第7話 氷の大陸 雪の国

ポップとエルザに別れを告げる。


「寂しくなるわ。フィオちゃんまたおいでね」


そう言ってエルザはフィオにハグをする。


「今度はシチューの作り方教えてね」

「ポップさんもありがとう」


フィオは二人にハグをする。


四人はポップとエルザにお礼をいい二人の家をあとにした。


それから十日後〜



「寒みぃいい〜よ〜」


ガタガタと震えるアルク。


四人の目の前には壮大な氷の大地が広がっていた。どこを見ても真っ白なそこは、雄大であり巨大であり不気味でもあった。


氷の大陸は、ルーザニアの真反対に位置する大陸である。一度パラディンに寄り、フィオを置いて行くつもりだったが、フィオがそれを強く拒んだ。

パラディンに戻りたい思いもあったが、三人と離れたくないという思いの方が強かった。

フィオの安全のためだと思ったポルコも、フィオに雪の国を知って欲しいという思いもあり断念した。


しかし、フィオを置いて行こうとした理由は、ほかにもあった。


震えるアルクの頭上でポルコが手をかざす。


「うわ!なんだこれ、寒くない」


魔法で体を暖かいオーラで包む。雪の国の住人の防寒対策である。続いてフィオに試そうとするが。


「やっぱり効かないか。大丈夫か?フィオ」


「大丈夫。ポルコのマントで充分暖かいよ」


蒼龍の加護の魔法はフィオには効かない。これがフィオを置いて行こうとしたもうひとつの理由だった。


雪の国、日が差すあいだは耐えれる寒さがだが。夜になると、吐いた息がすぐに凍ってしまうほどの厳しさである。


「ごめんねポルコ……」


迷惑かけてごめん。そんな思いがフィオの表情に浮かぶ。


「大丈夫だ。私の家に行けばなんとかなる」


「私も試していい?」


シーナがフィオに試すが、やはり無駄であった。


シーナの魔法はここに来るあいだにもメキメキと上達していた。ポルコとフィオが、ルーザニアを目指して旅していた道程のほぼ倍の距離であったが。シーナとポルコ、二人がかりで魔力を使い、半分ほどの時間で到着することが出来た。


「ダメか〜。でもこれって攻撃魔法も無効って事なのかな?だとすると無敵!?」


魔法が効かず肩を落としたシーナだが、明るく前向きな意見を述べる。


「さすがに試しようがないからわからんが、攻撃は魔法だけではないからな。あまり楽観的になるのも良くない」


ポルコらしい辛辣な言葉である。


氷の大陸に足を踏み入れどのくらいたっただろうか、初めて建造物が見えてきた。

人の気配のする物に、ホッとするポルコ以外の三人。


「見えてきたか……雪の国だ」


おそらく氷で出来たと思われる外壁がどこまでも続いている。三人を先導するポルコは真っ直ぐに門へと向かう。

門の前には屈強そうな男が二人。槍を持ってこちらを睨みつける。

気にせずポルコは目の前まで行き。


「私だ」


それだけを告げると、屈強そうな二人が槍を下ろし重たそうな扉を開ける。


「どうぞ」


二人が言うと。


「行こう」


ポルコが三人に告げ門の中へと入っていく。

一連の流れをただ黙って見ていたフィオ達だったが、ポルコの振る舞いが只者ではないなにかを匂わせた。ポルコが口を開く。


「私は師の一番の弟子だ私が偉いのではない。師が偉いのだ」


「そうなのか〜でもかっこよかったぜ……私だ……」


アルクがポルコの真似をする。


つられてシーナもフィオも声を揃え


「私だ……」


笑い合う三人。ポルコはアルクだけにゲンコツをする。


「なんで俺だけ……」


不条理を訴えるアルクに


「女の子を殴れるか!」


寒さに打ち勝とうと四人はじゃれ合いながら歩を進める。


建物も何もかもが真っ白だった。

門をくぐって雪の国に入ってから目につくもの全てが真っ白だった。

街を行き交う人々も銀髪に白いマントを羽織る。

顔や体格は違えど、それ以外はポルコと同じだった。


一際白く大きな建物が城であるとポルコに教えてもらった。師はそこに仕える魔道士だということも。


城に着くと、先程と同じように二人の男が立っていた。


ポルコは少し照れながら


「わ、私だ……」


そう告げた。後ろで三人が「くくっ」と笑う声を聞きながら。


少し歩くと人影が見えた。ポルコが膝を付き言葉を交わす。


「お久しぶりです、マスター・エルリック」


「固い挨拶は抜きじゃ、よく戻ったの。顔をあげい」


ポルコと同じ銀髪に白いマント、真っ白い杖を持ち、穏やかな表情の老人。長くたくわえた髭を撫でならがフィオ達に視線を移す。


「はて、この子達は……」


エルリックはじっと見つめる。


「視える者と、紋章の少年、そして、宿命の子じゃな」


「ハッ!」


片膝を着いたままポルコが答える。


「ホッホッホ……賑やかなパーティじゃ。して、ワシはこの子を見ればよいのじゃな」


そう言ってシーナを見つめる。


「この少年は、リンダがよかろう」


何も言わずとも全てを見透かしているエルリックに驚く三人。

エルリックはフィオを見つめ。


「ここは寒かろう、奥にワシの部屋がある。暖をとるといい」


ハッとするフィオ


「大丈夫です!私もなにかさせてください」


「ホッホ、元気な子じゃ。ならば頼んで良いかの?」


「はい!なんでも!」


「王子の相手をしてやってくれぬか?最近ますます手がつけられんでな」


「王子?」


「そうじゃよ、な〜にたかだか五つの男の子じゃ」


「子守りですか?」


「うむ。頼んだよ、ここを奥に行けばおるわい」


「わかりました!」


エルリックが杖で指した方へ元気にかけていくフィオ。


「では、ほかの者は着いてくるのじゃ」


そう言って歩きだすエルリックのあとを着いていくポルコ等三人。




皆と別行動のフィオ。


私だけ子守りか……守られてばっかりは嫌だよ!私だってみんなを守れるくらい強くなりたい!

あ〜ぁここがパラディンだったら誰にも負けないのにな〜。


そんな思いをはせていると。


「おい!お前!何者だ」


どこからともなく幼い声が。


「あ!あなたが王子様ね?私はフィオ。エルリックさんに言われて来ました」


小さい体を大きく見せようと、王子は両手を腰にあて。


「ならばお前が新しい友達か」


「友達でいいんですか?」


「違うのか?僕はエリックに友達が欲しいと頼んだぞ!」


ふふと微笑むフィオは満面の笑みで


「それでは何して遊びますか?」


王子は赤くなる


「か、かくれんぼ〜」


恥ずかしさと嬉しさを滲ませながら走り出す。




ポルコ等三人の前に、女性が現れる。


「久しぶりだねポルコ、そいつらはお前のガキかい?」


「相変わらずだなリンダ」


銀髪の長い髪、大きな瞳と、鍛えられた逞しい身体。どうやらアルクに剣を教えてくれるのはこの綺麗な女性らしい。


リンダはアルクにの前までやってきて


「名は?」


緊張しながらアルクが答える。


「あ、アルクと申します」


そんな様子を拗ねて見守るシーナ。


「まったくあんたは、美人に弱いんだから」


「いい剣だ」


アルクの剣を手に取り軽々と操るリンダにアルクはあっけに取られる。


「着いてきな!」


「は、はい!」


消えて行く二人を見つめるシーナにエルリックが


「ホッホッホ、ではワシらも始めるかの」


緊張が体を包む


「はい。お願いします」


こうしてそれぞれの思いを形にするため、厳しい修行が今始まった。



第七話 終









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