その日たまたま用事でケヴィンの出迎えが遅れたアルヴィン。いつものスクール前の場所にケヴィンの姿が見えないので、探し回っていた。どこかから、妙な声がきこえて、すぐにかけつける。

「い……たい」

 聞き覚えのある声に焦る気持ちを抑えてあらゆる場合に備えて、ポケットから取り出した拳銃を右手にとりいつでも撃てるように左手をそえ構えながら、その場所にかけつけた。

「たい」

 スクールから離れた少し裏手の裏路地で、その衝撃的な光景が繰り広げられていた。そこでは、男の警察官二人組に、ズボンをずり下ろされ、拳銃をせなかに向けられている弟がいた。

「お前ら……何をしている!!!」

「ヒッ」

 驚いた二人の警官。アルヴィンの強さは十分しっていたからだ。しかしここまでしたからには、何か理由があるのだろうか。そんなことはどうでもよかった。

「覚悟はできているんだろうなあ!」

「うっ……」

「兄さん!!」

「レッド!!」

 警官の一人が叫ぶと、赤い体をしたロボットの警察犬が命令されるままに、アルヴィンに襲い掛かる。その間にも、急いで警官二人が、アルヴィンにさらにいたずらをしようとしている。

警察官のひとりにけつに拳銃をあてられて、その男がひきがねに手をかけている。

“まずい!!”

 アルヴィンの脳に電流が走った。こうした事件はスラムでは日常茶飯事だ。それでも、郊外の人間のことなど、この時代の人間は気にはしない。そして、ケヴィンが止める理由が気がかりだった。ロボット警察犬と争っていたが、その犬があるとき、背中から別のアームでナイフをとりだし、アルヴィンの顔をきりつけた。そのナイフはアルヴィンの顔にその後一生のこることになる、右の目の上を縦に走る深い縦の傷をつけた。それだけではなくアルヴィンは視界をうばわれた。

“眼球が、ダメになった”

 アルヴィンは、すぐに悟り、短期決戦を考えた。怒りくるいながらも、冷静さを保っていたアルヴィンは、右手の肘当たりにあるあるボタンにてをかけ、おした。

“ドゥルルルルルルル”

 けたたましい音が響く。それはまるで、チェンソーのエンジンを鳴らしているようなおとだった。徐々にアルヴィンの上半身右半分が増大していく、そして衣服がやぶれアルヴィンの右半分があらわになった。

「サイボーグか!!」

「弟だけでも殺せ、二人は厄介だ!!」

 次の瞬間、アルヴィンは襲ってきた警察犬をまっぷたつにきりさいた。というより、究極なパンチによって破壊したといったほうがいいだろう。顔と上半身がつぶれぼろぼろになったロボット警察犬は地面によこたわり、のこった下半身としっぽ、後ろ足をぴくぴくと動かしやがて動かなくなった。


 アルヴィンは手の甲を前面に構え、弟を襲っている男二人に標準をあわせる。いっそうけたたましくなる右腕、おびえる二人の男、だがその時だった。

「大丈夫!!兄さん!!何もしないで」

「だがお前、そのままじゃ死んで……」

「兄さん、僕を信じて……」

とケヴィン



 警察官は、二人がかりでアルヴィンの背中に拳銃をむけた。ふざけている場合じゃなかった。

“ドンッ!!”

 という音がなるはずだった。だがその拳銃のトリガーを引いたとたん、おかしなことがおこった。

“ガチャガチャ”

“バリバリ……”

 これまで拳銃の形をたもっていたものが、たてに、よこに、亀裂がはしり、分解されていく。まるで急速に風化して時がたったかのように、最後にはすなのようになって、バラバラに空中分解したのだ。警察官二人は、その時ケヴィンの左手の平がなくなっているのにきづいた。

「お前、何をしたんだ、ケヴィン」

「おまわりさん二人は僕のかしこさをみあやまっていたようだ、僕の左手はナノマシンでできている、二人が僕を襲っている間に君たちの武器はすべて破壊させてもらったよ」

 そういうと、砂状のナノマシンが徐々にケヴィンの右手にあつまっていった。二人の警察官は冷や汗を各々にぬぐった。


 そのとき、爆音で二人の警察官のすぐそばをまるでバイクのような猛スピードでこぶしがかけていった。それはアルヴィンのこぶしで、その肘はジェットエンジンのような内部構造をしており、それにひっぱられるように、アルヴィンは突撃していた。

「ちっ……外したか」

 二人の直ぐわきをとおりぬけたそれは、まるで巨大な弾丸のように背後のコンクリートにつっこみ、その壁を木っ端みじんに破壊していた。

「イッ……」

 声にならない声をだし、怖れおののいた二人の警官は悲鳴を上げてその場からたちさった。


 その後、ケヴィンとアルヴィンは公園にて、先ほどの件について、話をしていた。アルヴィンがケヴィンを刺激しないように、かつ彼を諭すように聞いた。

「どうしてたえるんだ」

「“スクール”は暴力を嫌う、ここであの警察官に暴力をふるえばすべてがダメになる、でも卒業すれば、いろんな企業にお声がかかる、そうすれば少しは皆を楽させられる」

 ケヴィンの想いをしったアルヴィンは、ケヴィンを強くだきしめた。

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