第20話 世界大戦の始まり

 ドラゴンに運ばれた飛行船がルーザニアの大地に降りる。助けられた人々は、フィオ達にお礼を述べそれぞれの家へと帰って行く。誰もが、今まで信じてきたものの実情を知り、ショックを隠せないようだった。


 フィオはドラゴンを労う。


「ありがとう、あなたのおかげで助かった」


 ドラゴンは、答えるように翼を広げる。そこへ、エルザがやってきた。


「フィオちゃん」


 そう言ってフィオに抱きつく。


「ありがとう……本当にありがとう」


 フィオはエルザの手をそっと撫でながら。


「助けることができて良かった」


 と微笑む。


 そんな二人の元へポルコとシーナが近づく。


「フィオどうなっている?」


 ドラゴンを眺めながらポルコがフィオに尋ねた。二人に気づきフィオから離れるエルザ。フィオは、ポルコに説明を始める。


 説明を聞いた二人は複雑な表情を浮かべた。


「まだ、世界のどこかにドラゴンはいると思うか?」


 ポルコが尋ねる。


「わからない……でも、あのドラゴンみたいに操られてなければこの子と同じ、仲間になってくれると思う」


 フィオの言葉にシーナが反応する。


「仲間……私はコイツを仲間なんて思えない」


 両親をドラゴンに殺されたシーナからすれば当たり前の反応だろう。だが、パラディンで赫龍に触れたシーナは、ドラゴンが悪いと本心では思ってなかった。シーナも葛藤していた。それをわかっていたので、フィオもポルコも何も言わなかった。


「しかし、とんでもない事実がわかった……」


 ポルコが言うと、三人はそれに頷く。


「ポップさんは?」


 フィオがエルザに聞くと。


「龍王の国から使者が来た時、すごく喜んでくれた。まさかこんなことに……」


「でも、エルザさんが助かって良かった……でも」


 フィオの言葉にポルコが続く。


「ああ、しかし、飛行船に乗れたのもあの場にいた者のみ……どうしたって残りの人達を救うことは出来なかった」


 暗い表情のポルコ、残りの千五百の人達の事を考える。そして、続ける。


「だが、このことが知れ渡るのは時間の問題だ。世界が割れるぞ」


 ポルコの言った通りだった。そして、それはポルコの予想よりも早く訪れた。


 まず「雪の国」が、蒼龍の加護を受けない事を世界に向けて発信した。魔力を使わないという新たな決まりを作った。


 続いて、第三の大陸「ルーザニア」全土が同じ事を発信した。だが、王不在のルーザニアは、雪の国のワッツと前王の娘フェールが、婚姻関係となり新たな国作りを一から始めた。


 第四の大陸「ナメリカーナ」は、そもそも、蒼龍の加護が大陸全土に届いていないので。動向がわからなかった。


 そして、蒼龍の大陸「龍王の国」第二の大陸「ギーザランド」は結託し他の大陸に向けて宣戦布告した。これを受け、ポルコはシーナやアルクのように特別な力を持って産まれた物がいないかを大々的に調べ始めた。


 まずは「視える者」そして、体の一部に「紋章」がある者はいないかを探した。大陸中の十五歳前後の者を対象として行われたが。結果は思わしくなかった。数十万人のうち、たったの五人。アルクやシーナのように、すぐそばに二人同時にいた事は奇跡だったのである。


 フィオがドラゴンを産みだすことも検討されたが、フィオそして、パラディンの大司がこれを拒んだ。兵器として産みだすのは赫龍に反するとの事だった。


 半年の月日が流れた。選ばれた五人とシーナはポルコの元で修行をしていた。


 宣戦布告を受け、常に警戒態勢でいたが。龍王の国は、なんの動きも見せなかった。だが、それは突然訪れた。


 大地震が起きたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赫龍の女神 野苺スケスケ @ichisuke1009

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ