博士と記憶。
医者は診療室にエイド案内すると、エイドはいきなりいった。
「復讐しなければならない、そして、大事な人に襲い掛かる的を倒さなければ」
「ふう……そうきたか」
医者は
「その前に話をしよう、わしはな、かつて立派な普通の医者だったのじゃ、なぜそれが医者をやめたか聞いてくれ」
「何か関係あるのか?」
医者は意に介さず続ける。
「昔、私にはとても大切な友人がおってな、学生時代から一緒に切磋琢磨して医者をめざしていたのじゃ、立派に二人して医者になった、ワシはそれである程度満足したのだが、奴は違った、やつは"正義の男"だった、やつは貧乏人に無償で医療を提供しておった」
むっとしながら、エイドはその話を聞いた。
「当時違法改造したサイボーグは"亜人"といわれた、"亜人"を攻撃する犯罪が横行してな、違法改造のほとんどは郊外や、スラムのものだったからな、見下していた一般市民の反抗じゃ、そして、それが一層ひどくなったころ、無償の治療に目をつけられた奴は"亜人がり"の標的になったのだ」
「それで?」
「亡くなったよ」
エイドはうつむきながらも、前を向き直るとこういった。
「その話とこれが何の関係が?」
「行き過ぎた正義感は身を亡ぼすこともある、お前はその覚悟があるか?」
エイドは、しばらく腕を組んで考えたあといった。
「あります、守りたい人がいる、その人のためなら、危ない橋を渡る」
「……誰の情報を知りたいのだ」
「"右目がサイボーグで、その上に縦に傷がある男"その手下の情報です」
医者は、ふう、とため息をつきながら言った。
「ブルー・サイボーグ、半グレ連中じゃな」
そうして、様々な情報をききとったエイドはその場所をあとにする、がその部屋を出る前に医者クロベーに尋ねた。
「そういや、記憶を取り戻せるんだっけ?何分で済む?」
「ものによるが、15分もかからんじゃろうなあ、金はあるか?」
「たっぷり稼いだ」
やがて、すべての用事をおえ、その診療所からでてくるエイド。その姿をひとつ隣の建物の影から見守る人影があった。キャップをつけ、長い髪をしばりキャップに収めた女性がキャップのツバにてをかけて、彼がさっていくその様子をみていた。彼が完全にいなくなると、やがて女性と同じく診療所から彼を見守っていた医者が振り返り、中へ戻りながらいった。
「いつまでそうしているつもりじゃ」
ギクッとする女。 影からでてきたのは、ウェロウだった。
「気づいていたのね」
「まったく、早く中に入れ、みられてはまずいんだろう」
「ありがとう」
そして、クロベーとウェロウは再び診療所の中でこそこそ話をした。
「彼に監視用のGPSをつけた?」
「ああ、だがこれで本当によかったのか、アンドロイドの権利が薄いとはいえ、非情では……」
「あの人の記憶を守るためなら、何でもするわ」
「結局君は、彼の中に、かつての彼をみるのか」
「……」
「それで君は、彼は幸せなのか?」
「それでも、彼を守りたいの」
いったいどっちの“彼”のことをいっているのか、そういいながら医者は、GPS端末を彼女に渡した。
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