す気で運のゲームをしたじゃない?」

「そうね。私達が神様の運命に逆らって結婚して良いなら、サリネはAを引くはずだって思ったから」


そう、その理屈は確かに聞いたのだけれど。


「あれね、わたしはイカサマしていたのよ」

「は?」


10年越しのカミングアウト。


「ターヤがカードを構えたあと、わたしがキスしようとしていたじゃない? あのときに、手札のカードが見えたのよね」

「……」

「だからあのゲームは、ターヤからしたら運試しだったけれど、わたしからしたら分かっているカードを引くだけの単純なゲームだったのよ」

「ちょっと! それだと意味ないじゃない!」

「だってターヤと結婚したかったし」

「それができるかどうか、罰が当たらないかどうか試すためにやったのに! イカサマしたら意味ないじゃない!」

「大丈夫よ。どうせ、あの神様のすることなんていい加減なんだし。わたし達に課した使命をまっとうしなかったからといって罰なんて当てないわよ」

「なんで、そんなことが分かるのよ?」

「そもそも使命をまっとうできなかったのは、わたしがターヤに一目惚れすることが分からなかった神様側の責任だと思わない?」


話がややこしくなってきた。

ターヤは頭を抱えている。


「これで本当に良かったのかしら?」

「ねぇ、ターヤ」

「何よ?」

「この10年、わたしと結婚して良かったと思っている?」

「まぁ、それなりに幸せだったわよ」

「それなら良いじゃない。これからもよろしくね」


わたしはターヤの頭を支えてキスをした。

ターヤは一瞬驚いて固くなったけど、すぐにキスを受け入れた。


こうしてわたし達はこれからも幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。


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マジシャンから悪役令嬢に転生したけど病弱主人公に一目惚れしたので攻略対象男子どもを追放します!! 司丸らぎ @Ragipoke

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