自己と傷心

 エイドはその場を離れ、スラムの誰も使っていないであろうぼろぼろの公園のベンチに腰掛ける。ふと呟いた。

「正義は、どこにあるんだ、あんなものの中(記憶)に正義は、僕は処分されて当然だった」

 エイドが思い出した記憶……それは彼には耐えがたいものだった。それがより一層彼を狂わせた。


 その頃、CROWのRと、ウェロウは奇妙な場所で話をしていた。ウェロウの仕事場である。わざわざRが尋ねて行ってウェロウに話を持ち掛けたのだ。

「ウェロウ、君は気づいているだろう?あいつの中にある記憶が少し彼のものと違うと」

 Rはまるでこの前と打って変わって探りをいれるようだった。彼の体はもう十分に"修復"されており、まるで新品同然のようだった。

「どういうこと?"彼"が"彼ではない"とでも?では誰なの?」

「さあ、君のほうが詳しい可能性がある、もしそうなら、すぐにでも彼と君を引き離す手伝いができる」

「その場合私は何をすればいいの?」

「君はメラスの情報をくれ、そうすれば我々が保護する」

「メラスの情報?それだけ?」

「ふん、勘がいいな……エイドには奇妙なデータが組み込まれている可能性がああるんだ、メラスが仕組んだのではないかと思われるものだ」

「彼を解体するの?」

「そういうこともあり得るだろう、だが彼は彼でって彼ではない、もとい、アンドロイドになってからこれは“君たちの領分”を超えている」

「?あなた、アンドロイドの側に肩入れしているのね」

「おっと失礼、そういう意味では」

 ウェロウは周囲を見渡す、他にお客がいない事を確認しながら、続けて小声で話す。

「私は彼を裏切れない、あなたのことも、助けてくれることに感謝はするけれど

、本当に“仲裁”を貫き通すかはわからないし」

「君、エイドが君の事を守り続けられる思っているのか?」

「どうだっていいのよ、そんなこと」

 ウェロウはその場をあとにした。

「ふっ……」

 Rは不敵な笑みを浮かべた。


 エイドは、公園のベンチで体中ぼろぼろになっているのをみて、一度医者にヨロウと思った。だが、こぶしに入った力が、ぬけない、プルプルと体が今更震えている。

「許せない……誰も、皆……嘘ばかりだ、復讐してやる」

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